EP23:私の気になる人。
あの事故からやっぱり少しだけ春琉くんは変な感じがする…。
そして律くんと私も全日制になってからみんなと高校に通い始めて数日が経った。
──キーンコーンカーン……
昼休みになってお弁当を持って席を立ち、春琉くんたちに声をかけようと思ったけど…高校に通い出して気づいたけど…みんながかなり人気があるってこと。
…はぁ…まただ。
特に…春琉くんはあんなに冷たくしてても女の人からの人気がすごくてなんだか私は春琉くんはもちろん他のみんなも人気で中々話せないでいる…。
「白波くん、今日もお弁当なのー?」
「…チッ……うるせぇ近寄んな」
「えー冷たぁい」
そんな様子を見てると私はずっと胸がズキズキと痛んでおかしい。
なんとなく自分の気持ちには気づいてるんだけどねー…。
あの事故の日、初めて声を振り絞って出した日に春琉くんの事が好きだって思ったんだよね…。
どうしても助けたくて春琉くんの為なら二度と声が出なくなってもいいから今だけはって思った…。
だけど気づいた瞬間、現実はこんな感じ…。
一緒に学校行くようになった今より寮で待ってた時の方が心の距離が近かったように感じるのも多分…私の心の問題だ。
それに最近なんだか春琉くんがおかしい…
それもあって余計に落ち込む…はぁ…。
待ってようかな…と思ってたけど、なんだかこれが毎日続いてて私は少しだけ弱気になっていた。
春琉くんのそんな姿を見たくない私は…
お弁当を持って一人教室を出る。
すると、教室から春琉くんの声が響く。
「…どけっ!」
そして走ってきた春琉くんが私の手を掴む。
「…どこ行くんだよ」
「…あ、えと…声かけにくくて…」
「はぁ…勝手にどっか行ってんなよ、行くぞ」
そう言って春琉くんはズンズン歩き出す。
私は心の中で驚きと嬉しさの中、私の手を引いて歩く春琉くんの大きくて優しい背中を見つめながら胸がきゅっとなる。
たぶん…あの事故の日の病室で俺が守るって言葉を守ってくれてるんだ。
連れてこられたのは中庭で、ここに座れと春琉くんの横に手を引かれた。
「お前なぁ…勝手に行こうとすんなよ」
お弁当をギプスのしてない左手で広げながら少し不機嫌そうな春琉くん。
「…ご、ごめん…」
「別にいーけど、なんかあった?あんだけ律とか響也と毎日学校楽しそうにしてたのに最近元気ねーじゃん」
私が入れといたフォークで器用にお弁当を食べる春琉くんがチラリと私を見る。
「そっ…そんなことないよっ」
「…へぇ…嘘はきかねぇって前に言った気がすっけど?」
「…うぅ…」
「おら、言え」
そう言ってうじうじ悩む私に隣で笑う春琉くん。
あーもう…こんな悩んでるの知らないで楽しそうに笑ってて…はぁ
「…春琉くんが…」
「なんだよ?」
「……女の子に囲まれてるの…嫌だな…って…」
うわぁぁぁあ…恥ずかしい……。
たぶん顔真っ赤だよ…。
と両手で自分の顔を隠す…けど、春琉くんの返事がなくて指の間から春琉くんを見ると
フォークの先から卵焼きがポトリ…と落ちてポカーンとしていた。
「…春琉くん…?」
「え…あ…悪い…ちょっと予想外で…」
「…だ、だよね……」
すると頭をガシガシとかいたあと
「…こっち」
そう言って久しぶりに抱き寄せられた私の体。
あれからなんだか少し変だった春琉くん。
久しぶりに匂いと温もりを感じて私の胸は爆発寸前だ…。
そして
「またあいつらに怒られちまうなー」
そう言って切なそうに笑う春琉くん。
「別に怒られても…いいよ…」
「はぁ?お前、だって…あいつが……あー……なんでもねぇ」
そう言って私から手を離すと少しだけ笑って何かを誤魔化す春琉くんは、少し苦しそうに見えた。
そしてボソッと呟く。
私には聞き取れなかった。
「はぁ…我慢してんのに…俺のことこれ以上振り回してくんなよな…バカ」
……?
その時…
「あ〜っ!見つけたぁ〜!!」
そう言って駆けつけてきたのは碧くんだった。
「あ、碧くん」
「二人でご飯食べてるなんてずるい〜っ!!響也くんと律くんはなんでいないの?」
春琉くんはそんな碧くんを見ると我に返ったように立ち上がる。
「響也と律、女に捕まってたから呼んでくるわ」
そう言って去っていってしまった。
その後ろ姿をいつの間にかずっと見てたみたいで
「澪ちゃん…?」
「…あ…ん?」
「春琉くんが気になる?」
私の顔を下から覗き見てくる碧くん。
なんとなくその目は誤魔化せない気がして私は素直に答える。
「…うん…」
「そっかぁ…悔しいなぁ。澪ちゃんは気づいてたかわからないけど…出会った頃からいつも春琉くんを見てたよね」
私に優しく笑う碧くんは少し寂しそうにしていた。
「そうかな…?あんまり自覚はなかったかも…。私を最初に見つけてくれたのは春琉くんだったからかな…?」
「…ねぇ澪ちゃん、僕が最初に澪ちゃん見つけて助けてたら違ったのかな?」
考えてみるけど…わかんない。
春琉くんの事はそれだけで好きになった訳じゃない…気がする。
いつも不器用だけど優しくていつも私を気にかけてくれてたし…。
何も答えれないでいる私に
「ははっ…悔しいなぁー…ねぇ僕にちょっとだけ時間くれない?」
「…え?…どうゆう事?」
「こうゆう事っ!!」
そう言って私の手を引くと走り出す碧くん。
なぜか校門をくぐって学校の外に走り出す碧くん。
「あ…碧くんっ!!ど、どこいくの?学校は?」
「いいからいいからたまにはサボってもバチなんて当たらないよ〜っ!!」
キラキラした笑顔でミルクティ色の髪の毛を靡かせながら楽しそうな碧くんを見てると少しだけ元気になる気がして
…今日ぐらいはいいかな?なんて思った。
楽しそうな碧くんに釣られて私も碧くんに着いて行くことにした。




