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子連れ竜生録  作者: こるり
30/48

~二十七里霧中~   憧憬夢

 夕御飯はフィラさん特製クリームシチューとおっきな黒っぽくて丸っこいパン。

 けっこう塩味がきいていてそのうえ酸味がきいてる。なんだっけドイツパンにこういうのがあったけど、うん、シチューにあうなぁ。ライ麦パンっぽくておいし☆。

 しっとりしてるし、腹持ち良さそう。

 ヒィロちゃんにはクリームシチューで自分らの食べているものよりも薄めのものに、根菜類をかなり柔らかくしたもの。

 それと、パンの薄切りスティックを持たせてみた。

 はむりはむりと食べている。シチューもパクパク食べててよかった。

 まぁ、フィラさんの御飯、ほんとにおいしいもの。


 こういうのって亀の甲より年の功ってほんとにいうものね。

 経験がものをいうというものか・・・・ちょっと覚えたいかも。

 料理、もともと好きだし、昔は妻と交代で料理していたものだからね。

 

 さて、ただ食べているだけというのも味気ないのでルネといろいろ雑談して、話が興に乗ってお互いの素性も話して話して話し続けた。


 なんかほんとに気脈が通じ始めるや止まらなくなった。

 なんだろ、ヲタ友達と話ししてていつの間にやら軍事経済の話にまで発展してもまだまだヒートアップして止まらず、しかも楽しんでいた記憶があるけど、今まさにそれを掘り起こさんとしているようなそんな感じである。

 そうなればもう時間なんてあっという間である。

 そして、気がついたらご飯も終えていて、そこから抱っこへと切り替えたヒィロちゃんはとろとろと胸の中で眠っていた。



 それを見て、外を見るにもう随分と時間が経っているのに気がつき、明日の初仕事に障るということで、お互い寝室へと戻ることにした。

 無論、昨日寝た客用寝室のほうへ自分とヒィロちゃんは行き、ルネはルネの部屋へいった。

 


 まぁ、明日ということになるが、本当にだいじょうぶか若干心配になる。

 いろいろ実験はしたし、検証してみて役に立ちそうなものは見繕えたが、それでも、力があってもそもそも内面的には変わりはないのだから心配は心配である。

 人前でまたてんぱってしまって猪突してしまったらどうしようとか、そういう心配である。

 

 こういうのはどうあがいてもなかなか治らないものだし・・・・


 治ればいいなとは思うけどもね。



 ともあれ、もうねよねよ。

 ヒィロちゃんは横にした際にうにゃうにゃと起きそうになったのですかさず、自分の霧からの乳で少しずつあげていって、その間に着替えをしてやって眠らせていった。


 あとは自分が寝る番になって、着るもののイメージも簡単に、そのまま疲れたのかゆっくりと、しかし確実に眠りの淵へと降りていった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 一つの夢を見た。

 いや、それは夢なのだろうか。

 一枚の写真の切り抜きのようなそんな情景。


 小さな赤ん坊を抱いている母親とそれを暖かく包み込むように見ている父親。

 

 周りにあるものでわかるのはストーブと母親が座っている椅子である。

 

 母親が父親に何かを話しかけ、父親はにこやかにそれを聴いている。

 赤ん坊は穏やかそうに起きているような眠っているようなまどろんだ様子だった。


 

 いつこんな情景を見ただろう。

 いつこんな情景を感じたろう。


 それはあっただろう一つの穏やかな風景だった。

 夜なのか昼なのかも判然としない時間の流れの中、それは確かにあったのだろう。


 赤ん坊が誰で、母親が誰で、父親が誰なのか。

 

 もしかしたら


 赤ん坊はひろで、母親は妻で、父親は自分なのかもしれない。


 それとも


 赤ん坊は、霧竜の子で、母親はセティで、父親はその夫なのかもしれない。

 

 顔がぼやけてわからないから致し方ない。


 そんな夢の一風景をずっと見ていた。

 

 普通なら、心穏やかになる風景なのかもしれない。


 でも、自分の中に去来するものは、刺すような痛みと悲しみだけだった。

 

 それがなぜなのかはわからない。

 夢の中でも思考があるが、それを置いてもわからない。


 前世ではそんな夢も見なかった。

 こちらにきてからの初めての一夜明けてのときも見なかった。


 でも、落ち着いた状態になって妻のことを考えられるようになったからなのだろうか。


 実は妻のことを気にはかけても夢に見ることはなかった。


 一番気がかりだったのはひろちゃんだったから。



 ひどい話なのかもしれない。

 でも、愛していたことには違いないし、おそらく今後も愛し続けることには違いないと信じている。

 


 赤ん坊と母親と父親の三人がいる光景。


 

 憧れ、夢見て、叶ったはずの光景。

 

 でも、今は・・・・・



 それは欠けた光景になるのだろうな・・・・



 それを思うと、視界は一気に暗転し・・・・





 見える向こうに氷の柱があった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「・・・・ん」

 頭を抱えて起きた。

 時計というものがないので今が何時かわからないがけっこう寝ていたっぽい。

 翌朝なのかもしれない。


 なんかあれだけいろいろ特訓したり聴いたりしたからテンプレ的になにかイベントが起こるかなぁと思ったのだが、なんだかよくわからない夢であった。

 でも、なんとなく、懐かしさすらあるように思えるものがあり、上を仰いでため息をついた。

 横ではぷーすーと寝息を立てているヒィロちゃんがいた。

 夜泣きはだいぶひく月齢でもあるし、実際、前夜は夜泣きしなかったことに感謝するとともに、不安になっていたが、今もこうして寝続けていることを思うと、成長して言ってるんだろうなと思えてくる。

 大きく伸びをしてベッドから降りる。

 着ている服はバスローブに近い格好で、ヒィロちゃんはフリースの寝巻き。

 ん、可愛く、横を向いた状態でうつぶせになってころんとなっている。

 ただ、寝相からかかけていたはずの布団は剥がれている状態だったので軽くかけてあげた。

 翌朝とは言えまだまだ外は暗い。

 そういえばこっちにきて暑い寒いってのはあまり感じないけどなんでだろ?

 春とか秋とか過ごしやすい時期だからかな?

 まぁ、ほかの村人の様子を見ればそれっぽいような感じだし、それよりもちょっと肌寒い感じかもしれない。


 そんなことを考えて自分は動きやすい服装に着替えた。

 服装は昨日の村人の服をベースにちょこちょこ現代日本風にアレンジを加えたもの。

 着替え終わると改めて外の景色を見た。

 暗いとはいえ、早朝のうすぼんやりとした明るさが向こうで見えている感じ。


 ラジオ体操とかするのもいいかもしれないなぁ。


 ルネは起きてるのかちょっと索敵にて確認。

 うん、情景が頭の中に浮かんでくる。

 糸を伸ばして自分が虫になったような感じで情景を進ませる。


 見事、ヒット。

 

 ルネはテーブルでまた書類作業してるみたい。

 やはり、森林官の仕事は忙しいようだ。

 

 ま、しょうがないか、昨日の会話より把握できたことだしね。

 

 で、こうしてぼんやりしているのもなんだし、今度は外に意識を向けてみようと思い立ち、家の周りを察知してみた。

 すると、ふと、人の気配の反応があるのに気がついた。

 フィラさんかなと思って、意識を集中して情景を固定していって・・・・・



 うん、こっちに近づいている人がいるがどうもフィラさんではないようだ。

 ひょっとしたら仕事を伝えに来た人なのかもしれない。


 ちょっと、わくわくして部屋の扉を開けた。


「おや、ラス、おはようございます。随分早いですね」


 扉をあけてすぐルネがこっちに気がつく。

 まぁ、扉の音もすれば当然か。


「ああ、なんかどうもこっちに近づいている人がいるみたいでそれを知らせにね」

「近づいてくる人?・・・・フィラさんではなく?」

「ああ、なんか違う様子なんだ。だけど、仕事を伝えに来た人なのかもしれないから、出迎えに行こうかなと思ってね」

「そうですかね?それにしては早いような・・・・とりあえず、軽く、警戒はしておきましょうかね」


 まぁ、そうだね、さすがに敵意まではわからないし、ただ近づいているとわかっているだけだから警戒はしとかないと。

 それに失念してたなぁ。


「ラスはそのまま索敵を続けていてください。私は何かあってもだいじょうぶなようにしますので。けど、本当にフィラさんとかではないのですか?」

「うん、フィラさんではないなぁって思ったのはなんか複数の気配があるものだから」


 少なくとも四人くらい。

 誰かを護衛しているように近づいてきているから。

 フィラさんなら今朝のこともあるけど単独行動してそうだから違うかなと思って。

 そのことを伝えると

「ますますもって警戒しないといけないかもしれませんね。まぁ、場所が場所なだけに大事無いとは思いますが念の為に、ね」

「・・・・ありがとう」

 気配があるということをきちんと理解して信じてくれていることにありがたさを感じた。

 いくら霧の竜の力があるとは言え、こんなこと唐突に言われると、狂人の類かとヘタをすれば思われかねないものね。


 で、待っていること10分。

 意外と長いなと思って眠っているヒィロちゃんをそっと抱きかかえて、テーブルに座ってルネとじっと身構えつつ待ち構えた。

  

 そして、扉をノックする音がした。


「誰ですか?」


 ルネが応える。

 そして、向こうの相手も少し間をおいてから応えてきた。


「・・・ミルエラです。どうぞ入れて下さいませ」


 

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