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私の日常の非日常  作者: タフ
12/14

夜の海

早めに更新出来ました。

宜しくお願い致します。


 えーと、今日は何を話そうか。




 私の地元で起きた話でもしたいと思う。







 それは私が二十二歳くらいの頃だったと思う。

 久々に地元に帰省した私は、地元に残っている友人と再会していた。


 会うのは成人式の時以来だろうか。相変わらず黒く焼けた肌のやつに、最近結婚したというやつ、早いやつだともう子供も産まれている様だった。

 積もる話もあるだろうと、次の日をわざわざ休みにしてきたという彼らと、飲み屋へ向かうことにした。


 久々に会うと言ってもそこは気の知れた友人同士。

 近況報告が終わった後は、また昔の様にばか騒ぎ。その日は閉店時間を過ぎるまで飲み倒し、店を叩き出されてまた大笑い。時間はあっという間に過ぎていった。


 時刻は深夜の一時過ぎ。

 まだまだ飲み足りない私たちは、コンビニで買い出しした後タクシーを捕まえ、夜の海へ向かった。


 昔を思い出しながら浜で酒とツマミを広げ、また酒盛りが始まった。

 どれだけ話しても話題は尽きず、本当に楽しい時間が過ぎていった。











 友人の様子がおかしいことに気づいたのは、飲みだしてどれくらいたった頃だったろうか。

 彼は何だかそわそわしていて落ち着かず、しきりに海の方を見ていた。

 どうしたと尋ねても、いや、何でもない、多分気のせいだ、と言うばかり。


 何だよ、怖がらせるつもりかよ、と周りがからかい出していたが、そこで私はやっと気づいた。



 真っ暗な海の方から小さな声が聞こえていることに。






 私が気づいたのとほぼ同時、様子がおかしかった友人が急に立ち上がり、呼んでる、と言いながら海へ向かって歩き出した。

 他の友人は冗談だと思い笑っている。



 私は彼を止めようと声をかけるが、まるで聞こえていないようだった。

 慌てて私も立ち上がり彼を追いかける。腕を捕まえ止めようとするが、それも気にしない様子でどんどんと海へ向かっていく。

 そこでやっとおかしいと気づいた他の友人も慌てて止めに来てくれた。




 数人がかりで何とか押さえ込み、必死に声をかけるが聞こえていない。

 呼んでる、行かなきゃ、呼んでるんだよ、と彼はうわ言のようにぶつぶつと呟いているだけだ。



 強く頬を叩き怒鳴り付け、ようやく正気に戻ってくれた。

 





 やっと落ち着いた彼に事情を聞いてみた。いったい何を見たんだと。

 彼曰く、沖の方に誰か居て、こっちだ、こっちだ、と呼んでいたそうだ。

 声は一つではなく、たくさんの声が誘うように呼んでいる、それを聞いているうちに頭がぼぉっとしてきて、気づいたら頬を叩かれていたそうだ。








 落ち着いた彼を離し、皆で一息つく。さすがに酔いは醒めてしまっていた。

 少しずつ空は明るくなってきている。

 昇ってくる朝陽を見ながら、帰るか、と誰かが呟く。


 楽しい気分が台無しだなー、こりゃ今晩また飲み直しだなー、と、皆でわざと明るく騒ぎながら、道路の方まで歩いていった。











 それからしばらく、私はずっと思い出していた。

 あの時、海から出ていたたくさんの手の事が頭から離れない。





 真っ白な、たくさんの手。

 大人の手も、子供の手も、女の手も男の手も、たくさんの手が海から出てきていた。




 まるで、誰かに助けを求めるように。

 まるで、一人でも多く、仲間がほしいかのように。

 



 こっちに向かってゆっくりとゆっくりと、手を招いているあの手の事を、忘れられずにいた。











 信じられない人には信じられないでしょう。

 それでもこれが私の日常です。

今回は海のお話。

夜の海には気を付けて下さいね。

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