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【キミの声を聞かせて】~声を失った少女は、四人の王子に溺愛される~  作者: みみまる.com


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6/12

EP6:響也くんと喧嘩。



───────翌朝



昨夜あの後は、あまり眠れなくて洗面台の鏡の中にうつる私の目の下には薄っすらとクマができていた。


そんな自分に気合を入れるために頬っぺたを両手でペチッと叩く。


ダメダメ!弱気になったら…きっとなんかあるんだよ…だって、響也くんはそんな人じゃないもん…。


暗い気持ちを追い払って、昨日春琉くんと大量に買い込んだ食材たちを並べた。

今日からはその食材を作って、朝食と一緒にお弁当も作っていった。



すると、みんなが起きてきたようだ。


「澪ちゃんおはよ〜!!」

「…おはよ」


そう言って元気よく笑う碧くんと真逆に眠そうでだるそうにしている春琉くん。

だけど、春琉くんの反射神経は凄ましく相変わらず私に抱きつこうとしてくる碧くんを一瞬で察知して


「…させねぇ」


そう言って春琉くんが碧くんの首根っこをガシッと掴んでダイニングテーブルまで碧くんを引きずっていく春琉くん。


「春琉くんひどい!!」


なんて朝から騒がしくてそんな二人に少しだけ元気になる。


【おはようございます】


私もニコニコとホワイトボードを見せた。



だけど……、今日はその二人しかリビングに入ってこなかった…。


朝食を食べながら


【響也くんは?】


とホワイトボードを見せると


「しらねぇ」


と朝ごはんを食べ進める春琉くん。

その横で碧くんが


「響也くんならもう家出てたよ〜。なんか朝から機嫌悪そうだったぁ」


そんな碧くんにやっぱり私を避けてるのかも…と思うと正直へこんだ。


だけど、みんなの前で暗い顔なんてしてられない。



明るくいつも通りに


【昨日たくさん食材買えたのでお弁当今日からあります。持って行ってください!】


ホワイトボードを見せるとお弁当をそれぞれに渡す。


「えっ!!お弁当?!すごい!!本物だ!」


お弁当に本物偽物があるのだろうか?なんて疑問に思うが、嬉しそうで私も微笑んでしまう。


「さんきゅ」


と、フッと笑うと春琉くんも受け取ってくれた。

そして、響也くんと春琉くんは仲良しだから春琉くんにお願いをする。


【響也くんにも持って行ってください】


ホワイトボードを春琉くんに見せるともう1つのお弁当を春琉くんに渡す。



春琉くんはお弁当を受け取る時に、私の顔をあまりにもジーッと見てくるもんだから

私は、…なんだろう?と気恥ずかしくて俯いてしまった。


すると、春琉くんの大きな手が私の顎を捉えるとグイッと私の顔を持ち上げた。


その瞬間綺麗な春琉くんの顔が私の視界いっぱいに広がる。サラサラの黒髪の隙間からは私を捉える綺麗な瞳。


「…お前、目の下どうした?」


私は赤くなる顔に慌ててホワイトボードにペンを走らせて春琉くんに見せる。


【なんでもないですよ】


「…ふーん」


それだけ言うと、春琉くんはそれ以上は何も聞いてこなかった。


そして


「まっ、渡しとくから心配すんな」


春琉くんは心配そうな私の頭をポンッと優しく撫でるとそのまま玄関に向かっていった。


余計な事とか何も言わないけど、全てを分かってくれているように頭を撫でるその優しさに胸の中が温かくなった。



碧くんと春琉くんを見送ったあと


律くんの朝ごはんをトレーに乗せると一緒にお弁当も持って律くんの部屋を軽くノックして扉の前に置く。


今日も、もちろんメモ付だ。


【おはようございます。お弁当はお昼に食べてください】



律くんへのご飯を運び終えると、今日も大量の洗濯物をこなしあちこち掃除をして回った。

この広い寮の掃除は結構大変で時計に目をやると既にお昼をすぎていた。


キッチンに戻ると前日と同じように綺麗に食べ終わった食器とお弁当箱が置いてあった。

そして、メモもしっかり付いてた。


【お弁当もすごく美味しかったです。ありがとう】


いつも律儀だなぁ〜と思いながら嬉しくなった。





──────その頃お昼の学校。


春琉side


俺は昼休みになるとスマホ片手に席を立とうとした響也のところへ歩み寄った。


「おい」


「…なに?」


学校でこいつが機嫌悪いのは珍しい。

だいたいヘラヘラ明るく笑ってるのに朝からおかしい。

こいつの様子を見て今朝の響也を心配してるような澪と目の下に作ったクマ。

それがなんか関係あるのは一目瞭然だ。



俺は、澪から預かってきたお弁当箱を、響也の机の上にドンと置いた。


「……あ?」


響也が怪訝そうに眉を寄せ、スマホから顔を上げた。


机の上にはパステルカラーの包みに包まれたお弁当箱。


それを見つめる響也の顔は澪からだと察してるようだ。見たこともないくらい複雑で、微妙な表情に変わっていくのを俺は見逃さなかった。


「澪にお前に渡してくれって頼まれた」


「……はぁ?弁当なんか作ってんじゃねぇよ……」


文句を呟きながらも、響也はそのお弁当箱を静かに受け取る。


俺はそんな響也を冷ややかな目で見下ろした。


今朝のあいつの響也を心配する顔を見ていたから無性に腹が立った。



「お前、朝からどーしたわけ?澪がめちゃくちゃ心配してたぞ」


「……べつに。お前に関係ねぇだろ」



響也の周りの空気が、一瞬でピリッと冷たいものに変わる。



こいつが夜な夜ないろんな女と遊び歩いて、何をしているのかなんて俺は詳しくは知らない。


だけど、昔から何か深い事情があるんだろうなとは察していた。


夜中に帰ってきたこいつは、いつも疲れた顔をして寂しそうな苦しそうなそんな顔をしてたからな。


だから、こいつの私生活に口出しするつもりもねぇし、こいつから話すまで俺は聞かねぇ。

だけど……。



「……お前にも色々あんのはわかってっけど、あんま澪をいじめてんなよ」



俺が少しだけ声を低めて釘を刺す。


そんな俺に響也はチッと小さく舌打ちをしてバツが悪そうに視線を窓の外へと逸らした。





────────────


澪side



その日の夜いつも通りみんなが部屋に戻りすっかり静かになったキッチンで後片付けをしていた。


片付けを終わらせてもやっぱり帰ってこない響也くんが心配だった。そして、避けられているせいで顔も合わせてないし話せていない…。

どうしても響也くんと話をしたかったし、無事な響也くんの顔を見たかった。


私はまた一人椅子に座って響也くんの帰りを待ち続けていた。



待ちながら春琉くんの言葉を思い出す。


「文句言いながらも澪の弁当全部食ってたよ」


と教えてくれた。たまらなく嬉しかった。



だから、今日も絶対に待ちたかった。


時計の針が深夜の1時半を回った頃


──ガチャンッ


静かなリビングに玄関から扉を開く音が響いた。



私がパッと顔をあげると椅子から立ち上がって少しだけ緊張して響也くんを待つ。



そして、リビングに入ってきた響也くんは昨日とは違うけど相変わらず女物の香水の匂いをさせていた。


そして私を見るなり驚き目を見開いた。


だけど次の瞬間…響也くんはイライラした表情をして冷たい瞳で私を見る。


「……チッ。お前、昨日俺が言った言葉、聞いてなかったわけ?」


乱暴な足取りで私に近づいてくると響也くんは、私を見下ろし低く威圧するような声で怒鳴った。


「待つなって言ったよな?なんでまだ起きてんの?迷惑だって言ってんだけどわかんない?」



怒って見下ろしてくる響也くんにビクッとなる私。


だけど…負けちゃダメ…!ここで引いたらもう響也くんは二度と笑ってくれないかもしれない…話してくれないかもしれない…帰ってこないかもしれない…!!


私は震える手で必死にホワイトボードにペンを走らせ、響也くんの目の前に掲げた。


【いつも優しくて明るい響也くんが、いつもと違ってすごく怖いです。何かあったのか心配です。どうしても気になります】


必死に震えながらホワイトボードを掲げる私の姿に、響也くんは一瞬だけ目を見開いた。

だけど、すぐにその瞳は冷たさを戻した。


「……は? 心配? 冗談じゃねぇよ。お前のそういうところがウザくて嫌なんだよ! 頼んでもねぇお節介してくんじゃねぇよ!!」


「……っ」


響也くんの口から出てくる言葉たちが私の胸をぐさぐさと突き刺した。


悲しくてショックで視界が涙で歪んで


──ゴトンッ


私の手からはホワイトボードが滑り落ちいった…。


太陽みたいに明るく楽しい響也くんしか知らない私は、目の前にいる冷たい目と冷たい言葉を発する響也くんにショックでその場に立ち尽くした。


ホワイトボードを拾う気力も私にはなかった。



あぁ…ダメだ。今日も響也くんを怒らせてしまったみたい…。



そんな私をチラリとみると視線を逸らし


「もう二度と俺を待つんじゃねぇぞ。部屋戻れ」


そう冷たく吐き捨てると響也くんは私に背を向けて階段へと向かっていく。


何も言えなくて響也くんの後ろ姿をただただ見送る私の耳に、階段の手前で響也くんがボソッと漏らした声が微かに届いた。


「……クソ…どんだけお人好しなんだよ……」


それは怒っているというよりはどこか切なそうで苦しそうな…そんな呟きだった。


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