~十里霧中~ 起床後の思考
あー、本当にびっくりした。
いきなりばふってなってもやがかかって、ルネさんがきて、だったものなぁ。
ん、昨日の晩のことを思い出していた。
どうにもこの世界にきて一日が経過したわけだけども、世界のことも今後のことも何もわからない状態で、何をしていいのかすらもわからない。
ルネさんには働きたいこともいったけども、それは今にして思えば、本当にただ単に居場所を確保しておきたかっただけのことのような気がする。
将来の展望とかも何もなく、ただただ、流れるままにしているだけ。
ある種の逃げに近いのかもしれない。
理由を見つけるのもどこか怖い。
前の世界のことを思い起こす。
妻に逃げられたことには悲しさとやるせなさがあったがそれ以外のことについてどうだったか。
はっきりいって、可もなく不可もなくといったところだが、ただ漫然と生きているというだけだったような気がする。
妻がいて子ができた頃はまぁ、それなりだった。
仕事もミスも多く、嫌な事もあったがいいこともあった。
だが、思い出せるのはなんだろうと考えると不思議とうすらぼんやりとしてしまう。
確かにあった時間が、思い出せない。
それは同じ時間を連続しているからなのではないのか。
人を介せず、一人になると妙に思考が深くなるのは昔からのこと。
ひろちゃんがいるときは神経はひろちゃんにむくから深くはならない。
深くなれば心地よさと共に胸苦しさを味わうから、その好意は本当はよいことではないのだろう。
でも、考えざるを得ないのだから仕方がない。
思考を止めてしまえばそれこそ死んだも同然なのだから。
それに抗いたいだけなのだから。
だから理由がほしかった。
でも求めて得られたら?
そのあとはどうするの?
また、理由探しになる。
止まらなくなる。
寧ろ手を伸ばしてもぎりぎり届かないくらいのほうがいいのかな?
・・・・
・・・
・・
・
やめよ。
今はとにかく、朝がきたから起きて、ひろちゃんを見なくっちゃ。
幸い、寝る前に少し食べてくれた。
おむつは相変わらずなにも変化なし。
ほんとうにどうなっているのやら。
おなかのはりはないし、苦しそうな、機嫌が悪そうな感じはない。
至って平穏。
脱水症状の危険性も考えて唇がカサついたりしてないか触っても相変わらずよだれはよくでている。
ちなみに、脱水の場合、おむつ内に濃いシミのようなものが出来る場合があるがそれも今のところはないし・・・・
本当にどうなっているのやら。
そういえばお腹がすいたというのもないな・・・・
そう思って、自分のお腹をさすってみた。
うん、そういえば、自分もお腹がすいてない・・・・・
えーと、食べようかなという気持ちはあるが食べなくちゃ!っていうほどの強い気持ちはない。
食欲が減ったのか?
それよりもふと気がつくと、トイレにも行ってない。
行こうかなと思っていたが、そんな気もしない。
・・・あれ?
脱水の危険性も考慮したくなるが、それ特有のだるさも喉の渇きも感じない・・・・・
何かを食べようと思えば食べられなくもないのだろうが、この状態はあきらかにおかしい。
角を触ってみる。
体はおそらくは以前とは変わっているのかな・・・・
うん、変わってるはず。
いや、それよりも、冷静に考えてみてそもそも体の動きも以前よりもよくなっている。
前の世界での職業は介護職。
けっこうあっちこっちの施設を転々としていて、妻との結婚を機にそのままあの家の近くの施設へと転職しtけども職業形態は変わらず。
そのためかけっこう腰痛に悩まされていたものだ。
車椅子からベッドへの移乗や排泄介助、入浴介助時のストレッチャーへの上げ下ろし。
全身を動かせば多少負担は減るもののやはり長年働いているとがたはくるもので非常に痛いことが多くなってきていた。
それに加えて、ひろちゃんの抱っこの件もある。
抱っこひもで負担軽減はなっても、腰にまくベルトや肩紐がくいこむこともあり、より一層腰が痛くなる。
だが、それがなくなっている。
それに体の動きもそう。
一晩たって、腕を振ったりして、足を動かす。
あれだけ山登りやら森の中を歩き回ったというのに筋肉痛がない。
それにルネさんと対峙したときの行動。
自分自身スポーツはほとんどしたことはない。せいぜい遊ぶ程度しかない。
それこそ武道の経験なんぞ皆無である。
だけど、相手に詰め寄り無力化できた。
考えてみれば、ルネさん自身からの情報だが森林官は優秀なものが多いとのことだが、それは頭だけでなく身体能力もそうなのだろう。
そもそも、射御の腕前もそうだが、木から飛び降りて女性を助けに駆け寄った時もけっこうな速さだったから、運動神経もいいのだろう。
でも、そんな彼を無力化できたのだ。
素人の自分が。
おかしい。
こっちに来てスーパーマンにでもなったのか・・・・
と思いはたときがついた。
角が生えてこうして体の機能がアップしていること諸々の状態からこれがあの霧の龍の力の一端か?
龍自身も力を引き継いだとかいっていたことだし。
ただ、できることならば具体的な情報が欲しい。
どういった力があり、どういったことができ、どういった形だったのか。
そもそも龍の存在そのものが空想上の産物でしかなかった。それがこうして接触どころか一部とかした現在、どんなものだったのか形がわかれば、少なからず機能というのがわかるだろう。
龍というのだから、トカゲかそれとも細長い蛇か。
しかし、力は一旦とは言え普通の人よりもおそらくは上の存在であっても滅びは免れない。
おそらく何らかの理由があったのだろう。それも子供まで巻き込んだ何かが。
災害とか?
それとももしやして討伐?
龍というのだからその可能性が高いかもしれない。
もしそれが事実ならその龍を失わせるだけの存在があったということか。
ちょっと行動が危ぶまれるところだ。
「んー」
やはり、深く考えると不安も大きくなって何もできなくなりそう。
とりあえず、そろそろ思考を切り替えてひろちゃんを起こすとしますかね。
抱っこひもつけてっと。
顔でも洗いに部屋を出ますか。
そういえば鏡を昨日から見てないけどもひげとかのびてるんだろうな。
あごをさすってヒゲの有無をみる。
なんとなくジョリジョリ感はあるかも・・・・
薄いし、存外そのままでも平気かなと思ったけど、ひげそりって気持ちを落ち着かせるのにも効果あるのよねぇ。
私見だけど。
でも、この世界ではカミソリとかそういうのはあるのかしら?
矢とか剣とかはあるから何か鋭利で小さな刃先があればどうにかなるかなぁ。
生傷だけはさけるように努力しよ。




