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「もう、うんざりだ」と言われたので、出ていきますね  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第25話 新婚夫婦と間違われました

「ぎゃああああっ!!」


背後でジャックの悲鳴が響き渡る。


「どうしたの!?」


慌てて振り返ると、ジャックの顔に蜘蛛の巣がベッタリと張り付いていた。


「ひゃあああ! 蜘蛛! 蜘蛛の巣が!」


必死になって両手で蜘蛛の巣を取ろうともがいている。


「落ち着いて、ジャック!」


足元に落ちていた手頃な木の枝を拾い上げた。


「今取ってあげるからじっとしていて」


「は、はい……」


ギュッと目を閉じて返事をするジャック。

彼の頭や顔部分に張り付いていた蜘蛛の巣を、枝を使って丁寧に取ってあげた。


「はい、もう大丈夫よ」


「す、すみません……大きな声を出してしまって……自分が情けないです」


気の毒なくらい落ち込んでいる。


「まぁまぁ。そんなこと気にしなくていいから。私だっていきなり蜘蛛の巣が張り付いてきたら、悲鳴を上げていたかもしれないし」


「シーナ様……」


よほど怖かったのか、うるんだ瞳で見つめてくるジャック。


「もう蜘蛛の巣はないみたいだし、安心でしょ」


「は、はい」


その時。


「大丈夫ですか!」


突然声が聞こえて振り返ると、夫婦と思しき中年男女が夜更けにもかかわらず駆け寄ってきた。

もしかしてご近所さんかもしれない。


(近所付き合いは最初が肝心だものね。向こう三軒両隣って言うくらいだし)


私は居住まいを正すと会釈した。


「お騒がせして申し訳ございませんでした。つい先ほど、この家に越してきたのですけど蜘蛛の巣が顔に引っかかってしまったので」


謝罪の言葉を述べると、ジャックも「申し訳ございません!」と頭を下げる。


「何だ、そうだったのか」


「突然悲鳴が聞こえて何事かと思いましたよ」


男性と女性がホッとした表情を浮かべた。


「ところで越してきたと言ってたけど、まさかここに?」


男性が屋敷を指さす。


「はい、そうです」


「確かここは領主様の持ち物だったと聞いているけど……?」


女性が首を傾げる。


「はい。その領主から、私がこの屋敷を直々に受け取ったのです」


ま、本当は離婚の財産分与として無理やり要求したのだけどね。


「え? それじゃ……」


「領主様の関係者なの!?」


「はい、関係者です」


まぁ元妻だけど、そこはややこしくなりそうだから黙っていよう。


「なるほど、そうだったのですか。もしかして、夫婦でこの屋敷の管理を任されたのですかな?」


「「え!?」」


男性の質問に、私とジャックが同時に声をあげる。


「お若い夫婦ねぇ~。新婚さんかしら?」


「いえいえ、この人は御者です。私をここまで連れてきてくれた恩人ですよ」


チラリとジャックを見ると、月夜でもはっきり分かるくらい茫然とした顔をしている。


(それは驚くよねぇ、そんなこと言われたら)


「何だ、そうだったのか。早とちりして、申し訳ないです」


「すみませんでした」


二人はペコペコと謝ってくる。

やはりこの村は良い人たちばかりだ。


脳裏に、屋敷の使用人たちと両親。

ついでに元夫の顔が思い浮かぶ。


でも執事さんは比較的まともだったかな。


「私はシーナと申します。お隣同士、これからどうぞよろしくお願いします!」


私は改めて二人に挨拶をした――

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