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「もう、うんざりだ」と言われたので、出ていきますね  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第39話 私はハーブセラピスト?

私は炊事場に置かれたテーブルで、帳面に洗濯機の設計図を書いていた。


「あれ? シーナ様、こんなところで何をされているのですか?」


ひょっこり現れたジャックが首をかしげる。


「今ね、洗濯機の設計図を書いてるのよ」


私は顔を上げずに返事をした。


「洗濯機……? 何ですか、それは?」


「うーん、洗濯を簡単、便利にできる機械……かな? ほら、見て。これが洗濯機の設計図よ」


帳面をジャックに見せた。

そこには足場の上に乗った蓋つきの大きな樽の絵が描かれている。


「この蓋の真ん中についてるレバーを、クルクル回すの。そうすると洗濯物がグルグル回って汚れを落としてくれるのよ」


「へぇ……! これを回すだけで、洗濯ができるんですね?」


「うん、そういうこと。板の上で一生懸命こすり洗いするより、ずっと楽になるわ」


「シーナ様は本当に、何でもご存知なんですね……」


ジャックが感心したように、じっと絵を覗き込む。

細かい説明は省いたけど……まぁ納得してくれたみたいで良かった。


「ふふん、まぁね~!」


自分でもこの知識がどこから来るのか、不思議でならなかった。


でも……まぁ、いいか。

細かいことは気にしない。

何しろ、他にやらなければいけないことが山盛りなのだから。


「ところでジャック、頼んでおいた葡萄はどうしたのかしら?」


「はい、全部荷馬車から下ろして、屋敷の前に置いてありますよ。それと、物置小屋にあったワイン樽も十個出しておきました!」


「ありがとう、重かったでしょう?」


実はこの屋敷の隣には物置小屋があって、使われていない空のワイン樽がたくさん収められていたのだ。


「いいえ、大したことありませんよ。何しろ、転がして運べばいいだけですから!」


ジャックは少し照れくさそうに笑った。


「それじゃあ、早速作業を始めましょう!」


私は椅子から立ち上がった――



****


――それから約一時間後。



「……ふぅ。こんなものかしら」


軒下に並んだ十個のワイン樽を見渡す。

それぞれの樽の蓋の上には、ザルに乗せられたたっぷりの葡萄が置かれていた。


「こうしてみると、壮観ですねぇ。でも、シーナ様? どうして葡萄を灰汁(あく)に漬けたのです? そのまま干してはいけなかったのですか? 確かレーズンは、葡萄を天日干しにすれば作れるって仰っていましたが……」


ジャックが首をかしげる。


「ふふん、良い質問ね。葡萄を灰汁に漬けるとね、早く乾燥させることができるのよ。葡萄の皮って、実は水を弾く薄い膜で覆われているから、そのままではなかなか水分が抜けにくいのよね」


「え?  そうだったのですか?」


「でも、灰汁に浸けると葡萄の膜に目に見えない小さな傷がつくの。そこから中の水分がスーッと抜けていくってわけ」


「す、すごい……!  天才ですか!? シーナ様は!」


大袈裟な程に驚くジャック。


「いやねぇ~天才だなんて。こんなの一般常識 ……って、あれ?」


どうして私、こんなこと知っているんだろう……?

自分でも不思議だったけれど、身体が勝手にやり方を覚えていたというか……。


「あっ! あの男は……っ!」


突然の叫び声に、私は現実に引き戻された。


「どうしたの?」


「今、あの木の陰で俺たちをじっと見つめていたマント男がいたんですよ!」


ジャックがビシッと庭の巨木を指さす。


「誰もいないみたいだけど……?」


「ええ!  でも、俺と一瞬目があったら慌てた様子で逃げて行ったんです! もしかしたら不届き者かもしれません! 見つけ出して捕らえましょうか!?」


なぜか、やけに気合が入っている。


「アハハハ……別にいいわよ。もしかして、私たちがレーズンを作っている作業が珍しくて見に来ていただけかもしれないじゃない」


私はジャックの肩をポンポンと軽く叩いた。


「そ、そうでしょうか……?」


また顔が赤く染まる。


「考えすぎだってば! さ、それじゃ最後の仕上げをしましょう」


私は足元に置いてあったハーブの束を拾い上げると、ザルの中の葡萄の脇に丁寧に置いていく。

それは、荒れ果てた庭に偶然自生していたハーブだった。


「こうすると、虫よけにもなるのよ」


「すごい……そんなことまでご存知なんですね」


「もちろんよ! だって私はハーブセラピスト――」


ん? ハーブセラピスト……?


一体それって、なんだろう……? 

一瞬何か思いだした気がする。


「そうなのですね! よく分かりませんけど、シーナ様はハーブセラピストなのですね!」


興奮した様子で私を見つめてくるジャック。


「そうそう。 そういうことよ。そろそろお昼だし、中に入りましょうか」


「はい、シーナ様!」


ジャックは嬉しそうに返事をすると、先に屋敷の中へと入っていった。


(フフ。まるで子犬みたいね)


私もその後に続き――ふと、背後に視線を感じて振り返った。

けれど、そこにはどこにも人影はない。


(おかしいな……? 以前も、あの視線にどこか覚えがあるのだけれど……)


まぁ、いいか。


細かいことを気にしていたらキリがない。


だって、まだ他にもやらなければいけないことが山ほどあるのだから――




****


二人が屋敷に入って行くと、俺は木の陰から出てきた。


「誰なんだ……あの男は……?」


俺はフードをはぎ取った――


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― 新着の感想 ―
え、なにこれ面白い。
誰やねん
お前が誰だよ って言われちゃうぞw 顔憶えてくれてるといいね?
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