第27話 スーパー家政婦って、何のことだっけ?
コケコッコー!
鶏のけたたましい鳴き声で、強制的に起こされた。
「う~ん……まだ眠いのにぃ……」
ゴシゴシ目をこすりながらムクリと起きると、隅っこで寝ていたはずのジャックの姿が無い。
「あれ? ジャック?」
おかしいなぁ?
どこに行ったのだろう?
ポケットに忍ばせておいた懐中時計を確認してみる。
「え~まだ五時過ぎじゃない」
荷台の中を這って歩き、外を覗き込んでみる。
「わぁ~」
素晴らしい田舎の風景が広がっていた。
木々に囲まれた家々。
村の真ん中に流れる小川は太陽の光を反射してキラキラ輝いている。
小川の先には風車がカラカラと音を立てて回っていた。
「すごい! 絶景だわ!」
荷台から降りたとき。
「シーナ様、おはようございます」
背後から声をかけられて振り向く。
「あ、おはよう、ジャック! どこへ行ってたの?」
「はい、屋敷の中に使用したクッションを置きに行ってました」
答えるジャックの目の下には濃いクマが出来ていた。
心なしか疲れているようにも見えるし。
「ねぇ、ジャック。もしかして眠れなかったの?」
私はぐっすり眠れたけどね。
「アハハハハ......! な、何をおっしゃっているんです。よ~く眠れたに決まってるじゃありませんかぁ!」
笑いながら全否定されてしまった。
「そう? ならいいのだけど」
「ところでシーナ様、どちらへ行こうとしていたのですか?」
「うん、小川へ行ってみようかと思ったの」
岸辺を指さす。
「あ、小川ですね。とても奇麗でしたよ。魚も泳いでいましたし」
「え? もう見に行ってたの? 一体何時から起きてたの?」
「え? あ? ええと……五時です!」
「そうなの? 早起き、偉いわねぇ。それじゃ、ちょっと行ってくるわ」
小川へ向かって歩き出すとジャックがついてきた。
「どうしたの?」
「い、いえ。シーナ様が心配なので」
「アハハハ。心配症ねぇ。ここはこんなに平和な村なのに。そんなんじゃ、まるで……」
「ま、まるで?」
ジャックの顔が赤くなる。
「付き人みたいじゃない」
「つ、付き人……」
今度は何故か落胆した表情に変わった。
「まぁいいわ。一緒に行きましょう」
「はい」
私はジャックを連れて小川へ向かった――
****
サラサラサラサラ……
美しい川のせせらぎが聞こえている。
「わぁ~奇麗な小川ねぇ」
「はい、そうですね」
岸辺にしゃがむと、ジャックも隣にしゃがんできた。
小川の幅は大体30㎝くらいで、広い場所は1mくらい?
水底がはっきり見えるから、深さはせいぜい20㎝にも満たないかも。
チャプン
試しに小川に右手を入れてみた。
「わぁ! 冷たい!」
でも今の季節は暑くもなく、寒くもない。
ちょうどよい季節……あれ?
「ねぇ、ジャック」
隣にしゃがむジャックを振り返る。
「ど、どうかしましたか?」
「変なこと聞くけど……今、何月だっけ?」
「え? 今ですか? 四月ですよ?」
「そう、四月ね。ありがとう」
「い、いえ。それほどでも」
答えると顔を赤らめながら俯いてしまう。
フフ、やっぱりジャックはいい人だ。
あの屋敷の人々なら、「は? 今何月かも分からないのですか?」と鼻で笑われていたかもしれない。
「あ!」
キラキラと反射する川の中に魚を発見した。
「魚も泳いでいるわね……美味しそう......」
昨夜あんなに沢山御馳走になったのに、もう小腹が空いてきていた。
「お任せください! シーナ様!」
突然ジャックが力強く立ち上がった。
「ど、どうしたの?」
「実は、シーナ様が眠っている間に網で魚を沢山掬い上げていたのです。今、ちょうど魚を焼こうとしていたところだったのです!」
胸をそらせる。
「え? 本当!?」
焼き魚……あぁ、何て素敵な響きなのだろう。
「今、魚を焼いてくるのでシーナ様はそれまで自由にしていてください。魚を焼くなら、このジャックにどうぞお任せください!」
少々大袈裟な言い回しに聞こえるけれど……。
「本当? なら私、屋敷の中を見てくるわ」
「はい!」
立ち上がると、私は早速腕まくりをしながら屋敷へ向かった。
「フフフ……腕が鳴るわ。何しろ私は掃除が得意なスーパー家政婦……」
口に仕掛けてウン? となる。
(あれ? スーパー家政婦って何のこと?)
今しがた何かが頭の中を通り過ぎていったような……?
「まぁ、気のせいよね」
自分に言い聞かせると、我が家へと向かった――




