~十五里霧中~ 得られたもの
さて、自身に備わっている力についてだけど、フィラさんの言葉をそのまま使うとお星様やら間延びした『~』の乱舞になりそうなので頭の中で言葉を整理整頓して端的にしてみる。
まず、第一に教えてくれたのは、『霧』になること。
ようは形態変化のことだろうけど、霧の根本は水ということだからそれが個体・液体・気体とにわかれて自分の体を変化させられるということ。
『霧の竜』というだけあってそのままのことだろうけども、霧にもいろいろ種類があるようで濃淡から各個部分部分に凝固と飽和をすることができるので壁がわりにしたり煙幕のようにして逃げに転ずるのに効果的であるとのことだった。
確かに、視界を奪われたり、水が凝固するということだからようは突然、氷の壁ができたりしたらそりゃ、追われた場合、非常に有効な手段である。
またそれ以上にふと気になることもあり、そのことについてフィラさんに聞いてみるとそのとおりの答えが返ってきた。
つまり、自分に決まった形がないということだから、それは特性として物理的に斬られたり、貫かれたりしても体は元に戻ることができる、ということになるのではないか。
そして、それは事実であったということ。
おおぅ、けっこうなチートな防御方法だ。
確かに流れる水を刀で斬ったり突いたりしても何の効果も得られず草臥れ損なだけだしね。
ほとんど物理無効じゃん。
そう思いはしたがフィラさんが「でもねぇ」とちょっと違うことをいってきた。
確かに霧という面ではすごいところだが、核となるものが体のどこかにあり、そこを傷つけられるとだめなんだそうな。
核ときいて、ヒィロちゃんが泣いて霧状になった時の輪郭のうちにあるもの。
うん、ぼやけた輪郭はあったけども、確かにそこにあるということではあったから、おそらく『それ』が核なんだろう。
別に球上だったりとんがっているものだったりするわけではなかったがあえて言うなら
金平糖の出来上がり前
みたいな形状かな。輪郭はぼやけて不定形であったから言えることだが。
ともあれ、それは注意が必要である。
むやみやたらと突っ込むと痛いことになりそう・・・・
そもそも前霧の竜のセティは性質として優しい竜だったそうだ。
降りかかる火の粉は払わなくてはならないが、攻めてしまって自分や他人が傷ついてしまうことに一様に怖がっていたとのこと。
とはいえ、人と竜、というよりも魔獣は本来は相容れないものゆえそんなことはお構いなしにせめぎ合うのが一般的でセティは少なからず、こうしてフィラさんと交友があるというのは極めて異端であったとのことだった。
それ故に、フィラさんも魔獣とは言えセティがいなくなったことにとても心痛めていたわけだが。
そんなわけで、自分の核やそれにもましてヒィロちゃんの核には十分な注意が必要であるというのがよくわかった。
それさえ気をつけていれば、ほぼ無敵だろうな。
三十六計逃げるにしかず。
兵法の基礎でもあるわけだ。
逃げるなら全力を尽くしますよぉ。
さて、二つ目として、霧に付随して『索敵』である。
霧そのものが言わば霧の竜の体としての機能を要しているわけなのでそれは五感の全てを形成しているといっても過言ではない。
となると、霧にふれたら、極めて行けばおそらく、そこに何があるのかを特定できるという性質があるとのこと。
言わばレーダーが頭の中にあるといったところである。
ただ、これにも欠点があり、霧状となれば、その感じ方はほかの動植物にも触れてしまうので常時使用ともなるとそういった不純物も混じって絶対的な特定に対しての感度は低くなってしまう。
ぼんやり何かがこっちに近づいているなというのがわかるくらいになってしまうそうだ。
それでも、視界ゼロの中敵味方まではともかく、動くものを識別できるのは非常にありがたいものだし、極めればということだから要訓練なのかもしれない。
と、二つ目まで語ってくれたところで、
「わたしの知ってるのはここまでですぅ。まだまだセティさんはいろーんなことできそうな感じだったけど、ひ・み・つ☆ってウィンクしてくれたですわ」
とのこと。竜のウィンクってまたレアなものを。
ちょっと見てみたかったなというところ。
ちなみに竜としての姿は白いふわふわとした犬と顔は鳥にも似た嘴をもった翼のない四足のぼてっとした獣だったそうな。
想像としてはけっこうシャープなものを想像していたが、それはそれでかわいらしいなと微笑んだ。
もっとも、その形態は竜のときで、フィラさんと会うときにはそれなりに美人な年経た女性に変化していたとのことだった。
まぁ、容姿なんかはわからないし、美的感覚も人それぞれでどんな人か定かではないけども、優しそうな人、というのはあるみたい。
そんなところ。
今の自分にできる力は知る限りではそういったところだ。
これだけでもこっちとしてはとてもありがたいものだ。
レベル一でなにもわからないところに放り出されたわけでなく、そこそこのスキルと装備をもらったような心持ちであった。
何かあっても多少は対処ができるというものだ。
それに、訓練次第で力は増すとのこと。
これは人も同じことだろうなとおもったが、この世界、人と魔獣のアドバンテージの違いとして、大きなところが魔術が使えるか否かなんだそうだ。
それを知って大いに安堵したと同時に目を見張る思いがした。
自分としてはやはり戦士としての個々の力よりも広域で力を振るえる魔法使いの方が強いと思っている派である。
それにどの程度の力の位置かは知らないけど使える人がほとんどいない魔術が使えるのはどきどきするものだ。
おれTUEEEEEモードか。
と心震わせた。
「・・・・・・」
けど、自分の挙動に不穏なものを見つけたのか、フィラさんが興奮した自分に冷めたよう視線を送った。さっきまでにこやかだった目がにわかに細まりこっちをみて、急に頭に冷水をかけられたような思いがした。
ふと、思う。
力を得た。
それはスゴイ。
でも、それをどう使うのか。
それは持っているもの次第。
それに、そんな魔術が使える魔獣、セティという霧の竜は退治されたとのこと。
そして、自分は人から見れば危険を冒してでも手に入れたいような薬の素材になる存在であること。
・・・・・・自重しないと、いけないね。
ドキドキが急速にさめて、フィラさんに目で、そして行動で、頭下げてフィラさんをみたあと、目線を下に下げた。
申し訳ないという気持ちとともに。
何に謝ったのかは自分でもよくはわからない。
でも、謝らないといけないと思った。
それでも謝らないといけないと思った。
それに対してフィラさんはただただにこやかに微笑み
「これがわたしの知ってるセティのちからです」
と、言葉を一度きった。
空白が、寸の間、この場を通り過ぎていった。
腰痛は辛いもので、その関係でちょっと遅れました。しゅみませぬ・・・・・<(_ _*)>




