百物語
短いですが、宜しくお願い致します。
えーと、今日は何を話そうか。
私が上京して一年くらいの頃の話でもしようと思う。
その日私は、友人の家に遊びに来ていた。
高校を卒業してすぐに働くため上京した私と、大学に通うために上京していた友人が三人。
この四人はよく誰かの家に集まり、覚えたての酒を飲み盛り上がっていた。
その日も皆で集まり各自持ち寄った酒を飲み、テレビゲームをしたり下らない話をしながらいつものように楽しんでいた。
時間も深夜帯になり、テレビゲームにも飽きた私達は、怖い話でもしようかという事になった。
季節は夏。辺りは家も少なくとても静かで、怪談話をするには絶好のシチュエーションだ。
普段ならそういう事は真っ先に止める私も、酒の力のせいか乗り気になっていた。
こういうのは雰囲気が大事だと、友人が蝋燭を出してきた。所謂、百物語をしようと言うのだ。
生憎、蝋燭は一本しか無かったが、一話話したら消し、また着けてもう一話、そうして一人一人が話していった。
私が視える事を知っている友人達なので、隠すこともせず体験談をどんどんと話していく。
話していくうちに、周りはネタが尽きたようだ。
それでも私の話は終わらない。一話話しては火を消し、また着けてはもう一話。
まるで何かに取り憑かれた様に話は止まらない。聞く方も話す方も、妙にテンションが上がっていった。
空気が変わったのに気づいたのは、幾つの話を終えた頃だったろうか。
何故だか空気が重苦しく感じた。
これは不味いかもしれないと思い、ここらで止めようと提案する。
だが、友人達はまだ聞きたいと言うのだ。
せがまれた私は仕方なくもう一話話始める。
そこでやっと気づいた。
窓の外に見える畑の真ん中に、「ソレ」が立っていた。
腰まであるだろう真っ黒な長い髪
暗いにも関わらずうっすらと光っているかの様に見える、真っ白なワンピース
そこから伸びる白くて細い腕と足
ギョロっとした眼で此方を睨み付けている女がそこには居た。
私はそれを見ないふりをして急いで話を終わらせる。
そして蝋燭を消し、これで終わりだと皆に告げた。
そして慌てて電気をつけ窓の外を見ると、「ソレ」はもう消えていた。
窓に白い手形だけを残して……
それから何度もその友人の家に集まることがあった。
あの時の女をまた視ることもあった。
でも私はそれを友人に言うことはできなかった。
私がそれを言おうとするたびに、誰も居ないはずの風呂場から音が聞こえたり、急に物が落ちてきたりと、色々なことが起きたからだ。
それから一年ほどして、友人はその部屋を更新する時期になり、引っ越すことになった。
住んでいる間に、特に変わったことは無かったらしい。
引っ越した先の部屋では、もうあの女を視ることは無くなった。
あの時の事は今でも話せていないが、それでいいと思う。
もし話せば、また「ソレ」は友人のもとに現れ、今度こそ側から離れなくなるかもしれないから。
信じられない人は信じられないでしょう。
それでもこれが私の日常です。
百物語はやめた方がいいですよ。
本当に。




