~二十九里霧中~ どんなものも役に立つときと立たないときとがあって
面接に関して大切なことは、いろいろある。
マナーだったり、自身の独自性はどこだったり、よく知っているか否かだったり。
そして、私見を言えば、一番なのはどうもその場所に置いて必要であるか否かというところである。
とくに面接をする側にとって。
される側がいくらアピールしてもその答えがする側にとって有益でなければとらないのは通りである。
もちろんそれだけではないだろう。
若さがあれば、むしろ独自性を伸ばして将来性にかけようとする場合もあるかもしれない。
例外的にブラックのなんでもとってだめなら捨てるというやり方もあるが、それはおいておく。
ただ、歳をとってしまっていれば、先ほどの有益か否かで判断しなくてはならない。
そもそも、即戦力を期待してのことなのだから。
で、ミルエラさんとの面接だけど・・・・・
えーと、なんていったらいいのだろう。
ちょっと、例を出す。
「その、以前はどんなことをされていたのですか?」
「えーと、介護士してまして」
「カイゴシ?なんですか?」
「えっと、つまり、体のきかなくなったご老人の日常のお世話といいますか、自立支援に向けての手助けをする仕事なのですが」「ジリツシエン?とは?いえ、老人の手助けをするというのなら、家族がみるのでは?」
「家族だけでは補えないところを助けるものですが」
「?でしたら、周りの方々が助けていくのですが」
「・・・んー」
と、まぁ、一つに前職についての事柄のような概念がそもそもないようだし、それにずれもあって、けっこう説明に苦労したけど、考えようによっては、当たり前なのかもしれない。
この世界と向こうの世界とで、老若の人口比率の割合が違うのかもしれないし、よくよく話を聞いてみると事実、違っていたようだ。
そうなれば、自分が前に行っていた職は無用の長物に近いかもしれない。
とはいえ、それはある意味においては健全なのかもしれない。
元気な人が多く、皆が皆自発的に助け合っていくところがあるのかもしれない。
村社会においてはそういう側面は日本においてもまだいくつか残されているが、過疎化の波などで徐々に数は減っているだろうし、そもそも老人の数が劇的に増えているからさらに加速させていることだろう。
ともあれ、前職は向こうにはあまり今は求められていないようだ。
また、ミルエラさんとの会話において、たまにだが
「・・・・(ぽ~)」
ぼんやりとこっちを見ることがあるけども眠さもあるのかもしれない。
それにたまに
「趣味は?」とか「ご結婚は?」とかも聞かれたけども、まぁ、ありのままに答えました。
とはいえ、転生してきたことはもちろん伏せ、かつ自分の正体である霧竜についても当然ながら言いませんでしたとも。
だからごくごく無難な言葉で終始したというところです。
あと、後半になってからはっや雑談になっていったけども、ミルエラさんの歳って自分とそうかわらないということと未だ独身でがんばってるということも話してくれた。
また、なんとなくだが徐々に面接をする側される側の立ち位置が変化してなんだか自分が相談する側、向こうされる側という感じになってきた。
別にそういうふうに誘導したというわけでないけども、少なからず、情報はほしいという思いから、そうなったかな。
また、ちょっと先読み的なことも話してみると驚かれたのもあり、それに拍車がかかったというのが正解かもしれない。
コールドリーディング。
前職の傍ら、占い師の仕事もしていたことがあり、専門店などで少しの間一区画をオーナーが借りて手伝いがてらに行っていたが、その際に用いていた方法の一つ。
このときにはタロットや手相などを使っていたが、あくまでも自分にとってはそれら道具は補助的なもので、自分からしたら答えというのは必ず、自分の中にあって、ただ背中を押してくれるのをまっているのではないかと思ったりしている。
もっとも、的外れにならないよう慎重に情報を広い、自分の中で『占い』という形でまとめて相手に伝える。
その作業工程と結果で相手の関心を得るのはある意味詐欺師のような側面もあるのかもしれない。
でも、人の心は宗教や信仰など、何かにすがって助けを得体重いというのが存在している。
未来というものが見えない以上それは仕方がないものだ。
そして、よりよい未来を目指そうとするなら耳を傾けるのも必然というものだ。
とくに女性は論理的思考よりも情理的に考えてないものを形にしようとし、そこからどうも占いを好むという傾向があるように思われた。
実際に占いに来ていたのは主に、女性が多かったなぁ。
ともあれ、そういうわけで自分のもっているなけなしの知識から手相見や、また体の疲れ具合からそれとなく、私見をいってそれが当たったみたいでより関心をかったみたい。
なんか目をきらきらさせてこっちをみてるから。
むぅ、以前も思ったが、占い後の人って、こう、つきものが落ちたような顔のあとにどうしてこっちをそういうふうに見るのか謎である。
別に特別な力を使ってもいない。
相手にある答えをただ、まとめてあげただけなのに。
まぁ、今は自分に霧の竜の力が備わっているけどもこういう場ではそれは関係のないものだろうからね。
にしても「結婚したいのにできるのかしら?」とか「自分ばかり頼りにされても」とか愚痴めいたものも根気良くきいてあげた。
こういうのもまた、世界が変わってもかわらないものの一つなのだろうね。
人がいれば当然争いは起こる。
でもそこから芽生える思いもある。
そして、そこから派生する争いもまた起こり連鎖する。
ふふ、笑みがこぼれてしまいそう。
うん、こうして一時とは言え頼ってもらえたことには感謝である。
心も晴れて自分もなかなかすてたものではないと思えるから。
「こほん、では、適性もみせてもらいましたし、では、一度避難所へ行ってそこから村の部所へ参りましょう。はじめはとにかく農業村の立て直しなので、まずはそこからです。総出で行いますので二日もあれば目処は立ち、そこから、農業体験を七日間。それから、鉱夫の作業を一通り五日間、事務や接客などの部所には午前・午後と割り振って集中的に七日間行ってもらいます。あと、合間に護衛任務が発生したらそれを優先にお願いします」
きいていて結構ハードだなと思ったが、まぁ、多少覚悟していたし、それに一日で全て回れというよりもまだ、ほんとうに職業体験的に期間付きで行わせてくれるのは願ったり叶ったりである。
ここを通して仕事をこなせれば、いずれ将来に役に立つだろうからね。
「それと・・・・」
と、言葉を少しと切らせてから、ミルエラさんが真剣にこちらをみた。
「私がこういうのもなんですけども、そういった諸々の事柄をやっていくよりも、私としては先ほどの会話から是非、人の相談事を聞いていただける人になっていただけるととても嬉しいのですが」
「え?でもそういうのって、偉い人がすることなのでは?」
そう、ミルエラさんがさっき愚痴っていた内容から拾い上げたことだけど、どうも言っていることから相談事聞く人になるというのは正式な案件としての相談であってその場合はそれなりに村でも高位の人がなるもののはずである。
村の顔役とかそういう人ね。
そこに今自分がなるってけっこう厳しいものがあるのでは?
そもそも自分はよそ者だし、かつ、ここにきてほとんど間がない人間ですよ。
「そうですけども、失礼ながら、ラス様は『角人種』ですよね」
えーと、あー、そうでしたけども、それがなんなんだろ?
「もともとこのあたりはほとんど平人種でそれ以外の人種は争う傭兵以外いません。ですが、その平人種以外の人種は平人種にはない異能があるときいたことがあるんです。私自身、争う人にそんな異能があるのかと疑問に思うのですが見たこともないものをないと断じきれませんし、それに、信じている人もたくさんいます」
まぁ、基本的に姿形の違うものに対して畏敬の念を抱くこともあるだろうけど、この体になって霧の竜の力以外にそういうのを感じたことはないけども・・・・・
「ですから、まぁ、異能の力を見せて頂ければとも思うのですがおいそれと出していただけるものでもないでしょうし・・・その・・・」
と、うるんだ目で訴えられる。
うーぬ、まぁ、あんなふうに啖呵切ったことがちょっと災いしたか、あんまり悪感情抱かれるのはどうかと思うが恐れられるのも困りものだしね。
涙目っぽくされても困るものは困るから。
「ともかく、ラス様には自分の望む通りの食に疲れることが一番望ましいですし、どうぞご無理だけはなさらないように」
うん、ありがとうございます、ミルエラさん。
なんかやたらと気にしてくれているみたい。
こうして来たということは担当みたいになっている可能性もあるだろうし、そうなれば、ややもすれば当然か。
「気遣いありがとうございます。ですが、全部やってみたいのは確かです。なので、その職業体験はそのままにしてやらせてください。根をあげたりしませんし、それにやってやれないことはないですよ。途中で投げ出すのはそれこそ責務の放棄ですからね」
にこやかに冗談ぽくいってあげた。
安心はあげるにこしたことはないからね。
できる限りとっつきやすいように。
それを聞いてかミルエラさんは目を見開くようにしたが、それも寸の間。
にっこり微笑んでくれた。
うん、通じたみたい。
「わかりました。では、私からもそのように取り計らいます。でも、ほんとうに無茶だけはしないでくださいね」
さっきよりも語調は砕けている。
ん、より慣れてくれたか。
「ではそろそろ時間も押し迫ってきましたし、参りましょうか」
「ええ、あ、ちょっとすみません」
と、くるり向きを変えてルネを呼んだ。
「ルネ、ごめん。ちょっと、避難所へ行くんだけど、もしよかったらついてきてくれたらうれしいんだけど」
呼んだ。
・・・
・・
・・
あれ?応えがない。
「おーい、ルネ。もしかして、寝てるとか?」
寝なおしもあるだろうか。
でも、ヒィロちゃんを見てくれているだろうし、起きているはずでは・・・・・
「ルネ?・・・ミルエラさん、ちょっとすみませんね」
「はい」
ちょっと座を外すことをミルエラさんに了承してもらって、ルネが入った部屋へと椅子から立ち上がり行ってみた。
扉をあけたらいるはずである。
が、部屋には誰もいなかった。
「あれ?」
どこいったんだろ?
むぅ、顎に手をそわせて考えてほかの部屋にでもいったのかと部屋の中をもう一度見た。
「ああっ!!オルディっ!ヤハンっ!」
「ああっ!頭を下げて、家の中へ。早く!また来るぞ」
入口前で叫ぶミルエラさん。
そして、何か激しく声を荒げるルネの声が後ろで聞こえた。
えと、自己体験からのものですので完全に私見混じりです。そのあたりご了承を・・・・・




