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【キミの声を聞かせて】~声を失った少女は、四人の王子に溺愛される~  作者: みみまる.com


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EP9:澪の誰よりも辛く悲しい過去。



リビングのソファに腰掛けた理事長先生。

意味深に目を細めて私をじっと見つめた。


「……貴方のこととても心配してたのよ…ここにいたのね?色々と大丈夫だったかしら……?」


その温かい眼差しに私はゆっくりとホワイトボードを胸に抱きしめた。


【春琉くんが一番大変だった時に、助けてくれました。感謝してもしきれないです】


コクコクと頷く私に理事長先生は優しく微笑む。


「ケーキでも食べながらゆっくり話したいわね…コーヒーの用意するわね」


そう言って私が立とうとすると、これぐらいは私にさせてちょーだいと理事長先生がコーヒーを入れる為に立ち上がった。



私はその間にウトウトとする。



あぁ…ダメだよ…理事長先生と話を…



響也くんとの事でずっと眠れなかった私。



だけど響也くんが今夜は遊びに行かずに…家にいて…ご飯を食べてくれて

大好きなみんなが揃ってて…



その安心感に包まれた空間は、張り詰めていた糸がフッと切れた。

急激な眠気が襲ってきた私は意識を手放した…。





─────春琉side



お袋がコーヒーの準備をしている間に、パタンッと寝落ちした澪。


「……ったく、危機感ねぇな」


俺は小さくため息を吐くと、あいつの小さな体を抱き上げようとソファに近寄ると


「……待って。俺が運ぶ」


その瞬間、横から伸びてきた手が俺の肩を掴んで俺を制止させた。



振り返ると、そこにはいつになく真剣でどこか申し訳なさそうな顔をした響也が立っていた。


「お前な…」


と言いかけた俺に、響也は視線を逸らしたまま


「……俺のせいだから。俺があいつを寝不足にさせたから……運ばせて……ちゃんと…春琉との約束も守るから…」


その真剣な言葉に俺は、それ以上何も言えなくなり今回だけは手を引くことにした。



そして、響也は眠る澪を大事に愛おしそうに抱き上げた。

その姿に少し焦る俺がいる。


なんだよその顔…。もしかして…響也、お前も…?


愛おしそうにきつく腕の中に澪を閉じ込める響也は、静かな足取りで階段を上りあいつの部屋へと消えていった。




────────────……


響也side



キーホルダーの事を、まだ聞けてないけど澪の泣き笑う顔を見た時、酷く懐かしく感じた。

俺がテディベアのキーホルダーをあげた時と同じ顔してた…。


俺が感じてた澪が初恋の子に重なって見えてた姿は、本人なんだろーな。


ははっ…こんなに近くにいて気付かないとかバカみたいだな。



そして、澪をベッドにそっと置くと布団を優しくかけてやる。



響也は、眠る澪の顔を見つめて髪の毛を掬う…。


昔と違って髪の毛すげぇ伸びたんだな。



そして眠る澪に一言…


「……昨日まで酷いこと言って……ごめん……」



眠る澪の顔を見つめながら、響也は誰にも聞こえないような小さな声でそう呟いたのだった。



──────────────…



春琉side



響也がリビングへと降りてくると、澪のいないダイニングテーブルは静まり返っていた。


お袋はいつも通りの呑気な笑顔をすっかり消して真面目な顔で静かに座っている。



俺はずっと気になっていたことを聞く。


「……お袋。あいつ家族となんかあったのか? 初めてみた時すげぇ酷い姿で俺の前で倒れやがった…。どう見ても、普通の訳ありじゃねぇだろ」


虐待とかか…?それか親がとんでもねぇクズなのか?


俺の言葉に碧も響也も

そして…いつもは無関心な律までもが真剣な目を向けてお袋の言葉を待った。




お袋は静かに目を伏せると、重い口をゆっくりと開いた。


「……あの子が高校1年生の時にね、お母様が他界されたのよ」


「え……っ」


碧が息を呑む。


「あの子母子家庭だったからお母様がいなくなってからは一人だったの…だから心配でよく声をかけていたのよ…」


すると、響也がハッとした顔をして


「昔…離婚して母親と出ていってた…よな…」


とボソッと訳のわかんないことを呟いてた。



「それからは、高校に通いながらバイトをして生計を立ててたみたいなの。

一生懸命学校にも通って頑張っていたわよ?


だけど……一人で背負うにはあまりにも苦しい生活だったんでしょうね。


精神的にボロボロにすり減ってしまって、ある日突然声が出なくなってしまったのよ」



お袋の口から語られる澪の過去は、俺たちの想像を遥かに超える衝撃で過酷なものだった。



「声が出なくなったことであの子バイトもクビになってしまってね。家賃も払えなくなってしまったみたいなの。


声が出ない姿を見た時すごく後悔したわ。

こんなことになる前に私が気づいてあげればよかったのに…あの子明るいから全然気づかなくて…私のせいだわ……。


私が、白波家のこの寮においで力になるからって実は何度も誘ったんだけど、あの子本当に優しくてお人好しだから。

これ以上迷惑をかけたくないって断るのよ。


どこか頼れる親戚でもいるのかと思っていたけれど……まさか、行き倒れて死にそうになるまでたった一人で踏ん張っていたなんて……


何回後悔すればいいのよ…私のせいだわ…。」



お袋はそこで悔しそうに苦しそうに顔を歪めた。

そして、俺たちの顔をまっすぐに見つめた。

その目には、じわりと涙が浮かんでいる。



「あんた我が息子ながら流石ね!あの子を見つけてくれて…この家に連れてきてくれて本当にありがとう……。


最悪の結果になってたら私自分を一生許せない所だったわ…。

あの後倒れてたなんて聞いて自分に腹が立っているわ…!


あなたたちにお願いよ。あの子をみんなで大切にして一生分幸せにしてやりなさい」



お袋は切なそうに縋るように俺たちに頼んだ。

お袋のそんな姿を見たのは初めてだった。



「お母様が亡くなった時もね、あの子一度も泣かなかったの。いつも健気に笑ってて大丈夫ですって……。

大丈夫なわけないじゃない…今までどんだけ孤独で辛かったのかしら…私たちには計り知れないわね……」



みんな話し終えたお袋の言葉を聞き澪のあまりにも重たい過去に沈黙した。



高1で母親を亡くしたこと。

たった一人で限界まで働き精神を病んで声を失ったこと。

バイトをクビになり家を追われ野垂れ死にそうになっていたこと。



そんな辛くて暗い過去を持ってるのに、俺たちの知ってる澪は…


いつも明るく朗らかでニコニコと笑っていて

苦しんでる奴がいると手を差し伸べて

家事だって手を抜けばいいのに

俺たちに気持ちよく過ごして欲しいからって

いっつも周りのことばかり気にしてる。



あんなに温かい空気を作れるやつが人一倍苦しい思いをしてたなんて考えたこと無かった…。



「……澪ちゃん……っ…」


碧が今にも泣き出しそうな顔で拳をぎゅっと握りしめる。


律は目の下にある涙黒子をきつく歪めながら、澪の部屋がある天井を静かに見つめていた。


そして響也は。

きっと昨日までの自分を後悔しているんだろう。この中で一番、悔しそうに悲しそうに辛そうな顔をしてきつく唇を噛み締めていた。



俺もあいつを絶対にここの中にいる誰よりも大切にして幸せにしてやる…と心に誓った。



お前たちには負けねぇ…!




4人の男たちはそれぞれの決意を胸に…夜が更けていくのだった。




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