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「もう、うんざりだ」と言われたので、出ていきますね  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第5話 さて、ノックしてみようかな

コツーン

コツーン……


磨き上げられた大理石の床に私の靴音が響き渡る。


「それにしても一体幾つ部屋があるのかな……?」


まるで学校の教室の様に整然と並ぶ扉、扉、扉……。


この家は、相当のお金持ちと見た。

さすがは侯爵家。


「何だか、迷子になりそう。相変わらず使用人の姿も見えないし」


どうして、こんなに静まり返っているのだろう?

もしかして、わざと迷わせる気じゃ……?


(いや、まさか……)


「あり得るわね。うん、十分あり得る」


私にこのメモを手渡してきたとき、メイド長ハンナの目が怪しく光った気がする。


「でも、ま、いいわ。これも屋内探検ということにしておきましょう」


少しの間思案し……良いことを考えついた。


「そうだ! 自分がたどってきた場所をメモればいいんじゃない! そうすれば迷子にならなくて済むし」


我ながら名案だ。


念の為。

部屋を出る時に室内を漁って出てきた鉛筆とメモ帳をポケットに忍ばせてきたのだ。


早速、記憶にあるルートをメモ帳にスラスラと書いていく。


「え~と、今私がいるのは南棟の一階……と。それで扉の数は……」


歩きながら図面を書き込んでいく。

そしてついに行き止まりまで来てしまい……メモ帳を閉じた。


「うん、やっぱり渡されたメモはインチキだった。なるほど……。つまり、夫の処へは行かせたくないほど私は嫌われているのね。……ひょっとして悪女だったのかな?」


けれど、いくら思い出そうとしても不思議くらい一切の記憶が抜け落ちている。


「まぁいいわ。一階の探索は終わったことだし、次は二階へ行ってみようかな」


幸い目の前には上へと続く階段があるし。


慣れないヒールによろめきながら、二階へ向かった――



****


 二階は一階とは趣の違う廊下だった。


床には青いカーペットがずーっと先まで敷き詰められている。

窓も先ほどより、一回り程大きい。


天井はとても高く、豪華なシャンデリア。

壁には美しい風景を描いた絵画が、ずらりと飾られている。


窓から外を眺めてみた。


美しい花々が咲き乱れた庭が、ちょうどよい視線で見下ろすことが出来る。


「……間違いないわ!  きっとこのフロアに夫の書斎があるはず!」


確か二階は一階よりも住み心地が良い環境にあるので、主たちの居住区は二階に作られている……。

という話を耳にしたことがある。


でも、どこで私はそんな知識を身につけていたのだろう?


……まぁ、深く考えても仕方ないか。


「今はまず、夫の顔を拝みに行かないと」


メモには書斎の扉は白く、金のドアノッカーと金のノブと書いてある。

未知の文字なのに読めてラッキーだった。


私は壁の絵画鑑賞を楽しみつつ、書斎の扉の探求を続け……。


「あった! ここに違いないわ!」


ついに目的の扉を見つけた。

白い扉に金のドアノッカーに金のノブ。


「うん、間違いないわね。さて、見知らぬ夫に御挨拶でもしようかな」


私は意気揚々とドアノッカーを掴むと、勢いよくノックした――

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