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子連れ竜生録  作者: こるり
36/48

~三十一里霧中~  言い訳

 いろいろ聞き出すために、三人仲良く、ハウス階段入り口前に運んで並べてみた。

 まぁ、縛られている大の男が三人。川の字で並んでいる。


 結構、シュールだわ。


 ともあれ、もうだいじょうぶであること、捕まえたよってことを上の人たちに伝えないとね。


 で、声をあげようとしたそのとき



「うわぁぁぁぁあああああ!!!」



 火のついたような鳴き声。

 あー、ヒィロちゃんが泣き出した。

 そして、


「え、ちょっと、これ、なによなによ!?」


 あわてたミルエラさんの声。

 にしても、泣いた声と慌てた声をあわせて考えて・・・・



 もしかして、ヒィロちゃん霧散したんじゃ。


 あわてて、後ろの連中なんぞおいとく。縛り上げているし、そう簡単には解けるものでもないよう強化しているからいったんほっとこう。


 帯イメージは某蜘蛛男の繊維並にしてるし。


 でも、さりとてそのまま誰もいないまま転がしておくのも不安なので索敵だけはしっかりと周囲に張り巡らせるようにしよう。

 意識付けには集中力が半端なものがあるけども、それでも、しないよりはよっぽどいい。


 とにかく階上に上がらないと。





 上に上がってみて動転しているミルエラさんと白いもやになったヒィロちゃん。それにどうあやしていいか困惑しているルネがいた。

 一難さってまた一難か。

 泣き声は病んでいてもどうもやたらとぐずっている様子。

 泣きがない状態でもやがかかっているのを見るのは初めてかもしれないけども、なんとなく白いスライムのような感じである。


 いやさ、まずいでしょ、その状態は。


 すぐにヒィロちゃんの下へ駆けつけて抱き上げるならぬ救い上げるようにして全体を腕でくるむ。

 びくっとした体の震えが手をつたってきたが、すぐに左右をみるような様子を見せて、徐々に落ち着きを取り戻したのか形も取り戻していった。

  

 ほっとしたのもあるがそれにもまして傍で驚愕の表情を浮かべているミルエラさんに不安を抱いた。


 それはそうだろう。

 いきなり、子供が軟体動物へと変化したら動転もするだろうし、形状からしたらどう考えてもそれ以上にどろどろに溶けたのが形をひょっと取り戻したのだから不思議としか言いようのないものだろう。


 さて、どう言い訳したものか・・・・・



「ミルエラさん、ヒィロちゃんは元素石の突然変異のようなものです」


 へ?突然ルネさん何言い出すの?


「実を言うと、いろいろな事情があって、ラス殿とヒィロ君は私が保護しているのです。先日の争いからいろいろあって、ヒィロ君を拾い上げてからラス殿が軍にいられなくなり、森林官である私とであって保護を求めてきたということです」


 なんかいろいろでっちあげようとしてない?

 

「ミルエラさんも、このところの小競り合いに妙な雰囲気を感じたりはしていませんか?」

「・・・・ええ、確かに。今回は不意打ちもいいところで村に少なからず被害もでましたし」

「例年の争いごとであればそもそも条約が生きている以上無茶なこともしてこなかったはずなのにこのところの、とりわけ今回の件につきましてはひどいものとしかいいようがありません。そこから傭兵の脱走も多くなっている様ですし、ラス殿もその一例の、妙なものではありますが、その一例なものです」

「といいますと?」

「ラス殿が得たヒィロ君の特異性などもありますが、とくにラス殿に懐いているようで父親としての情があり、軍にあればいずれは徴用されてしまうのは目に見えています。小さな赤子としか思えない子をそのような目にあわせるのは忍びなく、状況の異変もあり、ここにこうしているわけです」

「そういうことだったんですの・・・」


 納得してくれた?しかもそれとなく、こっちの経歴についておかしなことがないようにしてくれている。

 あ、でも難民って言った手前そのあたりはどうするんだろ・・・・・

「そもそも、ラス殿が難民というのも」 

 あ、理由付けそれもしてくれるの?

「軍の徴用に関しては平人種以外を使うことはよくあることですし、そのためラス殿にはつらいことをいってしまうかもしれませんが、見知らぬ土地につれてこられて軍役につかされているわけですから、その軍を離れてしまえば、定住を持たず、流浪する、難民としてもいえることですからね。戦争の悲劇ですね」


 若干演技がかっていないか?


 でもまぁ、ごまかすにしてもこのくらいの演技は必要になるかもしれない。

 見れば、ミルエラさんも気の毒そうな顔をして自分を見ているし、痛ましそうにヒィロちゃんも見ている。

 ちょっと、自分も補足するか。

「すみません。隠し事のような形ですが、このことはとてもいいづらいものでしたので」

「いえ、そんな、謝りにならないでください」

「ですが、まるで難民の一言で片付けてだましてしまったようなものですから。それにヒィロは自分にとってもう可愛くてなりないんです。この子と出会い、こうして一緒にいて、この子なしではいられないほどですから」

 まぁ、嘘をつくにしても真実はいれないと。

 


 こういうのはなんだけども、人をだますならうその中に一片の真実を混ぜるといいという言葉がある。

 

 人はある程度、それが本当であるように見える部分があれば全体を真実であると見ようとする傾向にある。

 それはそう見えるのではなくそう見たいと思うからなのかもしれないし、それはその人の良心に訴えかけるような行為である。


 嘘を本当に見せること自体ほめられたことではないが、嘘も方便である。

 この際、この子に危害が加わらないようにするにはこれに乗るしかないかな。


 にしても元素石の突然変異って・・・・そういうこともあるのかな?

 確か中国の昔話の中に人参果っていうまんま人の赤ちゃんのような形の果物があったってきいたことあるし、それに似たようなものがこの世界にも存在するのかなぁ?

 実際に、ミルエラさんが納得しているってことはそういうことなのかもしれないけども。


 

 「とにかく、そういうわけです。ヒィロ君自身には危害がこちらにくることはないですし、むしろこれだけの特異性以前に倫理的に守らねばならないでしょう。軍の中にいてしまえば実験材料にさえなりかねませんからね」


 実験材料という言葉にぶるっと想像をめぐらした。

 ミルエラさんもどうも同じようで、全く似たような想像ではないかもしれないがおおむね同じようなことは考えただろう。

 少なくとも、こんな可愛い子にひどいマネなんか絶対にさせてなるものですか。



「わかりました。ヒィロ君は私たちの村でもそれとなく保護対象としてお父様やおじ様方とも協議してみますわ」

「よろしくお願いします。それでは、話は移りますが、今回の襲撃ですが、二人の護衛を殺傷していないところをみると、どうも誘拐が目的のような形ですね」

「そうなの?」


 護衛だから殺されてからさらわれるということもありえたんじゃ・・・・・


「いえ、護衛とはいえ、ミルエラさんの様子からですが、二人はそれなりに親しくつきあっているようですし、そうなると殺してしまってはむしろ交渉を進めた場合に『殺害』という選択肢が入ってしまい、要求する相手の気持ちで致し方ないという気持ちを芽生えさせてしまうかもしれませんからね」


 なるほどね。

 むしろ希望を持たせておくほうが誘拐後の交渉はうまくいくものね。

 

「ただ、これは彼我においての力の差があったときでないと成功させられるものではないからね。それにともすれば、狙いも見えないものだから余計にわからないところもあるのだけども・・・・とりあえず、ミルエラさん、一緒に下に下りてもらいますよ」

「ど、どうしてですの?」

「ラス、ちゃんと逃げられないようにしているんだよな」

「ん?ああ、ばっちりだし、現に逃げてはいないようだよ」


 うん、ちゃんと常時発動させて何か動きがあれば敏感になるようにしてあるしね。

 それでも何の動きもないし、三人そろっている気配もある。

 

「ならいいか。ミルエラさん。では、ちょっと尋問もしますので顔合わせして見知っているかどうかの確認をお願いします」

「ええ、わかりましたわ」


 そういって二人は階下へと降りていこうとした。


「ちょっと、自分はどうしたら?」

「ラスはヒィロとそのまま一緒にここで待っててくれ。万が一また襲撃があったときに備える必要があるからな」


 ああ、そういうことか。


「うん、わかった。とりあえず、気をつけていってこいよ」

「ああ、狙いが何か聞き出してくるよ」


 そういってミルエラさんを伴って下へと降りていった。

  

元旦は、ちょいお休み。その分、2日は土曜日だけど、その日に更新しますねぇ。



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