病院で
12月の終わり頃、クリスマスもいよいよとなり、街にはケーキやプレゼントの特売が盛んになってきた。
そしてその日は晴れていて、連日の凍える寒さより大分マシな、いわゆる小春日和という奴だろう。
そんな日に、俺は病院の中庭にいた。
「寝てなくて大丈夫なのかよ?」
「大丈夫だよ!元々そんな大変な病気じゃないしね。」
ミナも一緒だった。
ミナはパジャマの上からセーターにカーディガンと完全防寒体制をしいていたが。
俺が病室に着くとすでにその格好で、いきなり
外行くよ!
とか言い出して
大丈夫なのかよ
医者には言ったのか
とか言いながら渋る俺を無理やり引っ張って行きやがり今に至る。
「そういや、お前何の病気なの?」
「…?言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ。」
「肝炎かな。なんか風邪を酷くした感じみたい。1月中には退院だって。」
「肝炎?詳しく知らねえけど、それは多少マシとはいえ冬に外出歩いて大丈夫な病気なのか?」
「うるさいなぁ。あたしの勝手!こんなに気持ちいいのに外でないのは拷問だよ。」
確かに久々の暖かい太陽の日差しは気持ちいい。
確かになぁ
と伸びをした時だった。
ニャー
猫の鳴き声が聞こえた。
「猫!?」
ミナは真っ先に反応する。
「どこ、どこにいるの!?」
「あっ。あそこだ。ベンチの下。」
「ほんとだぁ。猫、猫、こっちおいで!」
ものすごい勢いで猫に近づくミナ。
おいおい、そんな急じゃあ…。
「あぁ。行っちゃったぁ。」
猫は一目散に逃げ出した。
「そりゃそうだろ。そういえば、前に飼ってた猫はどうした?」
ふと、昔ミナが一晩正座で飼うことを認めさせた猫を思い出した。
「キー君の事?」
彼女は急に悲しげな顔になった。
けど、気がつかずに話を進める俺。
今思うと
もう少し空気読め
と思う。
「あぁそう、キー君って名前だっけ。昔、親に秘密で飼おうとした。」
彼女は言いにくそうに、今にも泣きそうな顔で言った。
「…死んじゃったよ。」
「…そうか。」
「去年の丁度クリスマスの日に。もう年だったし。」
本当に泣いているような顔だった。
去年のクリスマス。俺は確かサークルの飲み会で死ぬほど飲まされ、気付くと友達の家でつぶれてた日だ。
あまりの違いに少しショックだった。
彼女は多分、泣いたのだろう。
悲しかっただろう。
その時、俺は隣にいるどころか、バカみたいに酔いつぶれていた。
それは、今までの二人の距離を表しているようで、あまりにも違う年月を過ごしてきた事の証明のようで、すごい悲しかった。
でも、今の彼女は俺の近くにいる。
そして彼女は、泣きそうな顔をしている。
違う年を重ねたけど、今は、今の彼女には笑っていて欲しくて
「じゃあ、二人で一周忌やろうか。」
そんな事を言いだしていた。
「…一周忌って。」
ミナは
もう少し言い方考えろよ
って顔でこっちを見ている。
ヤバい。しくった。
「おっ俺、花とか買ってくるから、二人でまたここで!なっ?」
ごまかし下手だなぁ、俺。
ミナは慌てる俺をクスクス笑いながら見ている。
…どうにか、フォローしきれたみたいだった。
「ふふ。考えとくよ。」
でも、そういった彼女の顔は悲しげだった。




