020 紗良葉Surgery −2
すかさず、向こう側から、細いロボットアームが五本、伸びてくる。手術支援ロボットである。
ロボットのサイズは、大人が二人、横に並んで立った程度。形状は、縦置きの直方体に、レンズやアームをくっつけた感じだ。
AI搭載で、人間医師の動きに合わせ、自律的に手術を補佐する。
アームには、関節が三つずつあり、カクカクとよく曲がる。互いに絡まりそうなほど、立体迷路のようにすぐ近くを行き交いながら、精密な動きでオペを進める。
五本のアームには、先端に電気メス、レーザーメスなどが付いており、それぞれ別の角度から、紗良葉の皮膚にサクッと入り込み、切開してゆく。
柔曽が操るノコギリと、切る箇所を分担するので、あっという間に、病変部位が切り離される。
一方で、臓器の手術も進める。
ミイラ化は、当然、体内にも及んでおり、その境界を見極めねばならない。
残す部分は、メスで切ったところを素早く縫い合わせる。
腹の皮膚を切り裂いたら、腹筋で内側へ抑えられていた白い腸が、ブリュッとふくらんで、せり出してきた。
まるで、細長い風船だ。
(処置は、腸より、骨が先だな)
キィーン! ガリガリガリ、ゴリゴリッ!
硬いものを、強引に切る音。
医療ノコギリで、紗良葉の骨盤を一部切除、左脚の骨も切ってゆく。
肉体の切断が終わった瞬間、ロボットアームがそれらを回収する。
干からびて、折れ線みたいに曲がった、極細の左脚……。それから、左腕の先、左わき腹の辺りである。
切除部分はかなりの分量であり、大きめのトレイやバットを用意しておいたが、そこへドサッ、ドサッと下ろされると、あふれ、はみ出しそうであった。
紫色に変色して乾燥した、人体の一部。肉塊が、骨が、うず高く、トレイ、バットに乗せられている。手術後には、病理廃棄物となる。
ミイラ化した部分を、全て切断された紗良葉。
腹部の、左の側面は、えぐり取られて、筋肉や内臓が見えている。
左腕は、肘よりも短い。左の脚に至っては、つけ根すらも残っていない。断面に、丸く、骨が見えている。
手術台は血まみれだ。
見た目も衝撃的だが、当然、それ以上に、紗良葉の命も危険な状態である。
ノコギリを置いた柔曽は、メス、縫合用の針、糸に持ちかえて、まずは、飛び出た腸を紗良葉の体内へ戻し、はめ込む。
「で、お次は、サイボーグだ、な」
縫合の続きをロボットアームに任せつつ、手術室内の別の場所から、人工の左脚や左手を持ってくる。主に合金。全体的に、銀色の輝きを放っている。
それは……この日のために、柔曽が短期集中で製作した、紗良葉の新たな手足だ。
(――の前に、新たな神経、血管、筋肉を補わなきゃいかんな)
それらも、人工の物である。紗良葉自身の細胞を培養したり、他の動物、化学繊維、シリコーンなどを使ったりしている。
切除した生身の分を、それらに置き換えて、継ぎ足すわけだ。言わば、「つなぎ」である。
そこへ、改めて、ギアやプレートを挟み、組み込んだ上で、最後に、義手や義足を取り付ける――。
途中、数時間や半日の休憩を挟みながら、この大手術の全行程は、一週間にも及んだ。




