第4話
そんなことを考えていると、弓兵のネーチャンが俺の肩を叩きながら、慰めの言葉を伝える。
「今の状態じゃ仕方ないかもネー 護衛を雇うだけで、商家が潰れるって時代だから」
「うむ。もしかすると我らが勇者一団と見て、依頼料を無くして見殺しにしようと考えたのじゃろう」
「なんともお労しい……」
弓兵のネーチャンと戦士のオッチャンには同意するけど、アナちゃん、君は泣き過ぎだよ? 旅人だから割り切るってことを覚えなきゃ。つーかこいつら勇者一団かよ。俺が会いたかったのは英雄の一団だよ。街の宿屋のとっちゃんが似てるっていう英雄様を拝みたいってだけだけど。それにしてもこの勇者様は正義感の塊って感じだな。この勇者様。絶対に俺とは馬が合わなさそう。出逢えば死合をし始めてるようなそんな運命的な繋がりを感じる。
そんな勇者からありえない一言が飛び出す。
「もう一度きた道を戻って、あの御者に話を聞くのがいいな」
おいおい、冗談だろ? マジモンの正義の塊じゃねぇか。世の中しっかり見てから勇者名乗れよ。このメンツからしたら、この世界に来たばっかりなのかもな。禁術召喚ってとこか。術者も相当な手練……王国も本気で魔王討伐に乗り出した訳ね。
「はい、その方が良いかと。このままではこの……」
アナちゃんが俺を見て、言葉が詰まった。旅人さんか傭兵さんって言えばいいものを…… なんていうか僧侶だけど、育ちの良さを感じるな。マジで上流貴族が修道院へ出家したのかね。とりあえず助け舟でも出しますか。
「アトラスだ、僧侶のアナさん。好きに呼んでくれ」
アナちゃんの顔が満面の笑みに変わるのを見て、純粋に俺の心が汚いと思った。この子、純情だよなぁ。そーすると、弓英のネーチャンが耳打ちしてきた。
「うちの僧侶のアナ、可愛いでショ? 教会から連れ出した時、牧師さんが超泣いてたのヨ?」
勇者の一団に娘を渡すような感じなんだろうか。まあわからなくもないが、というか勇者の影が薄くなり過ぎなんだがと思って、目線を勇者に向けると、憤慨している勇者を戦士が宥めていた。なんだこの構図。
「アトラスさんはこのまま、街に向かわれますよね?」
アナちゃんから質問を投げられたが、俺は首を横に振り、伝える。
「いいや、このまま街には行かずに、また放浪するさ。浪人だからね」
このまま、街に行けば確実にしょっ引かれる。血まみれかつ御者を襲った張本人ってことになってるし。
僧侶のアナちゃんはしょんぼりとする。なんですか、この可愛い子は……それと裏腹に戦士と弓兵は意味深な笑みを浮かべて、こちらを見ている。いや、なんなんですか、本当に。
「そうであれば、我ら勇者の一団に加わりませんか? あなたが魔獣の群れから単身で生存していることが既に能力があることを証明していますし」
勇者が俺に向かって、右手を差し出してくる。なるほど、勧誘というわけか。能力も割れていることもあるから、力になってくれるはずと見ていると考えられる。しっかしなぁ、絶対に馬が合わないというか相容れない気がするんだよなぁ……
俺はここで深く考えずに、魔王討伐に参加した。きっと俺が求めている極致にいる存在は同行することで見つけられると思ったから。
魔王討伐までは駆け足であり、魔王討伐はただのイベントです。