婚約者の条件が厳しすぎる件
ルクレティア王国の貴族子女たちは、王都にある王立学園で、貴族としての常識と教育、礼儀作法を学ぶ。
そして、ただの学舎だけではなく、婚約者を探す社交の場でもあった。
ヒルダも7歳になる頃には父のクロードと共に、王都の屋敷に入り、学園へ入学した。
母のカミラはヒルダを出産後、床に臥すことが多く、領地に残って静かに過ごすことにした。
(38歳の高齢出産か……。お母様、頑丈に産んでくれてありがとうございます……。)
ヒルダは母に改めて感謝した。
***
ヒルダは学園で、同級生たちと切磋琢磨し合いながら勉学に励み、年頃の女の子らしく過ごした。
ヒルダが高等部に進学する頃。
周りの友人たちは婚約ラッシュに沸いていたが、ヒルダはいまだ婚約者が居なかった。
「ヒルダ………少し条件を下げてみたら?」
「私はハワード伯爵家の跡取りよ。婿養子になる人は逞しい人じゃないと……。」
「だからって、熊を素手で倒せるか?は、無理があるわよ。」
「お父様のハワード伯爵と同じ人が、そんな簡単に見つかるわけないでしょ。」
「じゃあ、猟銃。」
「「…………。」」
「毎年、冬眠前になると、熊害に悩まされるもの。モヤシじゃダメよ。」
ヒルダは父譲りの金髪と凹凸のハッキリしたクールな顔立ち、母譲りのアイスブルーの瞳に雪の如く色白の美少女なので、声を掛けてくる男子生徒は星の数ほどいる。
しかし、こんな調子なので、すぐに男子生徒たちは逃げてしまう………。
更に、ヒルダの父であるクロードが軍人ばりの肉体を誇るのも要因だろう。(つまり、圧がある。)
「………王都の叔母さまに、騎士や軍の方を紹介してもらおうかしら?」
友人たちは、ヒルダの説得を諦めた。
廊下を歩いていると、前方に小さな人集りが出来ており、黄色い悲鳴が上がっている。
「……なにあれ?」
「王太子殿下と、ご婚約者のレティシア嬢の御成かしら?」
ヒルダたちは人集りの方へと足を進める。
渡り廊下を歩く、宗教画の天使と女神がそのまま出てきたようなカップル。
ルクレティア王国王太子のエドワード・エーデルシュタインとその婚約者である、レティシア・ローゼンベルク公爵令嬢が並んで歩いていた。
「エドワード殿下……素敵……。」
「お隣を歩かれるレティシア嬢も、麗しい……。」
「まるで、絵画を見ているようだわぁ。」
ヒルダたちも思わず見入ってしまう。
2人は、それだけの美貌なのだ。
「レティシア嬢、本日もお美しいわぁ。」
「本当ね……。正に、未来の王妃陛下に相応しい方だわ。」
ヒルダは別のことを考えていた。
(宝塚のスターの御成だ……。)
前世の母の趣味と、地元があの歌劇団のお膝元という事もあいまって、ヒルダは前世ではヅカオタでもあった。
(レティシア様………男役、絶対似合うわ。
オスカル様やってほしいなぁ……。それともトートかなぁ〜?レッド・バトラーも似合いそう……。)
ヒルダの脳内は、完全にオタクの妄想で埋め尽くされていた。




