第二話 絶望と希望と
死亡事故により転生をした元レイサーであるアルフィーシュミット(久保涼太)は記憶を消されているはずが、五歳に初めて馬車に乗った時に突如と記憶を取り戻す。
前世からの夢が潰えたと思い大粒の涙を流しながらも、目的地で魔道旋盤を見つけたことで新たな希望を見出し、自分で車両を作ることに決める
**冷やし嵌め**:エンジンを組み立てる際に隙間が生まれないようギリギリまで大きく作ったものをある一定の狭さのところに入れるために冷やすことではめ込む技術(エンジン制作に主に使われる)
**金属組成ごとの線膨張係数の予測値**:冷まし嵌めをする際に冷やした後の金属の膨張どを予測しているそうすることで、固着したり、空気の圧縮をしやすくするようにしている
あれから六年後少年は十二歳となった
「前回計算した熱膨張の式から今回は冷やし嵌めが固着せず成功するはずだったんだけど…」
そう話しながら少年は中世ヨーロッパの路地のような道の真ん中を下を向きながら紙を使い
計算しながら歩いていた。
少年の暮らす街は王の暮らす城のある大都会であるが小国のため噂が広がりやすく、
変な少年として有名であった。
「やだあの子シュミット商会の長男じゃない」
「昔は勉強ができて期待されていたみたいだけどここ最近打って変わって別のことをしているみたいよ」
「やーねあれが御曹司なんて大旦那様も大変ね」
そんな主婦たちの噂話も少年は気にせず路地を歩き続けていた。
そんな少年を見ながらため息をつき呆れた顔で近づく少女がいた。
「ちょっとあんたこんなところで何をしてるの危ないじゃないの」
その甲高い声を聞いて少年は顔をあげ相手を見た瞬間睨むようにみた。
そしてもう一度下を向き計算を始めてしまった。
「何よその目もう十二になるのに将来のこともろくすっぽ考えず、毎日役に立つかもわからない研究開発にうつつを抜かすバカに何を言おうが勝手でしょ」
そうゆう少女は少年の頭をグシャリと掴み思いっきり少年の目が少女の目を見るように顔をあげさせた。
その瞬間計算途中だった少年は邪魔されたことに憤慨し、その少女をまた睨んだ。
「何してくれるんだ姉さん!姉さんのせいでせっかく計算していた金属組成ごとの線膨張係数の予測値を
もう一度計算しなくちゃじゃないか」
その少女は少年の姉であったが性格は月と鼈少年が一つのことに没頭し続けるのに対し、少女は常に父や周りの話を妄信し、言われた通りに生活を送るいわゆる優等生であった。
「まぁいいわとりあえず家に帰ってきなさいお父様が読んでるわ」
その言葉を聞き少年は青ざめた顔をしながら逃げようとした。
しかしながら姉は少年の逃走を予測していたかのように、すぐに反応し首根っこを掴み引っ張るように連れ帰った。
家に着き、ドアを開けると目の前にはメイドが立っており姉は少年を捨てるように床に投げつけた。
メイドはそのまま少年を執務室へと連れて行きドアの前に立たせた。
「旦那様アルフィー様をお連れいたしました」
その言葉の後父が低くそして覇気の混じった声を響かせた
「入れ」
その一言で少年は怖気付き、扉の前で立ち止まってしまった。
「早く入らんか馬鹿者」
父はいつまで立っても入ってこない少年にイラつき、自ら扉を開け少年を中に入れた。
「父上何ようでしょうか」
その言葉を聞いた父は眉間に皺を寄せ、憤慨した顔をしていた。
「何ようかではないお前はいつになったら将来を考えるようになるのだ。訳のわからん数字と戦いながら、
研究開発を続けているのだ。いい加減後継として勉学と勤労に励み、
私を早く隠居させて欲しいのだがな」
そう言いながら睨みつける父に少年は震えながらも進言をした
「父上お言葉ですが私が開発しているものはこの世界をより便利にするためのものであります。
これさえあれば世界中のものが助かると同時にこのシュミット商会に莫大な利益をもたらすものです。
決して訳のわからないものではありません。」
その言葉を聞いた父はさらに皺をふかくし頭を抱えていた。
「そうかならばいつになったらその道具とやらは完成するんだ六年前から勉強は続けているようだが、
三年前に研究開発を始めてからは勉強する時間も減った上に、三年も立ったのに進捗はゼロではないか
これではいつ利益が出るかわかったものではない。損益だけを出し続けるものに、
資金を投じるわけにもいかないのだ。」
その言葉と同時に父は決断したかのように立ち上がり少年に向かって歩いた
「もううんざりだ残り一年で小さくても良いから試作品を開発し、私を納得させてみろ。もしできなければ
お前には研究開発をやめ、勉学と勤労に励み、すぐにでも後を継いでもらう」
少年はまだ納得をしておらず悔しそうな顔をしていたが、これ以上父との話をし続ければ一年の期限もなくなり、研究開発をすぐにでも断念しろと言いかねないと考え了承した。
「ならばアルフィーお前にもうようはない早いとこ出てくれまだ仕事があるのでな」
その言葉と同時に父の近くにいた執事が少年を外へと連れ出した。
少年はその後「ふー」と安心したそぶりを見せたが、その瞬間後ろから姉が声をかけてきた。
「外から聞いてたけどあんたすごい怒られてたわね。年貢の納め時ってやつなんじゃないの」
その煽りとも捉えられる言葉を聞いた少年は姉に向け勝ち誇ったような顔をした。
「いえ、父上は一年以内に納得できるものを作れれば、今後も作り続けていいとおっしゃってくれました」
その言葉を聞いた姉は明らかに頭を抱えながらため息をつき呆れた顔をした。
「あんたバァカ父上は三年もかけて作れなかったものを一年以内に開発しろって言っていたみたいだけど、
それってただ単に諦めろって言ってるようなものよ。いい加減諦めてお父様に頭を下げたほうがいいん
じゃない。まっあんたには無理だろうけど」
姉は笑いながら自身の部屋へ戻って行った。
(はー姉さんもしつこいな。しかしながら姉さんの言葉も一理ある三年間ずっと大型エンジンを作るべく
やり続けていたが、残り一年で作り上げるのは不可能でしかないしかし小型なもの例えば
一気筒のエンジンであれば不可能ではないのではないか)
そう考えた少年は急足で街の中央にある馴染みの工房へと向かった。
「らっしゃい」
中にいる店主が元気な声で言ったが、少年の顔を見た瞬間眉を顰めた。
「おう、坊ちゃんか。前言ってたやつなら諦めてくれあんな複雑なものを十二個も作る上に複雑な機構が
他にもある。俺のような魔道旋盤も使えない奴には無理な話だね」
そう言った店主に対して少年はニヤニヤしながら新たな設計図を店主に見せながら説明を始めた。
「確かに前回は複数の機構とそれを車輪に伝える機構も含めてとても複雑なものだと言える。
しかしながら今回のものは簡略化したものになるこれならできるのではないか。」
その言葉を聞いた店主は設計図を確認した上で少し考えながらも少年の方を向いた。
「確かにこの内容なら作れないこともない。しかし、これを作るには多数の金属の知識と細かい手作業の
できる職人である必要がある。
こんなことができるのは職人の中でも上澄みの人間しかおらず俺には無理な話だな」
少年はその言葉と同時に目をキラキラさせた。
「上澄みの人間しかできないってことはできる職人もいるのだな。紹介をしてくれ」
その目を見た職人は諦めたようにため息をつき紙に何かを書き始めた。
「知らないことはないが、坊ちゃんと性格が合うかはわからないし責任も取れないからな。とりあえずこの
紙に店の場所とその人の名前を書いといたからここに向かってくれ」
店主は紙をそのまま少年に手渡した。
少年は店主にお礼を言い、そのまま店まで駆け出してしまった。
(この人であればもしかしたら俺の夢を叶えてくれるかもしれない。)
そうして少年は店の前までたどり着いたが、それと同時に驚いてしまった。
なぜならそこの店主と思われる人物が少年よりも二つから三つほど年上の青年を突き飛ばし、怒号を店の外まで響かせていたからだ。
「バカもんこんなもん売ったところで二束三文でしか売れないゴミクズだぞ」
その青年の作品は少年にとっては二束三文どころかもっと高値で取引されるものに見えたが、
店主にとっては違うようだった。
そんな店主を見て少年は信頼できる人間だと目をキラキラさせながらも手を扉の取っ手にかけ店の中へ入っていった。
今回も読んでいただいた方ありがとうございます。
今後も連載予定ですがしばらくは一日に一話を目指して書いていく予定です。
次回は<5月20日の12時>の予定です。




