十六回 黎陽会戦不分決 一旨詔書穏帝威 五段
洛陽の初夏は蒸し暑い。黄河から吹き上げる湿った風が、城壁にぶつかって渦を巻き、街路に埃を巻き上げる。高順は王府の執務室で、董昭が運び込んだ書簡の山と格闘していた。
「高将軍、冀州の甄家から書状が届いております」
董昭が一通の書簡を差し出した。甄家は冀州きっての豪族であり、袁紹の時代から河北の経済を支えてきた商家である。甄氏の娘が曹丕に嫁いだことで、甄家は曹操との結びつきを強めていた。
高順は書状を開き、目を通す。
「甄家が学堂設立に協力したいと申し出ている。冀州の鄴に土地と建物を提供し、教師の俸禄も負担するという」
「それはありがたい話ですな」
「ああ。だが甄家は曹操の姻族だ。なぜ俺に話を持ってくる」
「おそらく、甄家としても曹操だけに頼るのは危ういと見ているのでしょう。高将軍との繋がりも持っておきたい。商家らしい算段です」
高順は小さく笑った。
「賢明だ。返書を書いておいてくれ。甄家の好意は受け取る。ただし、学堂の運営は朝廷が行う。商家が口を出す余地はないと、やんわり伝えろ」
「承知いたしました」
董昭が退出すると、入れ替わりに董媛が入ってきた。彼女は手に小さな包みを持っている。
「夫君、遼東から荷が届きました。昭姫からです」
「昭姫からか」
高順は包みを受け取り、封を解いた。中には手紙と、小さな布袋が入っている。布袋の中身は乾燥させた薬草だった。遼東の山で採れるもので、夏の暑さに効くとされる。
手紙には蔡琰の端正な筆跡が並んでいる。
「薊県はすでに夏の暑さに包まれております。洛陽の暑さはいかほどかと案じ、暑気あたりに効く薬草をお送りします。遼東の学堂では、新たに扶余からの留学生三名を受け入れました。言葉も習慣も違う彼らが、少しずつ漢字を覚え、論語を諳んじる姿を見ていると、これこそが夫君の夢見た世の姿なのだと感じます。私は変わりなく過ごしております。どうかご自愛くださいますよう。追伸、匈奴の方から使者が参りました。呂布どのの娘御が陛下の後宮に入られることになった由、匈奴と漢の新たな絆としてお慶び申し上げます」
高順は手紙を読み終えると、そっと胸に押し当てた。
「昭姫はいつも俺の体を案じてくれる。自分のことは何も書かずにな。それにしても、呂布の娘が陛下の後宮にとは」
「呂布さまが単于となられてから、匈奴は漢との融和を望んでおります。娘御を後宮に差し出すことは、その証なのでしょう。匈奴が敵ではなく味方になるなら、北の国境はさらに安定します」
「ああ。かつての飛将軍が、今は草原の王として漢と結ぼうとしている。歴史とは不思議なものだ」
高順は窓の外を見つめた。呂布が漢に敵対する可能性は、これでほぼ消えたと言ってよい。かつての主君であり、一時期は敵として戦った男が、今は姻戚関係を通じて朝廷と結びつこうとしている。烏桓はすでに滅び、鮮卑や高句麗は遼東の統治下で平穏を保っている。北の脅威が大きく減じた今、高順が注力すべきは、戦ではなく政だった。
「夫君、薬草で茶を煎れますね」
董媛が手早く準備を始める。高順はその横顔を見つめながら、これからの政の在り方に思いを巡らせていた。
それから間もなく、朝廷に新たな動きがあった。献帝が自ら発議し、洛陽の太学を拡充するというのである。蔡邕が中心となって進めている学堂設立の動きに呼応し、天子自らが学問の振興に乗り出した形だった。
正殿に集まった重臣たちを前に、献帝は若々しい声で語った。
「朕はこれまで、学問の大切さを知りながら、何もできずにいた。しかし孝父が遼東で成し遂げたことを聞き、蔡邕が洛陽の太学で育てた若者たちを見て、朕もようやく決心がついた。洛陽の太学を拡充し、より多くの若者が学べる場を作る。そしてゆくゆくは、各州の学堂と太学をつなぎ、身分を問わず才ある者が学べる仕組みを整えたい」
献帝の言葉に、広間からは大きな拍手が沸き起こった。
「陛下、太学の拡充には相応の費用がかかります。財源はどのようにお考えですか」
楊彪が現実的な問いを発すると、献帝は即座に答えた。
「宮中の費用を削る。朕の衣食をはじめ、宮廷の贅沢をすべて削減し、その分を太学に回す。朕は質素に暮らしても構わぬ。大事なのは、次代を担う若者たちが学べることだ」
「陛下、それは」
「反対は許さぬ。朕はこれまで何もしてこなかった。せめてこれくらいのことはさせてほしい」
楊彪は深く一礼し、それ以上は何も言わなかった。曹操は無言で献帝を見つめている。その目には驚きと、かすかな警戒が混じっていた。天子がここまで主体的に動くとは、曹操も予想していなかったのだろう。
高順は静かに進み出た。
「陛下、私からも提案がございます。洛陽の太学と各州の学堂を結ぶだけでなく、遼東の学堂とも連携させてはどうでしょうか。遼東では異民族の若者も学んでおります。彼らが洛陽の太学で学ぶことができれば、漢と異民族の架け橋となるでしょう。匈奴からも留学生を受け入れることで、呂布どのとの絆もさらに深まります」
「それは良い考えだ。孝父、そちの遼東からも学生を受け入れよう。鮮卑も、高句麗も、扶余も、匈奴も、みな朕の太学で学べばよい。かつて孔子は『教え有りて類無し』と言った。学問に民族の壁はない。朕はそう信じる」
献帝の言葉に、高順は深く一礼した。
太学拡充の議論が一段落したところで、曹操が口を開いた。
「陛下、太学の拡充は結構なことです。しかし、現実の問題として、いくつか懸念がございます」
広間の空気が引き締まった。曹操は淡々と続ける。
「まず、袁尚の動きです。斉侯となったものの、鄴ではいまだに袁譚との確執が続いております。袁譚は青州に兵を集めているとの報せもあり、袁家の内紛はまだ終わっておりませぬ。これが周辺の州に波及すれば、民が苦しむことになります」
献帝の顔が曇った。
「袁家の争いは、朕の裁定で袁尚を斉侯と定めたことで決着したはず。それをいまだに袁譚が納得せぬというのか」
「袁譚は長子としての矜持があります。弟に爵位を奪われたという思いは、簡単には消えぬでしょう。武力衝突に発展する前に、何らかの手を打つ必要がございます」
「丞相はどう考える」
「袁譚を青州に封じ、袁尚とは別の爵位を与えてはどうでしょうか。斉侯の位は袁尚に認めつつ、袁譚にも別の侯位を与える。袁家の内紛をこれ以上長引かせるよりは、両者を立てる方が得策かと」
高順は曹操の提案に静かに耳を傾けていた。曹操の真意はおそらく、袁家の勢力を分割して弱体化させることにある。袁譚と袁尚が別々の封地を持てば、袁家は二つに割れ、互いに牽制し合う。それは曹操にとって望ましい展開だった。
「孝父、そちはどう思う」
献帝が高順に問いかけた。
「丞相の案は現実的です。袁家の内紛が長引けば、最も苦しむのは民です。ただし、袁譚と袁尚を両方立てるならば、朝廷が定期的に両者を洛陽に召喚し、互いに天子の臣であることを自覚させる仕組みが必要でしょう。さもなくば、いずれ再び争いが起きます」
「ふむ。では袁譚をどう封じるかは、改めて協議しよう。それと、もう一つ報告がある」
献帝は声を少し明るくした。
「匈奴の単于・呂布から使者が届いた。娘の呂姫を朕の後宮に入れたいとの申し出だ。朕はこれを受け入れるつもりでいる。匈奴が漢と姻戚関係を結ぶことは、北方の安定に資する。孝父、呂布はそちの旧主であろう。この縁談についてどう思う」
「慶ばしいことです。呂布どのもまた、戦ではなく政の道を選ばれたということ。匈奴と漢が姻戚となれば、北の国境はさらに磐石となります」
「異論はないか」
曹操が微かに笑った。
「異論などあろうはずがございません。匈奴が漢に臣従する形となる。これ以上の良策はないでしょう。ただ、呂布どのにはせひ一度、洛陽に来ていただきたいものですな。旧交を温めるという意味でも」
「孝父はどうだ。旧主に会いたいか」
「そうですね。酒を酌み交わしながら、昔話に花を咲かせるのも一興かもしれません」
献帝は満足げに頷いた。
「では、呂布の娘の入内は朕が受ける。これで匈奴は漢の親族となる。北の憂いは、これでしばらくはあるまい」
高順は深く一礼した。烏桓は滅び、鮮卑と高句麗は遼東の統治下で平穏を保ち、匈奴とは姻戚関係を結ぶ。かつてはいくつもの異民族に囲まれて脅かされていた北辺が、今や安定しつつある。それは高順が十余年かけて築き上げてきた成果だった。
軍議が終わり、高順が王府に戻ると、張五が門の前で待っていた。
「高将軍、お客様です」
「客? 誰だ」
「竇輔という若者です。元禁軍の」
高順は足を止めた。竇輔。郿城の戦いで武功を挙げ、段煨の部隊を経て曹操の幕下に入ったはずの男である。なぜ曹操の下を離れてここに来たのか。
「通してくれ」
高順が執務室に入ると、竇輔はすでにそこに立っていた。以前より幾分か精悍な面構えになり、身につける鎧も曹操軍のものだった。
「高将軍、お久しぶりでございます」
「竇輔、曹操どのの幕下に入ったと聞いていたが」
「はい。曹操どのには大変目をかけていただきました。ですが、私は近々、曹操どのの下を離れることになりました」
「離れる? どこへ行く」
「西涼です」
高順は目を細めた。西涼。馬騰と韓遂が睨み合い、羌や氐が割拠する辺境の地。曹操の幕下から西涼へ。その進路の裏には何があるのか。
「なぜ西涼だ」
「馬騰どのが西涼に学堂を建てたいとおっしゃっていることは、高将軍もご存知のはず。私は微力ながら、そのお手伝いをしたいと考えました。曹操どのにはその旨を申し上げ、許可をいただいております」
「学堂の手伝い、か」
高順は竇輔の目を見つめた。その言葉はおそらく嘘ではない。だが、それだけが理由ではないことも確かだった。同じ転生者として、竇輔の胸の内には何か別の計算がある。高順の直感はそう告げていた。
「竇輔、西涼で何を成すつもりだ」
「私はただ、高将軍が遼東で成し遂げたように、辺境の地で新しい秩序を作りたいだけです」
「俺の真似か」
「いいえ。高将軍とは違うやり方で。私は元の世界で、破壊することしか知りませんでした。その技術でしか生きられなかった。しかし、この時代に生まれ落ちて、初めて思ったのです。自分にも何かを築けるかもしれないと」
竇輔の声は滑らかで、言葉はよく整っていた。あまりに整いすぎている。まるで何度も練習した台詞のように。高順はその違和感を胸の奥にしまい込み、静かに頷いた。
「そうか。ならば竇輔、最後に約束しろ」
「はい」
「民を苦しめるな。それが守れるなら、お前がどこで何をしようと、俺は干渉しない。だが、もし民を苦しめるなら、たとえ西涼の果てであろうと、俺はお前を討つ」
「承知しております。高将軍、私はあなたを尊敬しております。あなたがこの時代に蒔いた種が、どれほどの実を結ぶか、遠く西涼から見届けたいと思います」
竇輔は深く一礼し、王府を後にした。その背中には一片の迷いも感じられない。堂々とした足取りで、彼は西涼への道を歩み始めた。
高順は窓辺に立ち、遠ざかる竇輔の背中を見つめていた。同じ転生者。元特殊部隊の軍人。その男が西涼で何を企んでいるのか、正確なところはわからない。わからないが、胸の奥で何かが警鐘を鳴らしているのも確かだった。
董媛が静かに近づいてきた。
「夫君、竇輔は」
「西涼へ行くそうだ。馬騰どのの学堂設立を手伝うと」
「そうですか。彼もまた、夫君とは違う道を選んだのですね」
「ああ。違う道だ。違う道だが、その先に何があるのか、俺にはまだ見えぬ」
高順は窓の外を見つめた。洛陽の空は、どこまでも青く澄み渡っている。夏至が近い。しかしその青空の向こう、遠く西涼の地で、竇輔が何を蒔こうとしているのか。彼はまだ知らなかった。
六月の末、洛陽の太学拡充が正式に決まった。献帝の宮中費用削減の宣言は朝廷に衝撃を与えたが、誰も反対することはできなかった。天子が自ら倹約を宣言したのである。臣下たちもまた、それぞれに寄付や協力を申し出た。
曹操は私財を投じて太学の校舎を増築すると言い、高順は遼東から教師と書物を送ることを約束した。蔡邕は老体に鞭打って太学の改革案をまとめ、楊彪は各州の学堂との連絡網を整備した。かつては互いに争っていた者たちが、同じ目標に向かって力を合わせている。その光景を目の当たりにしながら、高順はこの時代に生まれ落ちた意味を改めて考えていた。
ある日の午後、高順は洛陽の太学を訪れた。かつて董卓に焼かれた校舎は、今では見事に再建され、若者たちの読経の声が響いている。庭では蔡邕が若い学生たちに囲まれて、詩経の講義をしていた。
蔡邕は高順の姿を認めると、講義を中断して歩み寄ってきた。
「孝父、珍しいな。そなたが太学に来るとは」
「岳父の講義を一度聞いてみたいと思いまして」
「ははは、老いぼれの講義など面白くもなかろう。それよりも、そなたのおかげで太学は活気づいた。陛下があれほど乗り気になられたのは、そなたが遼東で成し遂げたことが大きい」
「私は何も。陛下ご自身が決断されたことです」
「だが、その決断を引き出したのはそなたのこれまでの働きだ。洛陽を蘇らせたのも、遼東で学堂を広めたのも、そなたがいなければ成し得なかった。わしはそなたを婿に持ったことを、心から誇りに思う」
蔡邕の言葉に、高順は深く一礼した。この老人の前では、自分はいつまでも若造のままだった。
太学を辞して王府に戻る道すがら、高順は洛陽の市を歩いた。かつて焼け野原だったこの街は、今では活気に満ちている。鮮卑の毛皮を商う者、江南の茶を売る者、西域の香料を扱う者。さまざまな民族の商人たちが入り混じり、さまざまな言語が飛び交っている。
高順はふと足を止め、茶を売る店を覗いた。孫堅からもらった地図にあった産地の茶が、すでに洛陽の市場に並んでいる。江南から黄河を遡り、洛陽まで運ばれてきたのだろう。店の主人に声をかけると、彼は嬉しそうに答えた。
「この茶は江南の新しい産地のものでしてね。味が濃くて、しかも安い。洛陽でも人気ですよ。呉侯さまが直々に交易を始められたとか」
高順は小さく笑った。孫堅は約束を守った。江南の茶を交易品として育て、洛陽の市場にまで届けている。それは小さな一歩に過ぎない。しかし交易が生まれれば、人と人が出会い、言葉を交わし、互いを知る。その積み重ねが、いつか民族の壁を溶かしていく。高順はそう信じていた。
店を出ると、夕暮れの街に灯りがともり始めていた。洛陽の夏の夜は短い。だがその短い夜の中で、無数の人々がそれぞれの生を営んでいる。高順はその光景を胸に刻みながら、王府への道を歩いた。
数日後、洛陽の王府に董昭が新たな書簡の束を抱えて訪れた。
「高将軍、曹操どのからお預かりした書状です。匈奴の呂布どのの娘御、呂姫さまの入内に関する儀式の打ち合わせについてです」
「曹操どのが直接か」
「はい。陛下の後宮に入られる以上、儀式は丞相が差配されるのが当然とはいえ、曹操どのはなかなか熱心です。おそらくはこれも、匈奴との関係を盤石にするための布石でしょう」
高順は書状に目を通しながら、曹操の周到さに改めて舌を巻いた。呂布の娘の入内を単なる婚姻ではなく、漢と匈奴の外交儀礼として最大限に活用しようとしている。そして高順に対しても、旧主と関わりのある立場として事前に情報を共有する抜け目のなさ。友でありながら、決して気を抜けない相手だった。
「公仁、入内の儀式に私は参列すべきだろうか」
「もちろんでございます。呂将軍の旧臣として、将軍が参列されれば、匈奴側も漢との融和に安心するでしょう。また、曹丞相もそれを期待されてこの書状を」
「わかった。参列の旨、返書を出しておいてくれ」
「承知いたしました」
董昭が退出すると、董媛が新しい茶を運んできた。
「あの者の娘御が洛陽に来られるのですね」
「ああ。かつての主君が、今は漢の姻族となった。悪い気分ではない」
「あの者は、夫君にとってどのような方でしたか」
高順はしばらく考えてから答えた。
「強かった。ただひたすらに強かった。しかし、強さだけでは生き残れぬことを、あの男は身をもって教えてくれた。俺はあの男から多くを学んだ。戦の作法も、将としての心得も。そして何より、強さに頼るだけでは必ず滅びるということも」
「夫君はそれを糧に、今があるのですね」
「そうだ。だから俺は、呂将軍が草原の王として成功していることを素直に喜べる。かつての飛将軍が、今は単于として草原を治め、娘を皇帝に嫁がせるまでになった。それは奴が学び、成長した証だ」
高順は窓の外を見つめた。洛陽の夏空は高く、雲一つない。北の草原では、呂布が単于として政を執っている。かつて刃を交えた主従が、今は別々の場所で同じ時代を生きている。それもまた、この乱世が生んだ不思議な縁だった。
翌日、高順は董昭を伴って城外の一角にある新兵の訓練場を訪れた。遼東から到着した三千の兵が、ここで董媛の指導のもと、日々訓練を重ねている。飛熊衛の母体となる部隊である。
訓練場では、董媛が自ら剣を振るい、兵たちに実戦的な動きを教えていた。彼女の指導は厳しく、しかし的確だった。遼東の新兵たちは、最初こそ董媛の姿に戸惑ったものの、今では彼女を心から尊敬している。
「媛、訓練の様子はどうだ」
「はい。皆、熱心に学んでいます。飛熊軍の生き残りはまだ労役に服しておりますが、彼らが加わる日のために、この者たちを精鋭に育て上げる所存です」
「頼もしい限りだ。ところで媛、呂将軍の娘が洛陽に来ることになったのは知っているな」
「はい。先ほど夫君から伺いました。あの者も今は漢の姻族。かつての敵が味方になる。これもまた、夫君の蒔いた種が実を結んだ証しですね」
董媛はそう言って微笑んだ。彼女は董卓の娘として生まれながら、今は高順の妻として、飛熊衛の創設を目指している。董卓の遺志を正しく継ぐことと、新しい時代を築くこと。その両方を、董媛は迷いなく追い求めていた。
高順はしばらく訓練を見守ってから、静かに訓練場を後にした。
洛陽の夏は、これからが本番だった。




