↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/19

伯爵令嬢、推しの供給過多で限界を迎える

しばらくして、話題は衣装や舞踏会のことへと移った。


レティシアが、先日の舞踏会で着用したドレスについて話している。


「そういえば、今度の王宮舞踏会では、少し趣向を変えてみようかと思っておりますの。」


「まあ、どのようにですか?」


ヒルダが尋ねた。


「それは、まだ秘密ですわ。」


レティシアは楽しそうに微笑む。

その横顔を見つめていたヒルダは、ふと、思った。


(……レティシア様、男装めっちゃ似合いそう。)


凛とした顔立ちに、すらりとした立ち姿。

華奢なだけではない、芯の強さを感じさせる佇まい。

軍服を着せれば、きっと恐ろしいほど美しいだろう。


(あかん。金髪の長髪を後ろで束ねて、白い軍服に身を包んだレティシア様とか……絶対に似合うやん。剣を片手に馬に跨がって、颯爽と現れる姿とか……。)


ヒルダの脳内で、壮大な音楽が流れ始めた。


(これはもう、オスカル様やん……!)


「……ヒルダ嬢?」


「…………はっ!」


気が付けば、レティシアが不思議そうにこちらを見ていた。


「何か、私の顔についておりますか?」


「あっ、いえ! その……。」


ヒルダは慌てて扇子で口を押さえたのだが…………


時すでに遅し。


「レティシア様……男装がとても、お似合いになりそうと思いまして………。」


「…………。」


レティシアの目が、ぱちりと見開かれた。


「……私の趣味が男装だということ、気付きましたの?」


「ファッ!?」


ヒルダの声が裏返った。


「えっ!?………えっ!?趣味!?本当ですか!?」


「ええ。ごくたまにですけれど。」


レティシアは、少し照れたように頬に手を添えた。


「殿下とお互いの衣装を交換して、舞踏会に出ているのですわ。」


「まっ!?」


ヒルダは固まった。


(待って待って待って!?何その設定!?公式!?公式設定なん!?)


エドワードが、得意げに胸を張った。


「レティシアの男装は、この世のものとは思えないほど美しいんだ。」


「まぁ、殿下ったら……。」


レティシアが、恥ずかしそうに微笑む。


「ですが、殿下のご令嬢姿も、まるで絵画のようですわ。」


「…………は?」


ヒルダの口から、素の声が漏れた。


「ええ。私も最初に見たときは驚きました。

金髪の巻き髪に、繊細なレースのドレス。化粧まで施すと、どこからどう見てもご令嬢なのです。」


「そうでしょう?レティシアに選んでもらったドレスなんだ。」


「殿下、あまり詳しくお話しになると恥ずかしいですわ。」


「ははは!」


王太子と公爵令嬢は、実に仲睦まじく笑い合っていた。


ヒルダは、二人を交互に見た後、静かに目を閉じた。

(…………。ベルサイユのばら、開演。)


脳内に、大階段が出現した。


華やかな照明に、舞い踊る貴族たち。


白い軍服に身を包んだオスカルに扮するレティシア。


そして、豪華なドレスを纏い、フランス人形のように佇むマリー・アントワネットに扮するエドワード。


(待って。待って。私、この世界で何を見せられてるん?)


隣では、ジョンが首を傾げている。


「ヒルダ嬢? どうかしましたか?」


「……いえ。」


ヒルダはゆっくりと目を開いた。


「少々、感動しておりました。」


「感動?」


「はい。素晴らしい文化交流だと思います。」


「文化交流……?」


ジョンの顔に、ますます疑問が浮かぶ。


その横で、マーガレットが小さくため息をついた。


「兄上とレティシア様は、昔からあの調子ですの。」


「そうなのですか……。」


「ええ。幼い頃から、互いに衣装を交換しては周囲を驚かせていましたわ。」


「…………。」


ヒルダは、そっとカップを手に取った。


(女神様。あなた、私を恋愛小説の世界に転生させたんですよね?

なんか、世界が思ってたんと違う方向へ行ってるんですけど。)


その時、レティシアがにっこりと微笑んだ。


「ヒルダ嬢。よろしければ、今度、私の男装姿をご覧になりますか?」


「…………えっ。」


「殿下のご令嬢姿も、ぜひお見せしたいですわ。」


エドワードが嬉しそうに頷く。


「それはいい考えだ!」


(あかん。)


ヒルダは心の中で叫んだ。


(この世界、私の前世のオタク趣味に適合しすぎやろぉぉぉぉ!!)


隣でジョンが、静かにヒルダの肩へ手を置いた。


「ヒルダ嬢。落ち着いてください。」


「ジョン様……!」


「帰ったら、鍛錬場をご案内します。新しいトレーニング器具も導入したんです。」


「…………!」


ヒルダは、ぱっと顔を輝かせた。


「まあ!ぜひ!」


ジョンも満足そうに微笑む。


エドワードとレティシアは、そんな二人を微笑ましく見守った。


マーガレットは、兄を見て、ヒルダを見て、ジョンを見て……………



最後に、深々とため息をついた。



「……我が国の未来は、明るいのでしょうか。」


誰も、答えられなかった。


ヒルダの脳内では、まだ壮大なファンファーレが鳴り響いていた。


(女神様!!私をこの世界に転生させてくれて、ありがとうございます!!推しと推しのベルばらを開演させてくれて!!)


そして、女神に初めて感謝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。