*とある王の視点* 寵姫とのいつもの一夜
「あら、またいくつか戻ってきたわね」
そう我が寵姫は言う。
なんと麗しき声色か。
だが、たまに余にもわからぬことを唐突にいうはどういうわけであろう。
「また、唐突にどうした?」
先程まで倦むことのなき情事ののち、やさしく一糸まとわぬ美しき肢体を愛でつつ優しく答えてやる。
いくら愛でていても尽きることなく、注げども満たされることなき情動が余を突き動かそうとする。
永久に貪ってやりたいほどに。
だが、余は王として、また責務を果たさねばならぬ身。
辛い身であるが、それ故に何人たりとも犯させぬ神聖なる身であることも自覚している。
それ故に、このマルガレータにはあくまでも寵姫としての待遇しかしてやれぬことに不憫に思う。
今互いに臥している天蓋の暖かなベッドも、あまりにも粗末に見え、調度品には贅を凝らし、退屈しないよう流行りものの本や玩具も宝石もドレスも与えたが、さぞ窮屈であろう。
正妃である、王妃に気兼ねせねばならぬゆえなかなかあえぬこのもどかしさ。
本当にすまないと思っている。
それゆえに、もしやして、気を引きたい一心なのだろうか。
「いえ、何でもありませんわ、陛下」
にこやかに陶然と笑むその微笑を浮かべて鈴を転がしたようにいった。
「それよりも陛下、私、どうしても外へ出ることはかないませぬか?」
以前から繰り返し言ってきた言葉。
何故そこまで外にこだわるのであろう?
いや、わかっている。
外へ出たいというよりも見てみたいのであろう。
魔獣とやらを。
過日、魔獣討伐の任を下し、それを祝した宴を催した際に今までさして物に興味を示さなかったマルガレータが魔獣に大きな興味を示していた。
そのとき何を思ったのか珍しく討伐隊の隊長に近くの寄るように命じて何やらをいったあと、頭に手をおいて去らせていった。
後ほど聞くと
「戦勝を願いました」
と言っていた。
そして事実無理かと思われていた討伐も無事に、それも我が国の兵士では誰ひとりかけることなく行ってきたことには我が寵姫の祝福はなかなかのものだと思ったが、それ以降、外の魔獣の素材の保管庫に常々行きたがるようになった。
珍しいものをことのほか愛しているだけに、そのような素材はめったに見られるものでもないのだろう。はじめは寵姫にも一部を拝領してやろうともおもったが、国の学者どもが
「これは光が加われば消えてなくなってしまう」
と申して、一切を余にも見せることなく保管庫にとじおった。
あとあとに薬にするという下からの約束があるからとは言え、その全てを余にも見せることなく秘匿したことに学者を、ひいては兵士どもを疑いもしたが、戦争前に示した薬の効能を見て、本物であることは確信した。
それゆえ黙っているのだが、それでも、寵姫の望むものを全て与えてやりたいと思うのに、してやれぬもどかしさから学者どもに無理を言ってでも素材を出してやりたかった。
そこを正妃に止められ、仕方なしにそのままに留め置いていた。
だが、いずれはなんとかして寵姫にみせてやりたいと思っていたがこうも催促されると心が突き動かされそうだ。
「わかっておる。どうにかしてやりたいがお主の立場もあるしな」
「そうですか」
目を伏せて悲しそうにする。
「すまぬな」
ただ短く言うにとどめた。
「いえ、何度もお願いする私もいけないものなのです。ええ、でも、でもいつかは」
「そうだな」
それだけいって時間も押し迫ってきたことで余はこの部屋を出ていこうとした。
服は寵姫にきせさせて、短く口づけする。そして、そばにあったかけもののローブを羽織らせてやった。
今はただ、王とその寵姫でなく愛する男と女のただそれだけだからな。
こうして羽織らせてやるのは侍従の仕事だが構わぬものだ。
そして政務に当たるために政務室へと向かっていった。
扉を出るときはいつも悲しいものだ。
彼女もまた同じ気分であろう。
それでも背を向けて、政務にあたろう。
国を広げれば、いろいろ便宜も測れるようになる。
世継ぎもあろうし、そのあたり調整しつつ、寵姫にしてやれることをしてやろう。
こんな気分にさせられるのは産まれて初めてのものだ。
それゆえに、マルガレータは、余の全てであろう・・・・・
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「ふぅ、疲れる」
ちょっと零す。
今出てった男に向けて苦笑いを浮かべる。
ま、いっけど。
それよりも、目的のもの、見つかったみたいね。
ここもいいけども、保管庫のもの、いつまでもおいとかず、そろそろそろりともって出ようかしらね・・・・
ねらりと大きく笑いを浮かべた。
それは先とは違い、蛇のような表情だった。
うふふふふ・・・・・




