「玻璃の月に触れる」
最新エピソード掲載日:2026/04/27
天鳳仙花(てんほう せんか)には、すべてがあった。
恋人、友人、親友、大学。傍から見れば何不自由ない女子大生の日常。それでも仙花の胸の底には、いつも名前のつけられない何かが蔓延っていた。
幼馴染の勇城桔梗(ゆうき ききょう)——同じ大学、同じサークル、いつも隣にいる親友。桔梗は特別なことを何もしていない。ただそこにいるだけで、人が集まった。ただ笑うだけで、場が変わった。ただ存在するだけで、世界が桔梗を中心に回り始めた。
8月の終わり海と共にSNSに写真が流れた。
そこには三十四件のコメント。三十三件が桔梗に向けられていた。私に届いたのは一件だけ——桔梗ちゃんの隣の子も可愛いね。
"隣の子"
名前のない女として夏の残暑に刻まれたその夜、仙花は思考する。自身には何が足りないのか、どうすれば親友のはずのあの女より幸せになれるか。
答えは一つに収束した。
それは美。己に足りないのは美しさだと。
その日から仙花は追い求める。誰よりも何よりも美しさを。それが触れる事ならざる玻璃の月に手を突き出す事だとしても。
恋人、友人、親友、大学。傍から見れば何不自由ない女子大生の日常。それでも仙花の胸の底には、いつも名前のつけられない何かが蔓延っていた。
幼馴染の勇城桔梗(ゆうき ききょう)——同じ大学、同じサークル、いつも隣にいる親友。桔梗は特別なことを何もしていない。ただそこにいるだけで、人が集まった。ただ笑うだけで、場が変わった。ただ存在するだけで、世界が桔梗を中心に回り始めた。
8月の終わり海と共にSNSに写真が流れた。
そこには三十四件のコメント。三十三件が桔梗に向けられていた。私に届いたのは一件だけ——桔梗ちゃんの隣の子も可愛いね。
"隣の子"
名前のない女として夏の残暑に刻まれたその夜、仙花は思考する。自身には何が足りないのか、どうすれば親友のはずのあの女より幸せになれるか。
答えは一つに収束した。
それは美。己に足りないのは美しさだと。
その日から仙花は追い求める。誰よりも何よりも美しさを。それが触れる事ならざる玻璃の月に手を突き出す事だとしても。