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子連れ竜生録  作者: こるり
18/48

~十六里霧中~   赤ちゃんにミルクを

 

 「うふぅ~」


 なんか間の抜けた声。

 気まずい空気が抜けていく。

 ヒィロちゃんがフィラさんの腕の中でうにゅうにゅと動いている。

 

 「あらぁ、起きちゃいましたかぁ」


 フィラさんがにこやかにぱっちりしたお目目でフィラさんの顔を覗き込み、次にきょろきょろと周りを見渡した。

 ぐりっと後ろを振り返り、自分の父親の姿を認めると


 

 にへぇ~~~



 満面の笑み。

 あー、やはし、かあいい~~~☆

 そして言葉はしゃべれなくとも「パパァ~」みたいに両手をこっちに伸ばしてくる。

 ちょっとじたばたし始めたのでフィラさんの小さな腕からまろびでそう。

「はいはい、お父さんのところに行きたいのねぇ」

 立ち上がり、ヒィロちゃんを持ってきてくれた。

 抱き上げると「うひぃ」といってごんごんと自分の胸に頭突きをしてきた。

 この行動は以前祖父が仕込んだようで、構って欲しい相手にどうも頭突きをする傾向にあるみたい。

 赤ちゃんの頭突きとはいえ、けっこう本気で来るのでかなり痛い。

 それにやはり、赤ちゃんとは言えしっかりとした頭蓋骨。

 いろんなところにハイハイしてはテーブルの足や本棚に頭がぶつかったりすることもあるが、自分からあたりに行った場合は泣くことはない。

 泣くときは大抵誰かがそばにいるとき。


 けっこう強かったりするものだ。


 それでも、大きく打つのは危険が伴うもので、もしコブができていたら即座に医師に見にいかせるほうがよい。

 下手すれば脳に障害がおこることがあるから。

 ただ、そういうときの目安として機嫌がいいか悪いかを見て判断の基準としている。

 実際は打ったら見に行けかもしれないけど、機嫌が良いようなら「だいじょうぶ」といわれるからなぁ。

 しっかりした頭である。


 でも、ね、ヒィロちゃん。

 けっこう、本気で来られると痛いんだけど。

 

「そうだ、ごはんごはん」

 と、目の前のパンを見やる。

 小山だったのがもう平たくなっているけどもそれでも自分から見ればけっこう量は残っている。

 ちょっといただくか。

 でも、ヒィロのごはんはどうしよう。

 離乳食、まだあったかな?


「ああ、そうそ、ヒィロちゃんのご飯についてはラスさん、どこの指でもいいから、ちょっと吸わせてみて」


 え?何それ?おしゃぶり換わり??


 まぁ、今は機嫌もいいし、それに以前のときも何もなくても指やら自分の鼻やらをかぷかぷさせてスキンシップはかっていたし、いっかな。


 片腕で横抱きにして反対側の手の人差し指をヒィロの口元へと持っていく。

 すると、それを例によっていつものようにかぷっと噛んだ。

 噛みはするけど今は下側の前歯が一本芽が出ているくらいであまり痛くはない。

 まぁ、これで歯が揃ってきたらもう指とか鼻とかかぷかぷさせるのはやめたほうがいいだろうな。

 けっこう一本芽が出ているだけで上の歯茎がクッションになっているだろうけどもそれなりに歯の当たる部分に痛みがあったりするし、これが上下そろったらそれこそけっこう痛いだろうなぁ。 

 かわいくてやりたくなりはするけどね。

 

 ともあれ、指をかぷかぷさせている。

 これで、どうす・・・る・・・・・




 はい?




 なんか、吸われていると同時に何かが吸い取られている感じが指先からしている。

 血が出てる?!

「ちょ、ヒィロちゃん、離して」

 慌てて指を引っこ抜く。

 途端にそれにびっくりしてヒィロちゃんが


「ふぐっ・・・うあああぁぁぁーーー」


 「飲んでたのに邪魔されたぁ」のごとく大泣きし始めた。

 でもそれよりも血を飲ませるなんてだめだめだからね。

 で、指先を確認したが、血とか何も出ていない。

 傷の一つもない。

 歯があたって傷でもあるのかと思ったのに。

 小首をかしげて泣きが」さらにひどくなる前にもう一度指先をかぷりとさせてみる。

 今度はこちらが指を持っていくや自分からかぷりと少しだけ首を持ち上げてくわえ込んだ。


 ちゅーちゅーもちもちと頬をふくらませてなんか飲んでいる仕草。

 自分の指から何やら出ている感じ・・・・


 ちょ、なにこれ?


「なんかびっくりしたみたいね。うん、男の人がこういうことするってのはまず経験できないものだけども」

 にこにこの中ににやにやが混じりながらフィラさんが困惑しているだろう自分に言う。

「さっき、霧になるってことは話したよね」


 こくりとうなずいた。


「その霧ってのは確かに霧は霧なんだけど、それって同時に自分の体なわけじゃない?」


 確かに。


「自分の体の一部を分け与えているってことだからお母さんの美乳と同じってことなのよ。で、霧になるってことは要するに体のどの部分もそうできることだからぁ。指であれどこであれ赤ちゃんの口元に持っていくと・・・」


 ああ、なるほど。

 つまり、この指から自分の霧、というか体液がひぃろちゃんに流れ込んでいると・・・・

 って、それってやはし、血じゃん。

 やっぱり引き抜こ。


「あ、でも、霧になるってことだからラスさんが思っているほどそれ汚くないよ。セティもいっていたけど、そうやって子どもに自分の素体を分け与えて、体を作らせていくんだって」


 指を引っこ抜いたことがどうも指の汚れかなにかだと思われたみたいだけど、まぁ、それでも感染症とかの概念はなさそうであることは確かそう。


 ふむ、ちょっとびっくり。

 試しに自分の指をちょっと加えて吸ってみる。

 むぅ、確かに、なんか水っぽいものがでてるような気がしないでもないけど。

 加えていた指を放す。

 別に、変わった様子はない。

 ちょっとよだれで濡れた指。

 それだけだ。

 でも、なんか吸ったのは確か。

 変なの。

 もう一回試しに吸ってみた。

 うん、やっぱり、なんの味もしないけどでも、水っぽいものが出てる。

 


 男なのに母乳が出るとはねぇ・・・・・



 指をくわえつつ感慨に耽っていると、くすくすとフィラさんが笑っていた。

 ん?と指をくわえたまま小首を傾げるとさらに笑われた。


「ぷ、あはははは、なにそれぇ、赤ちゃんと一緒に指くわえてって、ちょっとわらえちゃうぅ~~」


 けらけらと笑いながら足をばたばたさせた。

 横にいるルネさんはそんなに大層に笑っているわけではないけどでも、ちょっと微笑んでいる。

 

 それが苦笑でないことを祈ります。


 慌てて、指を抜く。

 なんか笑われてちょっとむすっとなったけど、軽快な笑いでこっちもちょっと笑みが出ていた。


 まぁ、なんだ。

 これで、粉ミルクとか離乳食とかの心配はないってことかな。

 

 そういえば、イクメンパパさんで高確率で


 『自分も母乳が出たらいいのにな』


 と思うそうな。

 母親が赤ちゃんに母乳を上げているのはじっとしているだけでもけっこうカロリー消費は激しくもので、『母乳ダイエット』なるものまであるくらいだ。

 腰への負担も大きいしけっこう大変である。

 でも、大変な中でもちょっと神聖なものもあるし、我が子とダイレクトに触れ合っているということもあって、できたらいいな、と思う人が多いようである。



 そんなイクメンパパの夢。

 異世界でぷち、かなっちゃいました。  

けっこう周りのパパさんで「母乳が出ていたら代わってあげたい」と言っている人がいましたので載せてみました。

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