EP14:碧くんの熱と看病。
春琉くんを追い掛けて、痛む右足を引き摺りながら二階にあがると廊下で倒れている碧くん。
碧くん…!!!
「碧…!大丈夫かっ?!部屋運ぶからっ」
春琉くんは碧くんの様子を見たあと急いで抱き上げて部屋に入っていった。
私も続けて部屋に入ると碧くんは顔を赤くして辛そうに呼吸をしていた。春琉くんが碧くんをそっとゆっくりと寝かせると布団をかけてあげた。
ホワイトボードにスラスラと必要なものを書いていく。
【体温計、氷枕、タオル、水分補給用のお水、薬持ってきて貰えませんか?】
それを見たきょーくんが
「わかった!とってくる!」
と返事をすると急いで階段を駆け下りて言った。
私は苦しそうな碧くんの手を握る。
碧くん…ごめんね…雨に濡れたせいだよね…
「…澪ちゃん…?」
私はコクコクと必死に頭を動かして頷くと
「手…ありがとう…握っててくれる…?」
ホワイトボードを握りしめて碧くんに見せる。
【もちろんです。握らせてください】
それを見た碧くんは
「…ありがとう」
そう言って苦しそうに目を閉じた。
そして、きょーくんが色々と持ってきてくれた。私はそれを受け取ると薬を飲ませたいとホワイトボードで春琉くんに伝える。
声が出ないあたしの代わりに春琉くんが
「碧、薬飲めるか?」
と声をかけるとうっすらと目を開けた碧くんがコクリと頷いたのを見て、春琉くんが碧くんを少し起き上がらせると私は薬とお水を碧くんに渡した。
薬を飲み込んだのを見て少しだけホッとする。
私は碧くんの頭の下に氷枕をいれてタオルで汗を拭いてあげた。
辛そうな碧くんを見ると私まで胸がぎゅっと痛んだ…。
そして…
暫くすると薬が効いてきたのか碧くんの顔色が少しだけ良くなってきた深夜。
「俺そろそろ部屋戻るな?春琉と澪ちゃんも早く寝ろよ?」
そう言ってきょーくんは部屋に戻った。
「澪はどーすんだ?」
春琉くんがずっとあれから碧くんの手を握り続ける私に尋ねてきた。
少し手を離してホワイトボードに文字を書く。
【私はここにいます。春琉くんは寝てください】
ホワイトボードを見せてニコリと笑うと、春琉くんが急にポツリポツリと喋りだした。
「なぁ…前に碧が澪に抱きついて泣いたことあったろ…?」
急にそんな話をしてくる春琉くんに不思議に思いながらコクコクと頷く。
「こいつんち超金持ちなんだけどさ…昔から両親が忙しくて家政婦たちに世話されてたせーで人より普通の愛や生活に憧れてんの…たぶん澪って優しく包み込むような優しさ持ってるからさ…あいつあん時泣いたんだと思うんだわ…」
私は黙って春琉くんの話を聞く。
「たぶんこうやってずっと付き添って貰ったこともこいつねぇからさ…本当はムカつくけど今夜だけは碧に付き添っててやってくんね?」
そう言うとフッと優しく笑う春琉くん。
友達思いで本当に素敵だな…。
【わかりました!任せてください。私今夜はここにいるつもりだったので春琉くんは気にせず寝てください!】
ホワイトボードを見せて春琉くんに笑うと
「ん…頼む。なんかあったら部屋こいよ、おやすみ」
そう言って春琉くんも部屋を出ていった。
春琉くんが出て行った部屋で、碧くんの手を握りしめながら私は碧くんの今までの行動を思い返す。
碧くんは…いつも私が料理する姿を嬉しそうに楽しそうに見てたな…。
私が作る普通のご飯もお弁当も人一倍喜んでいた。
そして、あの泣いた日はただ洗濯物を畳むどこにでもある、ありふれた平凡な風景を見て…泣いてた。
そして毎回温かくていいねって言ってた。
全部の行動がパズルのピースのように繋がった気がした…。
碧くんは愛に飢えた小さい子供のように感じた。
だから春琉くんはあの時澪は母ちゃんじゃねーぞって言ってたんだ。
碧くんと、仲良しな春琉くんは全部わかってたんだ。
そう思うと、私がついててあげなきゃ!と気持ちが湧いてきてその後もタオルを変えたり氷枕を変えたりしながら一生懸命碧くんのお世話をした。
元気になって…!!
と願いながら手を握り続けた…。
そしていつの間にか疲れて夢の世界へ…。
─────────────……
碧side
風邪の時はいつも孤独で不安になる。
だっていつも一人で心配してくれる人なんていない大きなベッドで眠る孤独が胸を締め付けるから…。
僕のことを心配してくれる人なんて世界には誰もいないようなそんな気持ちになる…。
雨に打たれた僕はその夜嫌な予感がした…。
体が酷く重くてだるかった…そして熱っぽい…。
水を取りに行こうと部屋を出た時、思いの外ふらふらとして、次の瞬間意識が遠のいていくのを感じた。
あ…やばい…倒れる……最悪だ…。
また一人ぼっちなのかな…。
と熱のせいでまた酷い不安と孤独に包まれながら僕は倒れてしまった。
その後のことはあまり覚えていない。
ただ孤独の中…誰かの手の温もりに酷く安心したのを覚えている。
少しずつ目が開くと…
見慣れた寮のまだ暗い部屋の天井が目に入る。
眠る前はあんなに苦しかったのに今はだいぶ楽になった…。
そして自分の手の重みのある方に視線を向けると、手を握りしめながら眠る澪ちゃんの姿。
「……っ!!」
いつから握っててくれたんだろうか…
一晩中、一緒にいてくれたの…?
眠ってる時に温かくて安心したのは澪ちゃんの手のおかげ…??
………っ
僕の為にこんなことしてくれる人が今までいただろうか…
この世界にはそんな人いないと思ってたのに…
…澪ちゃん…心配してくれてたの…?
そう考えるだけで胸の中がじんわりと温かくなって目が潤む。
澪ちゃんと暮らすようになってから温かい澪ちゃんのせいで泣き虫になっちゃったじゃんか…。
スヤスヤ気持ちよさそうに眠る澪ちゃんを見ていると胸がドキドキと音を立てだした。
…ちゅっ
気がついたら一生懸命手を握りながら眠る可愛い澪ちゃんのおでこにキスをしてた。
「…うわ…なにやってんだろ僕…」
急に、自分のしてしまった行動に恥ずかしくなって再び布団を被る。
「…澪ちゃん…ありがとう…大好き…」
眠る澪ちゃんにポツリと小さく呟いてお礼を言いながら、澪ちゃんの温かい手をぎゅっと握りしめて安心した気持ちで再び眠りについた…。




