*フィラ視点* メイド老女の物思い
「ふぅ・・・・んっ」
硬かった腰をうんとこしょ☆
ぐーっと反らせて洗濯物の続きっと。
はぁ、いつもの習慣でやってることも歳になると腰にきちゃうわねぇ。
とんとんと腰を叩いたらまた洗い桶に手を入れてごっしごっしと。
ルネ様の制服、しっかり汚れ落とさなくっちゃ。
にしても、朝ごはん届けに行って来てみたら同居人がいて、それが知人の死を知らせるものとはねぇ。
霧の魔獣
っていっても実体は単なる世話好き婦人ってあたしと似たようなものだもの。
しゃべってみてわかったこどだものね。
あ、でも、あまりこういうおしゃべりしようって考えはないだろうなぁ。
特に、魔獣退治に派遣されてた一時的なあの傭兵さんたちは。
こーして体も老いる前はそこそこ知られた女冒険者で鳴らしててたなぁ。
はじめはそんなではなく、単なる裏の飯屋の女として働かされてたけど、外の世界をみてみたいって欲求からその店から脱走して、北方からはるばる南方まで好奇心の赴くままにきたけど、一番の好奇心を満足させる存在はどこかにゃぁってただそれだけを目指して旅してたものなぁ。
脱走時店の服着て逃げてきたけど働いていたころからの戦闘服に身を通してると気も若返るし、ずっと昔のままの心持ちでいられるもの。
現に、体のきれもいいものね。
さすがはメイドの道は万物の道、ね。
ゆえにメイド服は人生の戦闘服ね。
そのとき働いていた先輩から教えられたこと。
あたしよりも10も歳が上だったけど今頃なにしてるだろうなぁ・・・・まぁ、平人種の人だったし、多分、どんなに長生きでも天寿を全うしたでしょうねぇ。
獣人種のあたしなら今のこの歳でもまだまだ生きれるってものだしね。
もっとも、もうこうしわしわになっちゃ、さすがに棺桶に片足突っ込んでるようなもんか。
でも、ここに来た当初、ルネ様のお屋敷で働き始めたときは美貌は維持してたなぁ。
今から26年前だっけ。
ま、それだけ時が経てばシワも増えるか。
でも、それでもつい先日まではほんとうにその当時の美貌はそのまま維持してて、メイド仲間からは『魔女』なんて呼ばれてたなぁ。
維持していたことそのものがは確かにちょっと異常だったかもだけど、たまたま先輩が『美人の秘訣』とばかりに呼吸法とか歩法とか体動かす用とそもそもメイドは護衛術も覚えないとということでたっくさん習ってそーなったわけだしね。
みんなだってすればいいのにってちょっと強めに勧めてみたら
「楽にやせたーい」
「しんどーい」
「仕事もあるのにぃ」
「どS幼女・・・・・はぁ・・はぁ・・・」
っていってたなぁ。
妙に熱のこもった目でみられてたこともあったような・・・・
ともあれ、そんな中で唯一赤ん坊の頃からお世話をさせていただいているルネ様だけは興味でもあったのか教えて欲しいと願ってきたわねぇ。
あの頃はかわいかったわぁ。
今は凛々しくなって素敵ですわ。
いくつになっても乙女は乙女だものね。
で、いろいろと仕込んでみたのよねぇ。
けっこう飲み込みも良かったし、ほんといい子だわ。
さて、でもそんなメイドとして働いている中、七年前くらいかな、霧の魔獣が出てきたからなんとかしようということがどっかから持ち上がってきて、で、各国の領主が賞金をかなり多額に出すっていってたから、そのときはちょっと小遣い稼ぎにいいかな。ついてくだけでももらえるし、面白そうだし、ってことで魔獣討伐隊の後方支援組に半ば冗談で入ったっけ。
家事スキルは高かったし、入隊希望出した時はやたら怪訝な顔をされはしたけども実演したら即採用だったなぁ。
後方支援って言っても支援組で参加した女性は私一人。私の美貌にちょっかい出す輩もいたけども、これでも身を守る術はあるからね。
寝込みを襲われそうになったのを逆に不意をついてちょっとお痛したらそれ以降はなーんにもしなくなったけ。
ま、そこそこ力はつけてたし、だいじょーぶでよかったわ。
野生の虎くらいは蹴り殺せるくらいだからねぇ。
先輩はもっと強かったような気がするけど気にしなーいきにしない☆
で、討伐隊が特定したか何かで接敵して・・・・・
あっという間に全滅したっけ。
運良く水汲みにいってて何を逃れてた私ともう一人の支援組の人が支援組のいるテントに戻ってきてその光景を見て呆然としたっけなぁ。
ちなみに討伐隊は50人で編成。
うち後方支援組は5人。
あまり討伐隊の人達と顔を合わせることって不思議と食事を届けるくらいであまりなかったなぁ。会話もさほどなかったし。
ただ、霧の魔獣の特性を、今思えばそうなる結果は納得できた。
後方支援って言ってもそのあとの結果の連絡役という側面もあったから。
少しでも情報が欲しかったんだと思う。
それぞれ組に分かれて少しずつ周りを索敵しながら進んでたなぁ。
とはいえ、50人分のご飯作ったりするのは骨だったけどね。
それでもその50人引く2人の48人が一箇所に死屍累々としてるところは阿鼻叫喚を通り越して呆然としてしまっていた。
そもそも索敵しながら進んでいたということで後方支援と先発組はつかず離れずな距離でいたわけだけど、戻ってきてそれが一箇所に集められて骸をさらしていたのは重かったわぁ。
ただ、そんな異常な中でふわりとした女の人が張られたテントの上に重さがないように立っていた。
なんだかとても綺麗だったわ。
周りの風景と離れた様子があたしをそう思わせてたんだと思う。
その感覚を持っていたのが良かったんだろうなぁ。
もうひとりはなんか奇声をあげて森の奥へとどっかへいっちゃって、それ以降消息聞かない。
薄情かもしれないけど、でもあたし以外討伐隊がいなくなってもあまりあわあわしていなかった。
ただ、そう、
綺麗な好奇心の塊に近づいてみたい。
脱走当初の外への憧れを思い出して。
で、じっと見られたあと、ふわりと降りてきて、こっちに来た。
そして、またじっと見られたあとにっこり笑って、
「あなたには命の危害は加えない。でもここにいるのは罪。少しだけ・・・・もらうね」
と申し訳なさそうにいってからほほを優しく撫でて・・・
実はそのときから少しの間、記憶がなかったりする。
とても気持ちが良かったっていうのはあるけど何をされたのかはわからない。
でも、気がついたらルネ様のお屋敷前に居たっけ。
で、驚愕されたわけね。
何せ、帰ってきたらしわしわのおばあちゃんになっていたんだから。
ええっ!って始めはあたしも驚愕して、メイド仲間たちはそれ以上に「ひどい」「なんてことだ」「あたぁ・・・」「・・・・・(うつ伏せに倒れてぴくぴくしてる)」って心配してくれたなぁ。
ルネ様にいたっては、なんか涙を流して拳を握っていたっけ。
でも、ねぇ、みんなが言ってたのもなんだけど歳が歳だったからいずれはこうなるって達観した気分はあったし、それ以上に、あの綺麗な女性に会いたい。
そう強く思った。
まぁ、領主からは情報が欲しいって言われたけども、討伐隊が全滅したことと今の自分がお情けで助けられたこと。
それ以外は霧に隠れて何も見えなかったと答えておいた。
なんとなく、綺麗な女性のことは秘密にしておきたいと思った。
とりあえず、こうなってしまったってことで、贅沢しなければ死ぬまでのんびりできるだけのお金をもらって、みんなのあの憐れむような目もあったことだし、その職場をやめることにした。
もういい加減歳も歳だったしね。
周りのみんなは信じられないみたいだったけども、年齢告げても冗談としかとってくれなかったけども、でも、ほんとうに歳が歳だったからね。
で、数日して自由の身になって、また森の中へとあの女性を探して・・・・・
あっさりみつかった。
いや、何年もかかるかなと思ったけど、でも、あっさりと会えたのはびっくりだったわぁ。
向こうはもしかしたら待っててくれてたのかもしれないけどね。
で、「やっほーい」ってこっちが挨拶したら向こうも「やっほーい」って返してくれた。
ふふふ、間の抜けた挨拶よね。
元討伐隊で返したのにまた戻ってきたあたしにまるで友人のように挨拶を交わしてくれた。
多分、そのときから、友人となったんだと思うなぁ。
で、それからしばらくはこのツリーハウスを作って、この住処を作ったら、遊びに行くようになった。
いろんなことを話したっけ。
そのときに能力のことだの、薬の素材のために狙われていることもきいた。
そのときの友人はもう彼女くらいだったから親身になってきいて守ってあげなきゃと老婆だけに老婆心に思ったものだったなぁ。
で、六年前に森林官として最年少でなられたルネ様の消息を聞きつつのんびりとした生活を送っていて・・・・
こうして今いるわけかな。
ルネ様にこのツリーハウスをあげて新しい住処に移ってからはなかなかセティに会えないことが続き、そうして、
「私ね、子どもが生まれるの」
って一年前にお話したのを最後にふっつりと会えなくなってしまったわ。
あのときも「おめでとう」っていっぱいいっぱいお祝いして、子どもの名前だとか、出産祝いのプレゼントは何がいい?とかいろいろきいて、「また来るね」っていつものようにでたけど、本当にそれ以降、いくら探しても会うことはなかった。
どうしてなんだろうって不思議だった。
そして、風の噂でまた、魔獣討伐隊が出たときいて不安に駆られたけど、あの討伐隊全滅の風景を思い出して、だいじょうぶだろうと不安を押し隠していたわけだけど・・・・・
ぽとん
洗い桶に貼った水に波紋がひろがった。
はっとして腕でごしごしと目をふいた。
うん、やっぱり長いこと生きてるし、死に別れなんてよくあること。
それにラスさんが抱えているのが多分、以前セティが言っていた子どもなんだろうな。
託されて迷惑どころか可愛がりつつ慎重に扱ってくれている。
まず、だいじょうぶかもしれない。
男の人ではあってもしかしたらセティの旦那様かって一瞬おもったけども、話を聞くに連れ違うってことがわかり、それでもだいじょうぶって思えた人だった。
今後、あの人がどういう進路をしてくのかわかんないけど、でも、願わくば、
笑顔でいられますように




