表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【キミの声を聞かせて】~声を失った少女は、四人の王子に溺愛される~  作者: みみまる.com


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/12

EP8:テディベアのキーホルダー。


響也side



いつも通りの騒がしい夜の街。


「今日こそは、あいつに会えるかもしれない」


そんな淡い期待を胸に、俺は彷徨い続けた。

だけど、やっぱりどこを探しても誰に聞いてもあの女の子を見つけることはできない。



もう一度姿を見せてくれっ…!次は絶対見失わないから…!!



そんな思いを胸にただひたすら臭い香水を纏う女たちに声をかけ続けた…

結局、いつも通り何も手掛かりが見つからないまま深夜になる。


そろそろ家に帰るか…と思ったが家を出る前の澪の姿を思い出し家に帰るのをやめた。


また苛立ちで傷つける怖さと、またあの女の子と重なる澪に惹かれてしまうんじゃないかって二つの怖さが俺を襲う。


俺は帰れないままただぼんやり街の中で過ごした。


そして少しずつ明るくなってきた早朝。

俺は帰ることにした。



流石にもう朝だ。起きてるわけがねぇ…。



「はぁ……。まじでねみぃ…疲れた……」



─────ガチャッ



俺はため息を吐きながらそっと寮のドアを開けた。静まり返ったリビングへと足を踏み入れる。



ある場所を見て俺は立ち尽くして、目は見開いた…。


「……あ?」


そこには、ソファで寝落ちしたように眠る澪がいたからだ。

小さな体を丸めて無防備に寝ている澪。


そして…デーブルの上にぽつんと置かれた夜ご飯とホワイトボード。

そのホワイトボードには少しだけ消えかかった澪の綺麗な文字が並んでいた…。


【響也くん、おかえりなさい】


「………っ…」


胸の奥が、ぎゅっと音を立てて今までにないほどに胸が締め付けられた…。



「二度と待つな、しつこい、うざい、お節介」


あれだけ酷くて最低な言葉を投げかけて、お前のこと傷つけたのに…!



なんでお前は…こんな所で待ってるんだよ…。

バカじゃねぇの…。

こんなクソみたいな俺の事なんかほっとけよ…。


最後あんなに怯えてたくせに…怖いなら近寄ってくんなよ…。

本当にくそほどお節介…。



胸を締め付ける罪悪感と悲しさと呆れ。

そして…何よりも嬉しさと愛おしさが胸いっぱいに広がった。



俺は小さくため息を漏らした。


「……まじでどんだけお人好しなんだよ……」


ぽつりと呟くと俺は、ソファで眠る澪に近寄る。


そして澪を抱き上げた。


俺のことをずっと待っていた澪の体は冷たく冷えきっていた。その冷たさにまた申し訳なさと嬉しさで胸がぎゅっとなる。


そして驚くほど軽くて華奢な体を、俺は壊れ物を扱うように大事に優しく運んだ。


澪は俺の腕の中の温もりが、心地よかったのか、小さく幸せそうに微笑むと俺の胸の中に顔を寄せてきた。


その姿があまりにも可愛いくて、俺の心臓がうるさく鳴り出すのを感じながら澪の部屋に入るとベッドにそっと置いた。

そして優しく布団を掛けてやった。



その時だった……。


俺は目を見開く…。



俺の目に飛び込んできたのは、大事に飾ってある古びたテディベアのキーホルダー。


「……え?」


俺は雷に打たれたような衝撃が走った。



俺が見間違えるわけがない…。

あの日俺がこの手であいつを喜ばせたくてプレゼントした。

世界に一つだけの思い出のキーホルダーだ。



「……嘘だろ……? 澪が……?!は……!?」



あまりの衝撃に、俺は目を見開いたままキーホルダーと澪を見比べてその場から一時動けなかった…。




────────────…


澪side



チュンチュンと鳥の鳴き声で私はゆっくりと目を覚ました。



…あれ…温かい…


?!


私リビングにいたはずだよね…??

なんで自分の部屋のベッドに寝てるんだろ?



驚きで私の目はバッチリと冷めた。



もしかして碧くんか春琉くんが運んでくれたのかな…?申し訳ないことしちゃったなぁ…。



と思いながら私は急いでリビングに降りた。


そしていつも通り朝ごはんとお弁当の準備に取り掛かる。

いつも通りテキパキと料理をしていると背後から静かな足音が聞こえてきた。



振り返ると、私はビックリして目を見開く。



そこには気まずそうに申し訳なさそうに…そして切なそうな顔をした響也くんが立っていたからだ。



えと…私のことを避けて朝ごはんも食べてくれなかったよね…?

響也くんがこんなに早い時間にここにいるなんて…なんかあったのかな…?



だけど何も言わないで私を見つめる響也くんの顔は全然怒ってなくてただなにか気まずそうにしていた。



そんな響也くんに私は目の前にいてくれることが嬉しくてニコニコとした満面の笑みで響也くんにホワイトボードを見せた。



【響也くん、おはようございます。 朝ごはんもう少しでできます】



そんな私に目を見開く響也くんは視線をそらすと少しだけ泣きそうな顔をして


「…うん」


と小さく返事をしていつもの席に座った。



その後、碧くんと春琉くんがリビングに入ってきて春琉くんは

一瞬響也くんを見つけるとビックリしていたけど何も言わないでいつも通り響也くんの隣に座っていた。



今日の朝食は響也くんがいるのが嬉しくてとても美味しく感じた。



その後みんなにお弁当を渡していくと、響也くんはお弁当をジッと見つめると、意を消したように真面目な顔で私を見つめてきた。


いつもの最近の怒ってる顔じゃなくて、明るくサラサラな髪の毛と綺麗な顔で真面目に見つめられて…


少し動揺しながら、…ど、どうしたのかな?と思っていると


「……なぁ、澪。お前の部屋にある……あの、テディベアのキーホルダーってさ……」


キーホルダー?テディベアのやつかな?

響也くんに見せたことあったっけな…?


唐突にキーホルダーのことを聞かれて、声の出ない私は不思議そうに首を傾げて響也くんを見つめ返した。



響也くんが、さらに何かを言おうと口を開きかけたその時…


「おーーーい! 響也ーー!! 遅れる!!早くしろよ!!」


玄関から春琉くんが響也くんを呼んでいた。


「……ちっ」


何かを言いかけてた響也くんは舌打ちを漏らすと溜息をつき


「……やっぱりなんでもねぇ! またあとでな!」


響也くんはそれだけ言い残すとお弁当箱をしっかりとカバンに入れて、慌ただしく玄関へと走っていってしまった。



なんだったのかな…?



と思いながら今日もみんなを元気に見送った。






───────その日の夜。



私は今嬉しくてビックリしている。

一度も夜ご飯を家で食べたことがない響也くんがダイニングテーブルに座っていたからだ。



初めて全員が揃った…!!



みんなが座っている光景に私の目は少し潤んだ。

そんな光景にウキウキしながら私は夜ご飯をみんなに運んでいく。



「へぇ…響也めずらしーじゃん…なんかあったわけ?」


と鋭い春琉くんは響也くんに尋ねる。


「別になんでもねーよ」


と久しぶりに明るそうに話す響也くんを見た。



そして響也くんの視線がチラチラ私を向くけど、よくわかんなくてニコニコしながら


ん?と顔を傾けるけど耳を赤くして目を逸らされるだけだった。



そしてみんなで「いただきます」をしてご飯を食べた。みんなで食べるご飯はすごく美味しくて、食べながら感極まってきてしまった私の目はいつの間にかウルウルとしていた。



それを見た碧くんが


「み、澪ちゃん!!どーしたの?!」


春琉くんも


「…は?お前何泣いてんの?どーした?」


と言ってきて



私はみんなにホワイトボードを見せる。


【響也くんが早く帰ってきてくれて私のご飯を食べてくれて、みんなが揃ってるのを見るとすごくすごく嬉しいです!幸せですっ!】


みんなの顔を見ながらふわりと泣きながら笑った。



その瞬間、響也くんが目を見開き私の顔をジーッと見てくる。


「…その…泣き笑いの顔……」


と、ポツリと呟いた。


私はそんな響也くんにん?と頭を傾ける。



すると真面目な顔で私に


「……なぁ…澪。ちょっと今から2人で話さねぇ?」


私が返事を書こうとペンを握った瞬間。




────ガチャッ!!!



リビングの重たい扉が、ものすごい勢いで開け放たれた。



みんなが一斉に扉を振り向く。


「みんな久しぶり〜! 元気にしてる〜!?」


「「「「え?!?!?」」」」



入ってきたのは、華やかなオーラを纏った大人の女性。そう!この人は私たちが通う高校の理事長先生だ!


あまりにも突然の登場に、スプーンを落とす碧くんや固まる春琉くん。



しかし、理事長先生はキッチンの前に立つ私の姿を見るなり綺麗な目を見開いた。



「あれっ!? なんで栗山さんがここにいるの!?」


私もなんで理事長先生が?!とキョトンと理事長先生を見つめる。


「え……? お袋、なんで澪のこと知ってんの……?」



春琉くんをはじめ響也くんも碧くんも律くんも全員が「え……!?」と私を見て目を見開いている。



私は逆に春琉くんの「お袋」にビックリした。

つまり私の高校の理事長先生は寮の持ち主でもあり、春琉くんのお母さん?!



そして驚いているみんなに慌ててホワイトボードを手に取って必死に文字を書き、4人の前に掲げて見せた。



【私みなさんと同じ高校ですよ。ちょっと家族のことで色々あって声が出なくなってから理事長先生がいろいろと良くしてくれて……。通信制に切り替えてもらってるだけです】



その文字を読んだ瞬間、リビングがしんと静まり返った。


春琉くん、響也くん、碧くんの3人

まぢで?とした顔をまま目を見開いていた。



そんな大パニックの静寂の中。



隣に座っていた律くんだけが、いつもと変わらぬマイペースさでポツリと呟いた。


「……あ、俺と同じなんだ……」



そしてそんな様子を見ていた理事長先生は、さっきまでニコニコしていた顔を真面目そうな顔に切り替えて私を見つめた。


そして次の瞬間…ふと目を細めてどこか寂しげで優しい意味深なトーンで呟いた。


「……栗山さん本当に元気そうでよかったわ。あっちのソファで少しお話ししましょうか?」


その理事長先生の、どこか澪の過去をすべて知っているかのような優しい声。


今まで謎だった澪のことがわかるのか…??


とみんなが静かに鋭い視線を理事長先生と澪に向けるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ