↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「もう、うんざりだ」と言われたので、出ていきますね  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/74

第41話 これが、レーズンです!

――早朝五時。


夜明けの太陽とともに、目が覚める。

すっかり習慣になっていた。


「う~ん……今日もすがすがしい朝ね」


ベッドから起き上がり、私は大きく伸びをする。


「フフフ……ついに今日は、楽しみにしていたあの日だわ!」


室内履きに足を通すと、いつものメイド服に着替えて階下へと降りて行った――



****



「あ、おはようございます、シーナ様!」


庭に出てみると、そこには既にジャックの姿があった。


「おはよう、ジャック。今朝は随分早いのね?」


「ええ、それはもう! 待ちに待った、あの日がやってきたのですから!」


庭先に並んだ樽の上。

その蓋に置かれたザルの中には、水分が抜けてしっとりと仕上がったレーズン。

まるで宝石のように黒く輝いている。


「仕込みから一週間……ついに完成ね。さっそく食べてみましょうか!」


「はいっ!」


私たちはザルからレーズンを一つずつ摘まんで、口に放り込み……。


「「美味し~っ……!!」」


思わず、二人揃って顔がほころぶ。


「な、何ですか……!? この甘さは! あの葡萄は、そのままじゃすっぱすぎて、とても食べられたものではなかったはずなのに……!」


余程の衝撃だったのか、ジャックは目を丸くして体を震わせている。


「フフフ、驚いた? 乾燥させることで、すっぱい成分が水分と一緒に抜けて、甘みがギュッと凝縮されるのよ」


「なるほど……! だから、こんなに濃厚な甘さになるのですね!」


「そうよ。でも、今日はこれだけで終わりじゃないわよ?」


「はいっ! あれを作るんですよね?」


「そうよ、ジャック。朝から大忙しになるから、手伝いよろしくね!」


「任せてください、おまかせを!」


ジャックは頼もしい笑顔で大きく頷いた――



****



――そして正午。


屋敷の井戸を囲むように、サンドリー村の村民たちが続々と集まってきた。

昨日、私が手書きの告知メモを一件一件配って回った成果だ。


「皆様! 本日はお忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます!」


私は集まった村人たちを笑顔で見渡した。


「シーナ様、今日は一体どのようなご用件で我らを呼ばれたのですかな?」


村長さんが代表して尋ねてくる。


「はい! 皆様に、嬉しいお知らせがあります。実はこの度、サンドリー村でたくさん栽培されているあの『すっぱい葡萄』を、新しく生まれ変わらせました! ジャック、お願い!」


背後に控えるジャックに声をかける。


「はいっ、シーナ様!」


レーズンがたっぷり入った器を持ってジャックが進み出ると、列の端にいた男性に手渡した。


「わぁ……これ、なんだ?」


「初めて見るぞ……」


「真っ黒な粒だな……」


周囲の村人たちが興味津々で覗き込む。


「まずは皆様、味見をしてみてくださいね。一粒取ったら、隣の人にどんどん回してくださいな~」


私も反対側から、別のレーズンの入った皿を手渡す。


「どうぞ、食べてみてください」


「は、はい……」


村人の女性が一粒摘まんで、恐る恐る口に入れ――


「……っ! 美味しい……! 何これ、なんて甘いの!?」


パッと彼女の目が輝いた。


「私にもちょうだい!」


「僕も! 僕も!」


レーズンの皿は次から次へと村民たちの間に回され、あっという間に空っぽになってしまった。


「みなさーん、レーズンのお味はいかがでしたか~!?」


皿を回収しながら声をかけると、あちこちから手が挙がる。


「甘くて美味しかったー!」


「あんなの初めて食べたぞ!」


「もっと食べたかった~!」


大盛り上がりの村人たちを見て、私はふふんと胸を張る。


「ふふ、それだけじゃありませんよ~。実はこのレーズンをたっぷり練り込んで、今朝から大急ぎで焼いた自慢のパンがあるんです! その名も『レーズンパン』! 皆様にぜひ食べていただきたくて、朝からジャックと一緒に大量に用意しちゃいました!」


次にジャックが、焼き立てのパンが山盛りに乗ったワゴンを押しながらやってくる。香ばしい小麦と甘い香りが周囲にフワッと広がった。


「みなさーん! では一列に並んでくださいね、ちゃんと全員分ありますから!」


私の呼びかけに、村人たちは我先にと言わんばかりに嬉しそうに整列する。


「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」


笑顔で声をかけるジャック。


「おいしーい……!」


「レーズンがすごく甘くて、パン生地もふっくらだ……!」


「何もつけなくても、これだけでご馳走だわ……!」


井戸を囲みながら、次々と美味しそうにパンを頬張る村人たち。


「シーナ様……皆さん、本当にものすごく喜んでくれていますね」


私の隣に立つジャックが、自分のことのように嬉しそうに囁く。


「ええ、そうね」


でも、ここからが本番なんだから。


「……さて、皆そろそろ食べ終えた頃ね」


村人たちの手がパンの最後の一口を口に運び終えたのを確認し、私はコホンと小さく咳払いをした。


「皆さん、レーズンパンはいかがでしたでしょうか?」


村人たちを見渡す。


「最高でした!」


「こんな美味しいパン、生まれて初めて食べたよ!」


「毎日でも食べたいくらいだ!」


大絶賛の嵐に包まれる中、村長さんの娘であるアナさんが代表して尋ねてきた。


「あの、シーナ様……このレーズンというものは、私たちにも簡単に作れるものなのですか?」


(ついに、その質問が来たわね……!)


「フッフッフ……よくぞ聞いてくださいました! はい、このレーズン作りはとっても簡単です! ですから、皆様にその技術をすべて伝授いたします。そして、このサンドリー村の新しい特産品として、一緒に大量生産して売り出していきましょう!」


私が大きく両手を広げて宣言すると、村人たちは「特産品!?」「私たちが作れるのか!?」とどよめいた。


「もちろんです! 私が経営者となって、皆様にきちんと対価としての賃金をお支払いします。売り上げが伸びれば、もちろん賃金もどんどん値上げしていきますからね!」


村民たちを働き手として雇用し、収益をしっかりと分配する。


これこそが、私の一大村おこし計画の第一歩なのだから――!

面白いと感じたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマークをいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
村のみなさん、レーズンに大喜びされてるけど、『たくさん栽培』ってことは何か用途があるのですよね……? ワインとか葡萄酒とかビネガーとか……
レーズン…パン、ラム酒漬け、バター… 作ったことはあるけど、レーズンバンもラムレーズンも レーズンバターも好きじゃない罠。 レーズン酵母起こすのに買ったけど余ったと言う…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。