↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/35

024 馬上嬢 VS 巨大竜

 まさに、ロックオンされた柔曽(じゅうぞ)。

「クうッ」

 大ピンチ。こんな至近距離で火を吐かれたら、おしまいである。


 ヒヒィーンッ!


 またがっているペガサスも、怯(おび)えて、滞空したまま、動きが固くなる。

 無理もあるまい。相手は、体が何倍も大きなドラゴンなのだ。その気になれば、ドラゴンの片側の翼一枚だけで、簡単にペガサスを叩き落とせるはずだ。


 グワッと、ドラゴンが口をあける。鋭い歯が並ぶ。歯、一本だけで、一メートルはあろう。

 のどの奥が発光する。大き過ぎて、吸い込まれそうだ。

(うわ、やべー)

 よけ切れない。

(……ゲームオーバーだな。裏技もないし。僕も、ここまでか)

 柔曽は、覚悟を決めかけた。


 ――ヒュン、ブスッ。


 だが、不意に。

 下から、棒のような細い光が飛来して、ドラゴンの顎(あご)に突き刺さる。


 ガァッ?


 困惑し、うるさそうに首を振るドラゴン。

 それは、光の矢であった。

「何ィ?」

 下を見ると、遠くに地面。

 坂道――ではない。滞空している自分が傾いているので、大地が斜めに見えるのだ。

 馬上から、弓を構える者がいた。つがえた矢だけが、光り輝いている。パーティー仲間だ。女の子。

 その少女は、走る馬から、次の矢を撃ちかけてきた。光の矢、二発目。

 ヒュン。またも、ドラゴンの口もとに刺さる。


 ギャウ! グアッ!


 痛がって、ドラゴンが身をよじる。

 ドラゴンの巨体からすれば、こんな矢ごとき、縫い針くらいの小ささだ。

 しかし、ただの矢ではない。魔法で、高温の熱線を矢状に固めた物なのだ。殺傷能力は高い。


「おお、サリーちゃん、いまぞ!」

 笑った柔曽が、叫んで、

「ハイやっ!」

 むちをペガサスに当てて、高度を上げさせる。

 左右、ぶ厚い羽をうねらせ、波打(なみう)たせて、柔曽が乗ったペガサスは、ドラゴンの背後へ回り込む。光る羽毛が、白く、周囲へ舞い散った。

 柔曽が、剣を振りかざす。

「食らえッ! くたばりやがれ!」

 パーティー仲間「サリー」の援護射撃によって、数秒の隙(すき)が出来た。

 そこを突いて、ドラゴンの首後ろへ、力いっぱい切りつける。


 グファア! ムガッ、ギャウォーグッ!


 最初は低音、やがて高音の、けたたましい絶叫。

 それと共に、ドラゴンが攻撃をやめる。……いや、飛ぶのもやめる。

 ――空気が抜けた、バルーンのように。

 糸が切れた、操り人形のように。

 金色の巨体は、だらしなく、無残に揺れて、縮んで、フニャフニャと落下してゆく。翼も、首も、ペローンと丸まっている。

 地面に激突した瞬間、お菓子のビスケットか、ガレットみたいな脆(もろ)さで、ドラゴンは粉々になってしまった。


「ィよォし!」

 剣を腰に収(おさ)めてから、空中で、柔曽はガッツポーズ。

 このゲーム世界では、ドラゴンは首の真後ろが弱点なのである。

「お疲れさん。じゃあ、ゆっくり下りようぜ」

 またがったペガサスに話しかけ、たてがみを撫(な)でてやると、羽ばたく速度が遅くなる。


 バサバサッ、バサッ、バサッ、バサッ……バサッ……


 徐々に、ペガサスは高度を下げ、荒野へ着地した。

「ッとォ!」

 鞍(くら)を通して、尻に衝撃。

 再び、馬体は、四つ足で大地を駆ける。

 と同時に、背中に生えた羽根が、ブルンと引っ込む。ノーマルな馬へ戻ったのだ。


 視界の左右を、まばらに生えた枯(か)れ木が、後ろへ飛び去ってゆく。

 顔面にぶつかる風圧が、耳元で、うなっている。


 そこへ――。


 ド、ド、ド、ド、ド、


 背後から、蹄(ひづめ)の音が追いついてくる。

 左へ振り向けば、さっき、強敵ドラゴンに弓矢を射ってくれた少女だ。

 高い声で、少女が叫ぶ。

「――お見事、ゾッド!」

 この「ゾッド」は、ゲーム内での柔曽のハンドルネームである。

 柔曽も、叫び返す。

「何言ってんだ! サリーちゃんの援護のおかげだぜィ! ありがとよ」

 柔曽が前へ向き直るのと、ほぼ同時に、サリーが追いついて、横に並んだ。白い右肩が見える。

 並走する騎馬。

 サリーの長い金髪が、風になびいている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。