表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/32

第21話:崩壊と矛先

 それは――

 ある日、同時に起きた。


「物資が来ていません!」

「輸送隊が戻ってきません!」

「命令が二重に出ています!」

 王城は、怒号に満ちていた。


 もはや、整理された報告は存在しない。

 すべてが同時に、押し寄せてくる。


「どうなっている!」

 レオンハルトの声が響く。

「なぜこんなことになる!」

 問いかける。


 だが――

「……」

 誰も、答えられない。


「市場は混乱!」

「兵站が機能していません!」

「税収の把握ができません!」

「地方からの報告も途絶えがちです!」

 一つ一つが致命的。

 それが、同時に起きている。


「……落ち着け」

 王は、無理やり声を整える。

「順番に処理すれば――」

「順番が決められません!」

 即座に返される。

「どれも緊急です!」

「優先順位が――」

「つけられません!」


 その瞬間。

 沈黙が落ちた。


「……なぜだ」

 王が、低く問う。

「なぜ、こうなった」

 その問いに。


 ようやく、誰かが口を開いた。

「……外部です」

「何?」

「外部の影響が、大きすぎます」

 フェリクスだった。


 顔色は悪いが、言葉には確信があった。

「交易の乱れ」

「他国との関係変化」

「市場の不安定化」

 一つ一つ並べる。


「これは、我々だけの問題ではありません」

「……つまり?」

 レオンハルトが問う。

「他国が、我々の改革を妨害している可能性があります」


 その一言で。

 空気が、変わった。

「……確かに」

 誰かが呟く。


「急におかしくなった」

「内部だけでここまで崩れるか?」

「外からの影響がなければ説明がつかない」

 言葉が、繋がっていく。


「そうだ」

 レオンハルトが、ゆっくりと頷いた。

「我々は、正しいことをしている」

 その前提は、崩れない。

「ならば」

 一歩前に出る。

「邪魔をしている者がいるはずだ」

「特定は?」

「まだです」

「だが――」

 フェリクスが続ける。

「近隣諸国の動きが、不自然です」


「……では」

 王の声が、低くなる。

「備えるべきだな」

「ええ」

 誰も否定しない。


「場合によっては」

 一拍。

「排除する必要があります」

 その言葉が――

 静かに、重く落ちた。


「待ってください!」

 その空気を、裂いたのはユイだった。

「それは違います!」

 立ち上がる。

「きっと、誤解です!」

「ユイ……」

 王が、少し困ったように言う。

「話し合えばいいんです!」

「戦う必要なんてありません!」

「みんなで――」

「理想論だ」

 遮ったのは、冷たい声だった。


 側近の一人。

 エリオット。

「現実を見てください」

「我々は、崩れかけている」

「原因を取り除かなければ、立て直せない」

「でも……!」

「では聞きますが」

 さらに言葉を重ねる。

「この状況を、どう説明しますか?」

「それは……」

 言葉が、詰まる。


「内部の問題だけで、ここまで一気に崩れますか?」

「偶然ですか?」

「運ですか?」

「……」

 答えられない。


「違います」

 断言する。

「誰かが、意図的に崩している」

「そんな……」

「だからこそ」

 フェリクスが続く。

「対処が必要なのです」

 ユイは、首を振る。

「違う……」

「そんなこと、したくない……」


「ユイ」

 レオンハルトが、優しく言う。

「君の気持ちは分かる」


 だが。

「だが、これは国の問題だ」

 その言葉は――

 優しくて、残酷だった。


「守るためには、戦うことも必要だ」

「……」

 ユイは、何も言えなかった。


 その善意は。

 正しい。


 だが――

 今、この場では。

 “弱い”。


「……準備を進めろ」

 王が、静かに命じる。

「対象の調査」

「戦力の再編」

「外交の確認」

「はっ!」

 声が揃う。

 誰も、止めない。


 こうして。

 アルヴェリア王国は――

 崩壊の中で。


 外へと、矛先を向け始めた。

 それが、どれほど危険な選択か。


 理解できる者は――

 もう、この場にはほとんどいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
内部が混乱すると、目を逸らしたくて、外を、隣の芝生を見てしまうよね。 家の中が片付かず、汚いと、外出率が上がるんだって(*⩌⩊⩌)⊹
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ