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私の日常の非日常  作者: タフ
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11/14

古いビル

今回は少しだけ切ないお話です。

宜しくお願い致します。

 えーと、今日は何を話そうか。



 私が住んでいる街で起きたことでも話そうと思う。







 私が今住んでいる街は、飲み屋がたくさんある。

 大手のチェーン店や、個人経営のこじんまりとしたお店、若者が集まるお店に、競馬新聞を広げた年輩の方がたくさん集まるお店、バンドマンや役者が集まるお店など様々だ。まぁただの呑兵衛も多いわけではあるが。


 週に一度の休みの度に、知り合いが経営するお店を訪れる。

 この街に住み始めて早数年。行きつけと言えるようなお店も少しずつ増えてきた。

 そんなお店をゆっくりとはしごしながらのんびり酔っていく。

 それが私のいつもの休日だ。



 これまでに色々なお店に顔を出してきたが、それでもまだまだ行けてないお店はいくらでもある。

 そういったお店を開拓していくのも楽しみのひとつ。その日も新しいお店を探してのんびりと歩き回っていた。





 たくさんのお店が建ち並ぶこの街には、一つのビルがある。

 そのビルはこの辺りでは一番古いビルらしく、薄汚れていて何とも言えない怪しい雰囲気を醸し出している。

 そのビルの中には様々なお店が入っていて、私は前からそのビルの事が気になっていた。



 その日、私は休みなのを良いことに、昼間からやっている飲み屋を訪ね、ほろ酔いになっていた。

 そうしてふらふらと歩き、気づけばそのビルの前までやって来ていた。


 時刻は夕方の四時頃だったか。

 そこではまだ飲めるお店はオープンしておらず、シンと静まりかえっていた。

 地下一階から三階までにいくつかのお店が入っているそのビル。

 陽当たりが悪く、昼間でも薄暗いこの怪しいビルを少し知ってみたくなった。



 一階、二階、三階と、お店を見て回る。扉が閉まっていてよくは見えないが、どんな店が入っているか少し知れた気分になれた。

 そうして残りは地下だけとなった。そこには確かお店は無い。だけどせっかくだからと地下へ続く階段を降りていった。



 お店が無いためか、明かりも少なくさらに薄暗くなっていくことに少し緊張を高めながら、階段を降りていく。













 そこに、「ソレ」はいた







 恐らく、小学校低学年くらいだろうか。

 小さな身長と肩ぐらいまで伸ばした黒髪。ガリガリに痩せ細った身体にボロボロの服を着た少女が、そこに立っていた。



 少女は後ろを向いていて、顔は見えない。

 不気味に思いその場を去ろうとするも、何故か身体が動いてくれない。

 そのうち、少女がゆっくりと揺れだした。

 ゆらり、ゆらりと身体を揺すりながら、少しずつこちらに身体を向けてくる。


 もう少しで少女の顔が見えようかというその時に、私に猛烈な寒気が襲ってきた。

 全身に鳥肌がたち、脳が警戒音を鳴らす。

 アレを見てはいけないと、そう思った。



 叫び声をあげながら、動かない身体を無理矢理に動かし、ビルの外に逃げ出す。

 そのビルが見えなくなる通りまで走り、人通りが多くなったそこでようやく落ち着く事ができた。



 







 それからしばらく、もう何年かたってからだ。

 またいつもの飲み屋で飲んでいるときに、お店のマスターにあのビルの話をされた。

 あそこの噂、知ってるか、と。



 あそこの地下には少女の霊が出る

 その少女の目を見てはいけない

 少女の目を見た奴は、ずっとその少女が付いて回る

 何をしても駄目らしいぞ、そいつがおかしくなるまで、ずっと近くにいるらしい


 そう話していた。





 あそこのビルがいつからあるかは分からない。

 そしてそこであの少女に何があったかも、分からない。


 分からないが、あんな小さな少女が薄暗い地下で独りで居るかと思うと、何となくやるせない気持ちになった。

 きっと、寂しかったんだろうな、と。




 





 今、そのビルの取り壊しの話が出ているらしい。

 随分と古いビルだし、ビルのオーナーが売りに出しているらしいが、買い手がつかないとか。







 あの少女は、今もあそこに居るのだろうか。

 あの薄暗く、カビ臭い地下で、独りで立っているのだろうか。



 そんなことを、考えてしまう。













 それとも今は、誰かの傍に、居るのかもしれないが。












 信じられない人には信じられないでしょう。

 それでもこれが私の日常です。

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