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023 ゲーマー時代

 馬上から眺める荒野は、地平線への緑色に、赤が混ざり始めていた。草と光。

 後方へ飛ぶ景色。迫る夕暮れ。


「はいやッ!」

 若き日の柔曽(じゅうぞ)が、馬にむちを入れ、周囲をうかがう。

 服装は、西洋風のよろい。かぶとは着けておらず、首まわりにマフラー。

 遠くには、灰色の、とがった山脈が並ぶ。


 馬群は、小規模である。

 同じ方向へと走る騎馬が、十二ほど。共に冒険するパーティーの、戦友たちであった。

(ヤバいぜェ……)

 上空に出現した、金色のドラゴン。巨大。凶暴そうである。


 ここは、オンラインゲームの世界。

 ヘッドマウントディスプレイと、全身スーツとを装着する。リアルな没入感。


 ドラゴンが地上へ炎を吐き、騎馬たちのそばで、火柱が上がる。ビル三階ほどの高さ。

「うおッ!」

「キャあ!」

 柔曽も含め、皆は、またがる馬をジグザグに走らせて、かわす。

 黒煙が視界をさえぎり、熱風が髪の毛をチリチリ焼く。

 若い頃の柔曽だ。短いが、まだ、髪は生えている。なお、柔曽がスキンヘッドになったのは、その後、四十代後半からである。

 柔曽は、現実世界とゲーム世界とで、特に外見を変えていないのだ。


 ドラゴンが口から撃つ火炎は、何と、連射が可能。

(てめえ、ラスボスでもねェのに、そのスペック、反則だろォ)

 よけても、すぐに、狙いを修正して、二発目、三発目が降ってくる。

 結果――

「グアっ!」

 一人、

「ひイっ!」

 また一人。


 ……馬もろとも、火柱に巻き込まれる者が続出。

 こうなっては、助からない。


 バリバリィッ! ザァッ! ザザーッ!


 「致命傷」を受けた者は、テレビ、パソコン画面のノイズのような、砂ぼこり状の乱れた光に包まれ、消えてゆく。

 いわゆるゲームオーバーである。

 このオンラインゲームからは、強制退場させられる。今回は、ここまでということだ。


 あっという間に、仲間が減ってゆく。このままでは、柔曽も危ない。

「くそァ!」

 柔曽が、馬の首の後ろを、軽く三回たたく。

 すると、その合図に応え、馬の背がブルッと震えて、両側から、肉厚の白い羽が生える。白く光る羽毛が、数枚飛んで、風に散って、後ろへ消える。

 柔曽が乗っている馬は、実はペガサスだったのだ。長いゲーム歴で、苦労して手に入れた愛馬。


 ペガサスが飛び立つ。

 離れた地面が、下に遠ざかる。

 蹄(ひづめ)に付着していた土や小石が、取れて、はるか下へと落ちてゆく。

 ドラゴンから逃げるのは無理そうだ。空中戦を挑(いど)むしかあるまい。

 至近距離に、ドラゴンの巨体。滞空。眼前に迫る。

 体のサイズは、ぱっと見、アフリカ象が二頭分ぐらい。それプラス、翼と尻尾がある。まるで小山だ。


(まともにやり合ったら、とても勝てねェやな)

 空中で、腰の剣を抜く柔曽。

 ドラゴンと目が合った。

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