~二十里霧中~ 道中時間
さて、避難所へと到着。
うん、あっさりと到着した。
けど、やや現在テンション高めというかなんというか。
いやぁ、なんていうか、誰かとこうしてぺちゃくちゃしゃべるというのは気がほんとに楽になる。
昨日の質問攻めとは変わってこっちもリラックスしていろいろ雑談ができて楽しかった。
前世でも妻にいなくなられたあと、方々を探し回ったりいろんな人に消息を聴いたりしていたけど、こうして雑談を、こういう気が楽な状態でしたのはいつ以来だろうという具合であった。
そもそも、前世の場所も妻のところへ結婚してきてからやってきたわけで、純粋に自分だけの関わりの友達というが身近にはいなかった。
会いに行けばいいといいだけのはなしかもしれないけど、あのとき一番近い友人でも隣の府であったし、それだけ距離があると微妙に中途半端で、通信手段もメールや通話以上にSNSやLINEなどもあって、あってお話ししようという気分にお互いがなかなかなれなかった。
家庭があるというのもひとつのネックになっていた。
こういってはなんだったが足かせという部分もなくはなかった。
それまで自由に過ごせていた時間があっただけに余計にそういう思いが強いのかもしれない。
友人にしても、妻との関わりがだめというわけではないが、妻からの関わりとなるとやはり気兼ねなくしゃべるというのは遠慮があった。
でも、今のこのときは違う。
そもそも世界が違うし、人との関わりもリセットされている。
通信手段についてもルネさんと道中話していたら遠い人とのやりとりは手紙が基本となるとのこと。
ルネさんみたいな森林官など特殊職であれば、仕事柄遠方とのやり取りもあるかと思って聞いてみれば確かにそうだとのことだが、その全ては仕事上のものだし、国をまたいでのものであれば仕事のものでひっきりなしということでも、それでも何日もかかってしまうそうだ。
伝書鳩というのもあるにはあるが大きな都市でもない限りないそうだ。
どうしてか聞いてみたら儲けの大きなところでないと採算があわないからだそうだ。
通信手段はそんなところ。
特殊なものなら戦時中の狼煙とか光の信号とかあるけどそれは通信手段は通信手段でも意味合いが違うから除外するとして、なかなかにインフラは前世の時代感覚で言ったら江戸時代かもしれない。
そもそも人の感覚もそのあたりっぽいようである。
人は生まれた地に根付きそこで営みを得て死んでいくのが一般的な考えだそうだ。
出稼ぎとかで遠方へはいかないのかなと思うが、出稼ぎにいけるだけのものはそれだけの人並み以上の能力があるもののみだそうだ。そういうものは周りからの推薦などで村のアピールとして大々的に送り出すのだそうだ。
帰ってきてからはその人脈なり経験なりで村でも重宝されることになるし、裏読みすれば「村のために尽くしてくれ」という願いがあるのだろう。
ほかにも若者の中には王都や公国などの大都市へ行って騎士や大商人、また冒険者になって英雄や一攫千金を求める者もいるがそういうものはごく少数である。
そうなの?と疑問に思えば、まず第一に親やその周りに強く止められるのだそうだ。
推薦のないものがいくというのはそもそも伝手なしでいくということで村へのプラスはないし、それに村の人口流出はそのまま村の力に直結するわけだから親どころか村民一動が止めに入るのもさもありなんである。
ただし、そこから気概を見せて推薦を勝ち取るものもいるわけでそういう止めに入ることもまた、村の力へつながるのかもしれない。
ともあれ、けっこう面白い話だなとも思った。
何がと言われると、ほんとうに何から何まで前世とは違う環境。
まるでゲームの中に迷い込んだみたい。
ただ、こうしてちびちゃんもいるわけだからちょっと手放しに喜べるものでもないしここへの導入からしてちょいとねぇ・・・・・
でも、冒険というものまであるのはわくわくしてしまう。
ヒィロちゃんももちろん一緒に連れてくつもり☆
まぁ、前世でそんなのやろうものなら全力で止められるだろうなぁ。
野宿しかり、都市間しかり。
獣や下手すれば魔獣までいるドキドキワールドなのだから。
特に妻から。
それを思い出してしょんぼりとはなった。
どうして唐突にいなくなったのかいまだになぞではある。
もう、こうして世界すら変わってしまったため手のだしようのない案件になってしまったけど、それでも気がかりではある。
あっちの自分はどうなんだろ。
多分、死んじゃってるだろうし、こうしてちびもいるのならそれは当然・・・・・
やめよ。
考えるとへこむ。
それに今は横でルネさんが通信事情から国家間の、それに今後のことについて親身になって話してくれてる。
そういえばルネさんもここに来て自分と同年代の友人というのはおらず、また、フィラさんをのぞけば、あまり親しくしている人もいないとか。
なんで?と問うと腕を組んで真剣に悩みこんでしまった。
男友達は、まぁ、仕事してるという側面でもしかしたら難しかったりしたかなと思ったら忙しすぎてこの地では作る暇がなかったとか。
なら女の子はと聞く。
イケメンだし、ファンクラブくらいあるかなぁと、というかファンクラブって概念があるのか疑問だけど、あるかなぁって思って女の子が夢中になるだろうって気楽に言ったら
「そんなことはない。むしろ、顔を背けて逃げられるくらいだ。特に同年代とかそれよりも下の人にはその傾向があるな」
とのこと。
なんていうかその子達も気後れしてたのかもしれないし、嫌ってるわけではないだろうけども・・・不憫な。
指摘しようかどうしようか迷う。
イケメンで地位もそれなりに高い若い男。
昔の自分だったら脳内ナレーションに即座にリア充死ねとか爆破しろとかコメントでもあったかもしれないけど、こうしてヒィロちゃんがいるようになるとあまりそういう感想は抱かなくなった。
むしろ、微笑ましくすら思える。
なんていうか悩んでるそういう言動を見ていると残念イケメンだったりしてと思うと余計に。
とはいえ、ルネさんの立場とこの村人の立場とは違うものである。
かたや、エリート街道まっしぐらな地位も高い若いイケメンで村で言えばある意味異分子、任期が終われば去っていく存在。
かたや、平凡な営みをして他国へ行くことなく村人同士の密な関係の世界で生きていく人たち。
とりわけ同年代であればそれはよりいっそう思いが強いだろう。
いくら村のために尽力しているとは言え、いや、それだけに同年代からしたら話しづらい存在にまでなっているのかもしれない。
任期当初はどうだったかはしれないが、ルネさん自身はとても真面目な性格だし、この赴任地は諍いの絶えない場所だけに余計にフレンドリーな接し方はせず、あくまでも森林官として務めを果たしてきたことだろう。
それじゃぁ、ちょいと無理だろうね。
よくもまぁ、六年目ということだから五年間とちょいがんばってきたものである。
そんな中で、正体霧の魔獣で、でもよくわからない子持ち難民だけど、異質とはいえ教養のある会話ができたためか妙にフレンドリーになっていた。
会話って大事だけど自分の存在もがある意味位置づけとしてよかったのかもしれない。
自分ってはっきりいって村人でもないし、かといって恐れるような魔獣というものでもないし、どこか宙ぶらりんなところがある。
始めは角人種(道中ちょっと種族間のお話もしたのでホーンがどういうものか認識できた)であるのにという気もあったけどそれとは違うということでまた余計に気楽にできるというのがあるようだ。
だが、そんなわけで立ち位置を自由に固定できたところがよかったのかもしれない。
そんなわけで、ルネさんと親睦を深める意味でも、また世界観を教えてもらう上でも有意義な道中時間でありました。
文のテンポアップって難しい・・・・




