EP21:それぞれの決意。
あれから少しだけ時間が経ち…
私は大きい声はまだ出ないけど、普通に話せるようになった。
そして、春琉くんも無事に退院してギプス姿で寮に帰ってきてやっと四人が揃って数日。
春琉くんは退院してから少しだけ様子がおかしかった。何が?と言われるとよくわからないけど…
そんな中、今日もいつも通りの朝がやってきて私は朝ごはんの準備に追われている。
そして、私は色んな決意を胸の中に秘めていた。
朝一番乗りでやってきたのは碧くん。
「澪ちゃんっ!!おはよぉ〜!!」
「おはよう、碧くん」
私がニコリと笑いながら朝食の準備を続けていると、私の横に来てニコニコとしている。
「ねぇねぇ、僕の名前可愛い声で呼んでーっ」
そう言って、私の声が出てからよく名前を呼んでほしがるようになった碧くん。
「ふふふっ、碧くん…これで、いいかな?」
「うぅっ!本当に可愛いっ!澪ちゃん大好き〜っ!!」
そう言う碧くんに少し照れていると
「碧〜っ澪のこと照れさせてんなよ〜。澪、おはよっ」
そう言って後ろから現れたのはきょーくん。
「きょーくんもおはよっ。もうできるからちょっとまっててね?」
そう言って私が笑うときょーくんは赤くなる。
「…碧と俺も同類とか最悪…。あーくそーまぢ可愛いんだけど」
「…もう二人ともからかわないでよ。ご飯できるよ」
そして、私はご飯を仕上げていくとテーブルに並べる。
すると、春琉くんも眠たそうに起きてきた。
「…はよ」
「春琉くんおはよ、手の調子は大丈夫?」
「…ん、大丈夫」
やっぱり少しだけ春琉くんには違和感はあるけど、とりあえずみんな揃ってご飯を食べる。
まだ律くんはここにいないけど、みんなに話をする。
「あの…」
みんなどーしたの?と私を見る。
「声がだいぶ戻ったので…みんなと学校にそろそろ行こうと思ってます…っ」
「ええっ?!本当に?!」
碧くんは、大袈裟なぐらい驚いている。
「…うん。元々声が戻ったら全日制に戻る予定だったから」
すると春琉くんが
「…りょーかい、お袋に伝えとく。よかったな」
「ありがとう…おねがいしますっ」
そう言って頭を下げる私の頭を春琉くんの大きな手が優しく撫でる。
やっと…みんなと学校に行ける所まできたんだ…。声が出るようになったのもここにいる温かいみんなのお陰だと思う。
そう思うと少しだけ目が潤んだ。
「よかったな澪。俺もすげぇー楽しみ」
そう言ってニコッと笑うのはきょーくん。
私はみんなに満面の笑みで
「みんな…いろいろとありがとう…。たぶん、声が出たのは優しいみんなのおかげだから。たくさん楽しくて温かい時間をくれて…本当にありがとう」
そう言って私は感謝の気持ちを伝えた。
その後、みんなが学校に行くのを見送ると
律くんの部屋に朝ごはんを運ぶ。
【おはよう。朝ごはん食べてね。お昼はうどんだよ〜】
相変わらず律くんにはメモを残している。
そして、私はいつも通り掃除と洗濯をこなす。あっという間にお昼になると、お昼の準備をする私の所に律くんがゆったりとした足取りであらわれる。
「…澪、手伝う」
その声に振り返り
「ありがとう」
私もにっこりと笑う。
一緒にこうやって二人で過ごす時間も、あと数日だ。お昼は楽しく食べたいから律くんにはお昼を食べたら伝えようと思う。
そして、作り終えたご飯を二人で食べる。
「澪の声はいいね」
「そうかな?普通だよふふっ」
「凄く可愛いくて心地がいい。ずっと聞いてられる」
そう言って笑う律くん。
こうやって静かに笑い合うそんなゆったりとしたかけがえのない二人時間もあと少し…。
その後もたわいの無い話しで二人で笑い合うとお昼を食べ終わり二人で片付けをする。
律くんにこの話をするのが一番勇気がいる。
私は律くんを置いていく側になる…。
きっと置いていかれる人は置いていく人より辛いから…。
そう思うと胸がぎゅっとなる。
なかなか言い出せずにいるといつも通りマイペースに部屋に戻ろうとする律くんを慌てて私は追いかけると後ろから服を掴んだ。
少しびっくりした顔をして私に振り返る律くん。
俯きながら黙り込んで服を掴む私を見た律くんは優しそうに声をかけてくれる。
「どーかした?」
「…うんっ」
「そっか、どーしたの?」
「…少しだけ…話いい?」
そう言うと律くんは洋服を掴んでた私の手を優しく握ると私の手を引きリビングのソファに誘導した。
「立ちながらじゃなんだし、話って?」
そう言って涙黒子のある優しい目で私を見つめる律くん。
私がお昼いなかったら…これから律くんは…と思うと、少し口ごもる。
そんな私に何も言わずゆったりと待ってくれる律くんは心地がいい。
そして覚悟を決めて静かに口を開く…
「私…学校…全日制に戻るの…」
すると、律くんの目が見開きその後、寂しそうになる。
やっぱりそうだよね…そんな顔をさせたくなかった…。
「…一緒にいてくれるって言ったじゃん…」
そう言って大きな律くんが私に手を伸ばしてくると私を切なそうにぎゅっと抱き締め包み込む。
切なそうに私に抱き着く律くんを一人だけ置いていくのは、やっぱり胸が痛くて苦しくなる。
長い沈黙の後、私の頭に気だるげに顔を乗せた律くんが低く擦れた声で呟く
「俺が嫌だ行かないでって言っても、澪は行くの?」
「…うん…」
「…はぁ…行かないでよ」
そう切なそうに言うと私を更に強く包み込みぎゅっと抱き締めた。
「…ご、ごめんね…」
「はぁ…いいよ…澪が悪いわけじゃないし」
律くんはその後何も言わずに私を抱きしめながら暫く何か考えてるようだった。
そして、律くんは私の体をゆっくり離すと
「俺も…いろいろ決めた、澪と離れるなんて無理」
そう言って私を綺麗な顔で見つめると、顔が近づいてくる。
そして私のおでこに軽くキスを落とした。
「…なっ…!!!!」
私の真っ赤な顔を見た律くんは相変わらずいつものマイペースに戻ってて
「えー、澪はそんなことで顔真っ赤にさせちゃうんだ。すごく可愛いね?じゃ俺部屋戻るから」
そう言って真っ赤な顔をした私を残してリビングを去って行った…。




