~十七里霧中~ 疑問は晴らさないと
「ちゅーちゅー」
おいしそうに指を吸っているなぁ。
「基本的には、ずっと抱っこして生活しているってことみたいですし、そのあいだに養分を吸っておっきくなるって言ってたですよ☆」
なんか目をきらきらさせてフィラさんが言ってる。
なんか孫可愛い祖母みたい。
容姿が容姿なだけにね。
にしても、抱っこして養分吸わせてるってのはまるで魚か哺乳類で言ったらカンガルーみたい。
確か、カンガルーって赤ちゃんを内側のポケット内に出産してからそれ以降何ヶ月もお腹の中に入れて、長いと一年半もお腹のポケットの中で過ごさせることがあるって言ってたなぁ。
それに近いかも。
・・・想像するとけっこう大変だなぁ。
腰への負担は大きそう。
あ、でも今は腰痛とかないし、そのあたりはどうなんだろう。
さっきフィラさんは能力は二つしかないって言ってたけどいろいろと変わっているところもあるんだけどなぁ。
まぁ、ごはんをはもはもしながら聞いてみよ。
丸パンサンドウィッチに手を伸ばした。
ちなみに抱っこしている腕で体ごと動かしてサンドウィッチを取った。
まだ吸っていてちょっとかかりそうだし、それをこっちの都合ではなすのはまずいからね。
あ、もちろん、フィラさんには「ありがとう」を添えて。
で、さっそく頭を動かして持っているパンをかじってみた。
うん、ハムとチーズもなんかやわらかいし、味も濃厚だけど、それにもまして葉物野菜。なんかの香草かな。シャキッとした歯ごたえあるけどひと噛みするとふわっと優しい香りが広がっておいしいわぁ。
香草だとパクチーとかその辺がぱっと思いつくけどあれって好き嫌いわかれるのよねぇ。
自分はちょいと苦手。
でも、この香草はちょっといいかも。
なんて香草野菜だろ?
まぁ、こうしてこのサンドウィッチをかじっていて味も感じられれば匂いもわかる。
味覚・嗅覚は人にとっておいしいまずいの基準は体が欲しているかどうかにも左右されるって言うし、こうしてそれを感じ取れるってことは普通に食事しても栄養はとれるってことかな。
ものの本とかには吸血鬼が血しか飲めず、ほかの食品類は砂やヘドロを食べているような表現がなされていたけど、その辺の心配はしなくてもいいかな。
それに、こうしてヒィロちゃんのミルクも心配しなくてもいいし、離乳食とかも自分と同じ体質ならばいけるかな。
あとは衣と住がどうにかなれば当面の心配はないのかな。
そもそもこの世界のことなんて何にも知らないし。
そのまま度に出るのはもう少しあとのほうがいいかな。
今はちょっと自分の体の慣らしもしたいし、それにも増してヒィロちゃんのこともあるからね。
赤ちゃんを抱えて旅をするのはちょっとねぇ。
こういう遠出に関する悩みは、産まれてからの一ヶ月間は赤ちゃんの外出は極力控えること、それと一時間以上の遠出になるのは禁止って妻と産婦人科の看護師さんに言われて以来かもなぁ。
あのときはヒィロの体のためでだったし全然苦ではなかったけど、一緒の散歩がのぞみだったものだから「早く出られないかなぁ」ってやきもきしてた記憶がある。
今は長時間いてもへっちゃらだけど、さすがに日がな外に出続ける、またヘタをすれば野宿ともなると、元日本現代親子たる自分たちには少々酷である。
別に言われることはないだろうけど脳内保育士看護師さんたちが危険信号出してる気がする。
そういえば時代劇で「ちゃーん」っていう子と一緒に旅してる浪人の話があったけどありゃー時代劇だし、そもそも時代があっては・・・・
って、そういえばこの世界の時代って現代に照らし合わせれば本当にどこなんだろ?
こうしてご飯を食べさせて貰って、中世ということも考えられたけども、フィラさんのメイドの格好をみてると近世っぽい感じもする。
フリル多いしね。
確か、服飾の歴史にてフリルって16世紀あたりからのものだったし、けっこうフリル多様されてるところをみたところもう少し進んでるのかなぁ。
あ、でも、今まで見た人の服とかはもう少し地味だったような。
ルネさんの服もなんとなくエルフの人が着ていそうな簡素な民族衣装っぽいものを着てる。初めて会った時の動きやすそうなチュニックみたいな姿は制服かな?ただ、どちらも動きやすそうな服装ではあるけどね。
まぁ、それを差し引いても今着てるジーンズにパーカー姿。ヒィロちゃんにいたってはフリース素材の寝巻き。
時代が会わないよねぇ。
時代に合わせたほうがいいよねぇ。
日本人気質で個性出し過ぎはちょっとねぇ。
はもはも食べながらヒィロちゃんはちゅーちゅーと吸う。
しばらく吸わせたあと満足したのかぷはぁと指から口を離した。
そのあと、一瞬きょとんとした顔をしたがひょいっとヒィロちゃんを覗き込むときゃたきゃたと笑い出した。
あ、そだ。
こうして笑い出してるわけだし機嫌もいいことだから今のうちに疑問におもったこときいておこ。
とりあえず、霧の竜に関しては生態がわかりそうなのは今の所フィラさんだけだし、ちょっと子育てについてもきけるやもしれないしね。
とりたてて聞くとしたらおむつかな。
自分も今の所、どころか昨日から全然もよおさないし・・・・ なんていうかとっても重要なことだからね。
とはいえ、そもそも知ってるのかなぁ?
普通、友人に「トイレとかどうしてる?」って聞けるものではないし。
さて、どうきりだしたらいいものやら。
けっこうデリケートなものだけども・・・・
とはいえ、子育てをしたことがある素振りだし、赤ちゃんについてで自然と切り出したらいけるのでは?
うん、早めにきいとこ。
もしかしたら今後、おむつもらわないといけないしね。
紙おむつはないだろうから布のおむつになるけども。
それでも十分だしね。
で、おずおずとおむつについて聞いてみたけども・・・・
「ああ、それはどうなんだろ?」
って顎に指をうけて疑問符浮かべられた。
「今のところどうなんですの?全然出てないの?」
「ええ、まぁ、けど機嫌もいいし、それに詰まっているような様子もないんですけども・・・・・水分とかそもそも足りてないってこともあるかもしれないけど、さっき結構な勢いで飲んだような様子だし、それに昨日もお乳をもらったわけだけど、その分も出ていない様子なので・・・・」
大人でも我慢したりして詰まると膀胱炎とかなるしね。
でも、赤ちゃんの場合は我慢するってことはないし、出したいときにはそのまま出すものだけども・・・・
「んー、これについてはよく知らないわぁ」
とフィラさん面目なさそうに目線を下げた。
「いえ、無茶言ったのは自分ですし、すみません」
頭を下げた。
「まぁ、多分ですけども、霧の特性もあるんじゃないんですかぁ?」
「霧の特性?」
どういうことだろ?
「赤ちゃんって泣くと一緒にでることはよくあるけど、この子もそういうのがあるんじゃないかなぁって思って」
・・・・もしかして、霧になることを言ってるのか?
じゃあ、あの霧って感情であーなるわけでなく、おしっこ出てあーなるとか・・・・
「まぁ、よくわからないけどもね」
舌を出して、にこっと微笑んだ。
うん、わからないね。
でも、もしそうなのだとしたら、あの霧自体ににおいやら汚いものはなかったし、それならそれでいいかもしれない。
「ん、まぁ、そういうわけだし、この子自体も多分霧の竜の子ってことになるから賞金首に狙われることもあるかもしれない。気をつけないとね」
唐突にフィラさんがパンと手を打った。
「さぁて、ご飯もいつのまにやらなくなったみたいだしぃ、早速軽くお掃除しちゃって、洗濯しちゃっていろいろやっちゃいますわぁぁん☆」
ちょこちょことフィラさんがささっと残ったご飯を食べて、素早く片付けると、箒とモップをどこやらか取り出して両手を腰に当てて「さて、やるぞ」みたいな体勢に入った。
「あ、ラスさんはお洋服、洗濯しちゃうから着てる服、脱いじゃってね」
「え、でもこれしか着るものが・・・・」
「ルネ様☆」
「はい、どうぞ」
って、いつの間に用意したんだ?その手には服が用意されていた。
長袖とズボンね。
けっこうあったかそうなものだった。
というか、なんとはなしに、今、ルネさんが着ているものと似たようなものっぽいなぁ。
「身長とか体型はあまり変わりがないようですし、着れるでしょう。どうぞ」
「あ、どうも・・・・あ、でもヒィロのが・・・」
「ああ、確かに・・・・フィラ殿、なにかありますか?」
「あら、ヒィロちゃんの用意はなかったの?」
「いえ、実は離乳食しか受け取らなかったもので・・・・・」
「余分、ないのかなぁ?じゃぁ、ちょっと探しましょうかね。じゃぁ、ヒィロちゃんの洗濯は後回し☆ほかの洗濯さんやっちゃうわよぉ。で、先にちゃちゃちゃっと掃除済ませちゃうから、ラスさんは着替えしちゃってねぇ」
「は、はい」
と、くるくると箒とモップを同時に操ってでもいるかのように華麗に掃除を始めたフィラさんでした。
熟練した動きは歴戦の戦士のようにも見えたけどさすがに伊達にとしは食ってないというところか小柄な体からはびっくりするぐらいの機敏な動きが生まれて、まわりのほこりやゴミやらをきれいにしていった。
ん、なんかあっという間におわりそうだからさっさと着替えちゃお。
ルネさんから丁重にいただきましてさっきまで寝ていた寝室で着替えをしにいった。
ここで着替えするのもあれだしね。
さっさといって終わらせましょ・・・・
で、寝室に入って、ヒィロちゃんをベッドの上にはいはいポーズの状態でおろす。
むくりと起き上がってちょこんと座る。
ぷにゅっとした顔が本当にぷりちーだけど、それはおいといて、とりあえず着替えしよ。今は大人しそうにこっちをみているだけだしね。
枕をヒィロちゃんのそばにおいて転び防止をして着替え始めて・・・・・
。
服を脱いでちょっと、びっくりしました。
脱いだ服が、消えました。




