表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「もう、うんざりだ」と言われたので、出ていきますね  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/33

第21話 今日から私、シーナです

 ガラガラガラガラ……


荷馬車はどこまでも続く一本道を進んでいた。


やがて空が茜色に染まりかけた頃。

馬車道の両側に畑が見えてきた。


「わぁ~畑だわ!」


「そろそろ目的の集落に到着する頃だと思います。この畑は集落の人々が耕しているのでしょうね」


青年御者――ジャックさんが教えてくれた。


「ふ~ん、なるほどねぇ」


早く到着してくれないかな。

朝からほぼ荷馬車に乗っていたから、いい加減お尻が痛くなってきてたんだよね~。


あ、でも旅先で食べた食事は美味しかったけど。


途中幾つかの町を経由した際に、私とジャックさんは食堂で美味しい肉料理を頂いていた。


あのお肉、美味しかったな~。

メイド姿で食堂に入ったときは従業員に間違われてしまったけど。


少しの間料理の余韻に浸っていた時。


「おや、あれは……」


「何? どうかしたの?」


ジャックさんの言葉に荷馬車から身を乗り出す。


「ほら、奥様。あれをご覧ください」


指さした先には細長い木々が然と並んでいる。


「あ! あれは葡萄畑じゃない!」


「え? あれが葡萄畑なのですか? 初めて見ました。奥様、よくご存知でしたね。高貴な方なのに」


「ん? 言われてみれば確かに……」


何故私はあれが葡萄畑だと分かったのだろう?


でも、まぁいいか。

それよりももっと大事なことがある。


「あの葡萄畑も私がこれから暮らすことになる領地で、育てているってことよね?

楽しみだわ~葡萄が育てば、食べ放題じゃない」


「食べるんですか? 葡萄を?」


「当然、食べるに決まってるじゃない」


「そうですか、食べるのですか……」


不思議そうに首を傾げるジャックさん。

もしかして……。


「ねぇ。この世界では葡萄を食べる文化はないの?」


「え? この世界って……? どういう意味でしょう?」


「意味……確かにどういう意味かな?」


自分でも何を言ってるか分からない。

もしかしてこれは気持ちが高揚しているからかもしれない。


うん、そういうことにしておこう。


「あ、奥様。集落が見えてきましたよ!」


「え!? 本当!」


「はい!」


地平線の先に、家々が建っているのが見えてきた。


「ついに、到着したのね……」


「はい……感無量です」


ジャックさんの声もどこか興奮している。


「なら、あの集落に向けて、レッツゴーよ!」


「はい、レッツゴーです!」


ピシリとジャックさんは手綱を鳴らし、馬は小走りで進み始めた――



****


ガラガラガラガラ……


荷馬車が集落に入り、村の様子が分かってきた。


建物は石造りで屋根は木の板。


夕食時なのか、煙突からは煙が立ち上っている。


「う~ん……村人がいませんねぇ……」


ジャックさんが周囲をキョロキョロ見渡している。


「そうね、でも勝手に木造三階建て住宅に住むわけにいかないし」


一応土地家屋の権利書はあるけど……。


「そうだ、いいことを思いついたわ!」


「いいことって何ですか?」


「とりあえず一軒一軒しらみつぶしに訪ねるのよ! それでこの村の責任者を捜す。どう?」


「う~ん……気乗りはしませんが、それしか方法はないかもしれませんね……」


ジャックさんが馬車を止めたとき。


「あ! 荷馬車だ!」


突然子供の声がすぐ後ろで聞こえた。


「「え??」」


二人で振り向くと、十歳前後と思しき少年が立っている。


そこで私は警戒されないように満面の笑顔で話しかけた。


「こんにちは……いえ、こんばんは。この村の子かしら?」


「うん、そうだよ」


麻のシャツに、胸当てズボンを履いた少年が頷く。


「あのね。実は私、今日からこの村に住むことになったの。ここで一番偉い人の家を知ってるかしら? 御挨拶したいのよ」


「……」


ジャックさんは息をひそめて私と少年のやり取りを見守っている。


「うん、知ってるよ。僕のおじいちゃん、村長さんだから」


「まぁ! 本当?」


おおっ! なんてラッキーな!


「それじゃ、早速案内してくれるかしら?」


「うん、いいよ。ところでお姉ちゃん……」


「何?」


警戒させないよう、笑顔で返事をする。


「素敵な服を着てるね」


「ありがとう。これはね、メイド服っていうの」


「お姉ちゃん、メイドなの?」


「ううん、違うわよ」


私はメイドではないし、もう侯爵夫人でもない……。


あれ? 今の私の立場、何だろう?

でも分かってることは……。


「お姉ちゃん? どうしたの?」


「私はね、カプシーナ……ううん、シーナって言うの。よろしくね?」


私の名前はカプシーナ。

でもここから新しく人生をやり直す。


今日からは、シーナとして生きていこう――!!

面白いと感じたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマークをいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ