26 婚約式 ウィル目線
正直女だと思って甘く見ていた。
今、目の前で俺とザーラが戦っている相手へ感じた言葉だ。
この女の魔力はサンと同じか、もしかしたらそれ以上かも知れない・・
俺とザーラの魔力が弱い訳では無く、女が強いのだ。現に俺たち二人は女の魔力に押されていて、ザーラにしては珍しく肩で息をしている。
当然俺も・・
「ウィル、ヤバいわね。私たち二人では手に負えない相手かも知れないわ」
「ああ同感だ。だが引く訳にはいかない、せめてサンが戻ってくるまではな」
女から目を離さずにザーラと会話をするが、腹立たしい事に女の息は乱れていない。
それどころか笑う余裕すらある。
前に会った時はこの女からこれ程の魔力は感じなかった気がするのに、今目の前で笑っている女から感じる魔力は別人のようだ。
「あの女、魔力増強剤を飲んでいるのかも知れないわ。そうでなければサンに匹敵するほどの魔力を持つ者は、旦那様を除いてはいないはずだわ」
「俺も今そう思っていたところ・・危ない!」
ザーラと話している間にも女からの攻撃は止まらない。女は風を操り攻撃してくるため、避けるのが精一杯だ。
俺はまだ良い、身体強化をすれば風に耐えられるし攻撃も交わせる。が、ザーラの身体は軽いため攻撃を受けてしまうとダメージも大きい。
だから余計に消耗も早い・・
「ザーラ大丈夫か!」
現に今も女の攻撃を受けてしまい壁へ叩き付けられてしまった。
「だいじょうぶ・・、ウィルも・・気をつけて」
女へ攻撃している間ザーラへ声を掛けると、何とか返事が返ってきた。
だがそんな俺たちを他所に女の意識は女神像へと向けられる。
「公子様はまだかしら?んー、違うか!私が迎えに行かなきゃダメなのね。あなた達では相手にならないもの」
「ふざけるな!」
女がサンたちの方へ歩き始めたため、俺は全力で魔力をぶつけた。
が・・
「貴方の力はこの程度?つまらないわ。ああまだ本気では無いのね!」
まるで子供を相手にしているかのような発言に腹が立つ。
これでも次期公爵であるサンの筆頭護衛だ。
子供の頃から両親に言われ、ずっとサンのために厳しい訓練にも耐えひたすら鍛えてきた。
そんな俺に対してもこの女は つまらない。 の一言で片付ける。
「ふざけるな!!」
「ダメ!!」
女の言葉に怒りで力任せに突撃すれば 笑った? 女の顔が、口元が弧を描いていた。
瞬間、俺の足元は掬われてしまい地面へと叩き付けられてしまった。
「うぐっっっ!!」
と同時に全身へもの凄い力で圧をかけられた。
全身が、内臓が潰される感覚に意識が飛びそうだ・・
「ウィル!!」
「ダメ・・だ、ザーラ・・くるな・・」
これは罠だ!
そう言葉にしようにも圧がかけられ身動きが取れない。
ザーラは傷だらけの身体で立ち上がると、それに気付いた女は少し力を弱めた。
「ふぅん、まだ起き上がれるんだ。止めた方が良いよ、貴女じゃ私に勝てないから」
「・・・」
明らかにザーラを挑発している。
その事はザーラも気付いているだろう、まだ動こうとはしていない。
そんなザーラに女は更に挑発する。
「まぁでも、後ろの女も虫の息だから一緒に逝かせてあげるわ!だって公子の相手はあの女じゃ務まらないでしょ?何の力も無いんだもの」
「フローラ様を貶すな!!」
挑発だと分かっているのにフローラ様の事を言われたザーラは挑発に乗る。
「ザーラやめろ・・」
俺の言葉は届かないのか、ザーラは女へ言葉を投げつける。
「お前は我が一門なのに番様の存在の意味を知らないのか!」
ザーラの言葉に女はわざとらしく頭を横に倒し、知らなぁい と笑いながら答えた。
そして
「私孤児だし、この魔力のおかげで男爵夫妻に引き取られたんだもん」
そう言いながらザーラへ一歩、また一歩近づく。
「男爵夫妻はこう言ったわ。力があれば公爵夫人になれると。力こそが公爵夫人への近道だと」
攻撃を受け倒れたザーラを足で踏みつける。
「止めろ!!」
「うるさい!!私は今この女と話してるんだ!」
さらに圧をかけられ身動きが取れなくなる。
ザーラも攻撃を受けた後でしかも女に踏まれているせいか動けないのだろう。
女の顔を睨み付けるのが精一杯の様だ。
「私は約束したの。私が公爵夫人になったら彼女を専属侍女にすると。あんな家から引き離して幸せになってもらうんだ。それなのに番?」
誰のことを言っているのか分からないが、きっとフォンド家に関わる人だろう。
女の言葉からして想像は出来ないが何か理由があってフローラ様を攫ったのだろう。けど、許されることでは無い、
我が一門にとって、ブラッド家にとっても番の存在は大きい。番が産む子は全てが家門に繁栄をもたらすと言われており、女なら王家へ。男なら婿や娘の嫁入り先にと狙われる。
ちなみにローウッド家も何代か前の当主に番が現れ、娘はブラッド家へ嫁入りしている。
(王家には年齢の釣り合う男子がいなかった事もあるが、ブラッド家の嫡男が病弱で跡取りを残せるかのせとぎわだったと聞いたことがある)
「それにしても残念だったわ、貴女とても優秀な侍女だから私の元で働いて貰いたかったけど・・仕方ないわね」
「やめろ・・」
「貴女が慕うあの女と一緒に逝かせてあげる。もしかしたら既に逝ってるかも!!」
女はザーラの顔に自分の顔を近付けながら笑っている。
「私に感謝なさい、慕う女の側へ逝かせてあげるのだから」
そう言った後、女の手から放たれた魔力でザーラの周りが瓦礫の粉で見えなくなった・・




