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「もう、うんざりだ」と言われたので、出ていきますね  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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※第63話 俺には世界一賢い妻がいる

「いや、結構だ」


迷うことなく返事をした。


「え!? ちょ、ちょっと! 何? 迷うことも無く即答? どういうことよ! まさか本気で言ってるの?」


余程意外だったのか、エリザベスが後ずさる。


「本気も本気だ。俺たちはもう二年前に終わってる。それに俺は既婚者だ、君なら良縁に恵まれるだろう。そう言うことだから失礼する」


やれやれ。

これでようやくエリザベスから解放される。


彼女から背を向けて、その場を立ち去ろうとしたとき。


「待ってちょうだい! まだ話は終わっていないわよ!」


上着の裾を引っ張られ、足止めされる。


「……一体、何なんだ? まだ俺に用事があるのか?」


「何よ……その露骨に迷惑そうな顔は!」


自分のプライドに触れたのか、その目がつり上がる。


「あぁ。悪いが、本当に迷惑なんだ。俺はここで、サンドリー村の営業をしなければならない。君の相手をしている余裕はないんだよ」


「何さ。以前、『サンドリー村は何も収益を生み出さない、あんな村は放置しておくに限る』と自分から言ってたくせに」


エリザベスは一向にジャケットの裾を握りしめている。


(何年も前に話したことなのに……まさか覚えていたとは)


「あぁ、確かに言った。それはよく覚えているよ。だが、今は違う。妻がサンドリー村の開拓に励んでくれているおかげで、今は絶大な収益をもたらしてくれているんだよ」


「何ですって……? まさか、あの女性が? 頭が空っぽのカプシーナと呼ばれていたのに? ……って何よ。そんな険しい顔して」


俺の表情に気付いたのか、俺のジャケットから手を離した。


「いいか? 二度と彼女のことをカプシーナと呼ぶな。今は、あの村で『シーナ』と名乗り、村長を務めているんだからな? これがその証拠だ」


妻から譲り受けた名刺を胸ポケットから素早く引き抜き、エリザベスに手渡す。


「え? 何よ、これ……」


「見ての通り、妻の名刺だ」


営業するには彼女の功績も称える必要があるので、常に名刺を持ち歩いていた。

別に妻の名刺だから、肌身離さず持っているわけではないが。


「これ、誰の名刺なの?」


エリザベスは白けた様子で、名刺を突き返す。


「え? 誰のって……あ! こ、これは、その! 間違いだ!」


慌てて自分の名刺を差し出してしまった。


「これが妻の名刺だ」


改めてポケットから取り出し、間違いが無いか確認するとエリザベスに差し出す。


「……何よ、これ。カプシーナ・サンドリ―って。名前全然違うじゃない。だって彼女は……」


「別にいいんだ! 妻はサンドリー村の村長を務めるべく、改名したのだ。そんな妻を俺は心から尊敬している。だから少しでも彼女の役に立てるように、営業活動を行っているのだ。つまり、君とはやり直すつもりはないし、今非常に忙しいということだ」


「本気で言ってるの……? そんなこと。私、どれほどあなたの仕事に貢献したと思っているのよ……! あなたが好きだったから! 力になりたくて、手を貸していたのに!」


段々エリザベスが興奮を露にする。

そして同時に、俺たちを取り囲むように貴族たちが集ってきた。


(くそっ! 厄介だな……! だが、俺とてそれほど愚かではない。この状況を逆手に取ってやろう!)


「確かに、君には感謝している。だが、それは二年も前の話だろう? 君は公爵家から多大な手切れ金を貰うと、俺の前から姿を消した。恋人と別れたからと言って、今更俺にすがるのはやめてくれ。俺には世界一賢い妻がいるのだから!」


「賢い」という単語に、周囲で話を聞いていた貴族たちが騒めく。


「ねぇ聞いた……?」


「確か彼の妻は『カプシーナ』と呼ばれていたよな?」


誰だ!? 今、俺の妻を「カプシーナ」呼ばわりしたのは!?

だが、今は目の前のエリザベスだ。

才女として名高いエリザベスは、肩を震わせながら俺を睨みつけてきた。


「何ですって……!? つまり、私が愚かだと言いたいの?」


「いや、別にそうは言ってない。ただ妻の方が優秀だと言ってるだけだ。何しろ最近話題のレーズンや、ドライブルーベリーを作ったのは彼女だ。そして今や、ワインの醸造も手掛けているのだからな!」


大袈裟に両手を広げて胸をそらせてみせる。

ドライブルーベリーと聞いて、女性たちがざわめく。

まぁ当然だろう。

最近では若返り食、目に良い食べ物としても話題になっており、入手困難になってきている。


「え!? あのドライブルーベリーを……? 美容食として最近話題になっている……?」


「あぁ、そうだ。随分詳しいな。もしかして君の嗜好品なのか?」


「っ! も、もういいわ! 残念だったわね。折角私がよりを戻してあげようとしていたのに」


エリザベスは吐き捨てるように言うと、背を向けて去って行った。


(ふふん、やっと行ってくれたか。では営業活動を……)


すると周りにいた貴族たちが一斉に駆け寄ってきた。


「是非! 話を聞かせて欲しい!」


「ドライブルーベリーを高値で譲ってちょうだい!」


あっという間に取り囲まれる。


「皆さん! 落ち着いて! お一人ずつ順番に話をさせていただきましょう。では……」


この後。

貴族たちに熱弁を振るってサンドリー村の営業活動を続けた――


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― 新着の感想 ―
いつか手を取り合って一緒に公爵領を盛り上げるとかなるのかな。 なんかあれだけど頑張れ公爵。
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