EP12:雨の日の大騒動。
律くんがお部屋に戻って行った静かなリビングに雨音が響いてきた。
わっ…大変!洗濯物!!
私は急いで広い庭に行き、慌てて洗濯物を部屋の中に放り込んでいった。
無事に濡れずに済んだ洗濯物たちを畳んでいると、あることに気づいた。
そういえばみんな傘持っていってないよね…。大丈夫かな…?
するとガチャンと開いた玄関から騒がしい声が聞こえてきた。
「うわぁ〜!!ギリギリセーフ!!」
「雨やばくなりそうだなっ!」
私は玄関に顔を出すと少しだけ濡れている碧くんときょーくんだった。
私は濡れている二人を見て慌ててホワイトボードに文字を書くと
【おかえりなさい。お風呂沸かすのでまっててください】
それを見せると二人にタオルを渡して急いでお風呂を沸かした。
春琉くんは…まだ帰ってこない…。
窓を見るとさっきより雨が酷くなっていた。
碧くんときょーくんはお風呂が沸くと二人仲良くお風呂にいってしまった。
そして私は、意を決してメモ帳にペンを走らせる。
【春琉くんをお迎えに行ってきます】
その手紙をダイニングテーブルに置くとホワイトボードと傘を持って家を出た。
久しぶりに学校までの道を歩く。
歩いている間にもだんだんと雨が酷くなってきた。そしてしばらく歩くと学校まで着いてしまったけど…春琉くんとは会えていない…。
もしかして…すれ違いになっちゃった…??
会えなかったことにへこみながら元来た道をトボトボ歩いていると
「にゃあ……にゃあ……」
茂みの向こうから猫の声が聞こえた。
こんな雨の中大丈夫?!と思うと
いても立ってもいられなくなった私は草むらの中を進んだ……
すると…
ひゃっ!!!ドスンッ!!
草むらで見えなかったが草の先に一段下がった地面が広がっていて落ちてしまった。
あいたたた…泥まみれになっちゃた…
立ち上がろうとするが右足だけ挫いてしまっていて…どうしても左足にしか力が入らない。
右足に力を入れようとすると痛くてふわっと力が抜けてしまい…ここを登れそうになかった…。
どうしよ…痛みが無くなるまで待つしかないかな…助け呼びたくても声が…。
私は自分の状況が最悪なことに気づき体育座りをしてその場でうずくまった。
どうしよう……春琉くん…帰れたかな…
─────────────…
春琉side
「ただいま…クソ最悪…」
大雨の中傘もささず学校から寮まで帰ってきた俺は服も髪もびしょ濡れだった。
帰る途中、女に傘に入らないか?としつこく絡まれ災難だった。
脱衣所を開けタオルだけ取るとガシガシと頭を拭きながら澪の待つリビングに入ると澪の姿はなく静まり返っていた。
「……部屋か?」
リビングを見渡したがいる様子はなく2階にあがろうとふと視線をずらした時に目に入ったメモ。
そこには
【春琉くんをお迎えに行ってきます】
「……は?」
それを見て俺の目は大きく見開く。
は?…俺澪に会ってねーぞ?!
心臓がドクリと嫌な音を立てる…。
焦ってリビングを飛び出そうとした時にちょうど風呂上がりの碧と響也が仲良くリビングに入ってきた。
「あ、春琉おかえり、お前も風呂入れよー。すげぇびしょ濡れじゃん」
「春琉くんおかえり〜風邪ひくよ〜?」
「おいっ!!澪はどこ行った?!」
俺は呑気なコイツらに焦りながらつめよると
「は?さっきまでリビングにいたはずだけど…」
「そうそう、お風呂は澪ちゃんが沸かしてくれたんだよ〜」
そんな呑気な二人にメモを指さす
「これ見ろ!!あいつ俺を迎えに外出てったぞ!!」
俺が指さすメモに二人が一斉に視線を向ける。
「…は?!」
「…うそ!…澪ちゃん…っ!!」
ようやく自体を飲み込めた二人は焦って顔を青くする。窓の外を見るとさっきよりも雨が酷くなっていた。
「クソ……ッ!!」
俺たちは手分けして寮を飛び出した。
あちこち必死に探し回るが澪らしき姿はない。
焦りで頭がおかしくなりそうだ…
どこだよ…澪…!!
暫くあちこち探し回ったが見つけることが出来ず、もしかしたら家に戻ってるのか?…という淡い期待を胸に一旦家にもどる。
だが…家にいたのは再び全身びしょ濡れになった碧と響也…澪の姿はない。
まだ誰も見つけられていなかった。
「お前たちはここにいろ!澪が戻ってきたら連絡しろ!俺、もっかい学校までの道見てくる!」
俺は響也たちをリビングに残すと再び玄関を飛び出した。
大雨の中を走り学校までの道をあちこち細かく見ながら進んでいると…
学校までの途中の道の草むらの脇に、ポツンと落ちている見覚えのある傘を発見した。
「……澪……!?」
その傘に駆け寄ると、近くにある生い茂る草の一部が少しだけ奥に向かっていくように倒れて獣道のようになっていた。
誰かが歩いたあとだと一瞬で判断した。
倒れてる草の上を辿っていくとその先は少しだけ一段さがった地面になっていた。
そこで泥まみれになって小さくうずくまる澪の姿が目に飛び込んできた。
「澪……!!」
急いで呼びかけると泣きそうな顔をした澪がこちらを見あげた。
俺の顔を見ると驚いた顔をしたあとに安心したのかだんだん眉がへの字になり涙目になる澪。
俺は斜面を滑り降りて澪に駆け寄る。
「大丈夫か?立てるか?」
すると、澪は頭をフルフルと振って足を指さした。
「怪我してんのか?!とりあえず持ち上げるぞ」
泥だらけの澪の小さな体を優しく抱き上げると、澪の体は雨で冷えきっていた。
強く抱き締め、全力で寮へと戻った。




