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咲也・此花STEPS!! 4~もと・訳ありフリーターの俺が花いっぱいの国でにゃんこな王様になるまで~  作者: 日向 るきあ
STEP7.俺たちの結論

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STEP7-0 シミュレーション結果:病床のサクレアが、手記を書き上げていたならば



 いまのうちに書き残しておこうと思う。

 僕は、無念じゃないよ、と。



 最初にイメイに行ってから、僕はおかしかった。

 しょっちゅう、記憶がとんだ。


 みんなを拉致した容疑者として、大陸中部の都市国家の王の名が上がることがあった。

 そのたび、僕とるーちゃんは一緒に話を聞きに行ったのだけれど……

 気づくと僕はベッドに寝ていて、話は終わった、空振りだったとるーちゃんから聞かされることがほとんどだった。


 怖かった。

 僕は、壊れちゃったんだって思って。

 でも、それ以上に情けなかった

 みんなは、どこかで怖い思いをしてるかもしれないのに、と思うと。

 だから僕は、いつもるーちゃんと一緒にいった。

 今回は倒れないよう、今回は、と必死に踏ん張って。


 そんな僕たちを快く思わずに、戦いを仕掛けられることもあった。

 怖がる僕にるーちゃんは、神の子だって向き不向きがあるんだから、できることをがんばってくれればいいんだよ、て言ってくれた。

 だから僕は前線に出るよりは、怪我をした人たちの手当てを多くした。

 よわむしの僕に代わって戦ってくれるるーちゃんたちのために……

 そして、今はもめてるけどきっと分かり合えるはずの人たちのために、ぼくは全力でがんばった。



 そうこうしているうちに、大陸の国は、みんなまわってしまった。

 あとは、海の向こうの国しかない。

 海を越える大きな船を――もしも戦いになっても耐えられるような、頑丈なのを――出すには、もう少しお金をためなきゃいけなかった。

 もうしわけないけど、もう少しだけ手伝ってくれないかな? とるーちゃんに頼まれた。

 もともと、僕の家族のことなのに、自分のことみたいに頭を下げてくれるなんて!

 二つ返事で引き受けた。そのときの僕には、ただただそんな風にしか思えなくって。


 あちこちの田んぼや畑を回って、げんきになーれ、をやった。

 どこもどこも、すぐ元気になってくれた。

 けれど、繰り返すうち、徐々に効き目が落ちてきた。

 そして、記憶が飛ぶことも増えた。

 お医者様は、もう、あちこち出歩くのは控えめにして、次代を残すことを視野に入れたほうがいい、とおっしゃった。

 ああ、やっぱり僕はもともと猫だから、歳をとるのも早いのかな、そう思った。

 でも、逆に考えれば、それはいいことだとも。


 もしも、みんながもう、生きていないとしたら……

 そして、僕が神として、無限の寿命を持っていたとしたら……

 僕は、みんなのいない世界で、ずっと一人生きていかなきゃならないことになる。

 いま僕を支えてくれてるるーちゃんも、神じゃない。いずれ、死んでしまう。

 その後のことを考えると、僕はおそろしくてたまらなかった。



 僕は唯聖殿の離宮に住まいをもらった。

 そこには僕のお嫁さん候補として、るーちゃんの知り合いの人がたくさんきてくれた。

 みんな、とってもとてもすてきな、やさしいひとたちばかりだった。

 けれど、もともと猫の僕が、人類をお嫁さんに、なんて……

 いっしょに暮らしてるうちに、きっと誰かこれはって人がみつかるよ、てるーちゃんはいってくれた。

 結局、いちばん仲良くなったのは『上位神聖語』を教えてくれたゆきお姉ちゃんだけど、いわゆる、男と女の……というきもちは、やっぱりどうやっても沸いてこなかった。


 それでも、みんなは優しく面倒見てくれた。

 いつも突然倒れて、記憶が飛んじゃう僕を、いやな顔ひとつせずに看病してくれた。

 ゆきお姉ちゃんには、特に苦労をかけてしまった。

 僕は倒れるたび、教えてもらったことを忘れてしまう。

 どんなにがんばっても、一週間分くらいの記憶がなくなって、どうやっても戻ってこない。

 でも、ゆきお姉ちゃんはだいじょうぶよ、といって、何度でも教えてくれた。

 ほんとうに、感謝しても、しきれない。


 唯聖殿でのくらしは、ほんとに毎日楽しかった。

 男の子の友達もできた。

 下働きのカイル君はちょっと気弱だけどとっても頭がよくって、僕の勉強に付き合ってくれた。

 衛兵見習いのクロウ君は、僕でもできる体力トレーニングを考えてくれた。

 ときどきは、るーちゃんもおしごとの合間をぬってきてくれて。

 天気のいい日はみんなで、ピクニックをしたりした。


 このころ、僕は体を大事にしなきゃというので、王として執務をすることはもうなかった。

 あそんで、勉強して、トレーニングして、ご飯を食べて、寝る。

 まるで、子供にかえったみたいな暮らしをしていた。


 でも、夜になってみんな寝静まると、やっぱりいなくなったみんなのことを思い出してさびしくなった。

 おとうさんおかあさん、サクス、ルナ。シャサとイサ。ラフーラくんと瑞穂ちゃん。

 するとミーコママをはじめとした、天寿を全うした仲間たちのことも、どんどん、どんどん、とめどなく浮かんできて……

 さびしくて、あいたくて。月のきれいな夜はいつも泣いてしまった。


 でもそんなときは、るーちゃんがきてくれた。

 寒い日はあったかな、暑い日はひんやりしたコーディアルを持ってきてくれて、隣に座って僕をなでてくれた。

 そうするといつしか僕は、るーちゃんにもたれて寝てしまう。

 帝国宰相としてすごく忙しいはずなのに、僕をおもいやってくれるるーちゃんを僕は、心からたよりにしてた。

 るーちゃんが女の子だったら、僕もお嫁さんになってもらいたいって、思うのかな。

 そんな風にさえ思ってた。



 だから、すごくショックだった。

 るーちゃんとお菓子を食べた後、気づくと暗い部屋にいて。

 るーちゃんがぼくに、ひどいことをしようとしたこと。


 そのとき、部屋の壁がふっとんで、みんながあらわれて……

 のせられた馬車の中で、るーちゃんが悪者だったって聞かされたこと。


 るーちゃんのいってたことは、みんなうそだったって。

 ぼくはもう、るーちゃんににどとあえないんだって。


 ぼくは、るーちゃんのいない世界で永久に生きてかなきゃならないんだ。

 そう思ったら、涙が止まらなかった。


 みんなが転生してきてくれて、また会えたことはすっごく、うれしい。

 でも、そんなみんなもいずれまた、僕の前から消えていく。

 ぼくはひとりぼっちになってしまう。

 こんどは、なぐさめてくれたるーちゃんもいない。

 そう思うと、かなしくてかなしくて、なんでぼくは神の子なんだろうと、考えちゃいけないことも考えてしまった。



 だから、うれしかった。

 おとうさんが、僕のいのちはもってあと一年、と言ったときは。

 ほんとうだよ。

 ほんとうに、うれしかったんだよ。


 ぼくも死ねる。

 ひとりぼっちで、去っていった仲間を数える日々を、ずっとずっと繰り返すなんてことをしなくていい。

 来るべきときが来たら、みんなと同じところにいって、同じように眠れる。

 そしていつか、目覚めたらおはようって笑いあって、また眠るまでのひと時を、力いっぱい生きていくのだ。みんなで一緒に、力を合わせて。


 僕のためにと転生してくれたみんなより、ちょっと早いのは、確かに申し訳ないけど……

 確かに、それは、悲しいけど。

 いまは、それでも、ほっとしている。



 僕は、すこしだけ、疲れてしまったから……

 ちょっとだけ、休ませてください。

 どうか、僕の死を、そんなに悲しまないでね。

 みんなのせいじゃない。僕が弱いからなんだ。

 ほんとうにごめんね。

 きっと、ちゃんと、戻ってくるから。

 そしたらまたみんなで、ピクニックしようね。

 いっしょにお弁当を作って、スノーフレークスのわたげがいっぱいの春の日に、あの丘に行って……

 おにごっこして、お弁当たべて、お茶もおひるねもぜんぶぜんぶの、フルコースで。



 やくそくします。

 うまれかわってきたら、もっともっとつよくなって、きっとみんなをしあわせにします。

 みんなのこと、ずっとずっと、だいすきだから。

 こんどこそ、みんなみんなで、しあわせになろうね。




 ありったけの愛をこめて ヴァル・サクレア=ユキマイ

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