25 婚約式 十ニ サディル目線2
女の攻撃をを覚悟した私はフローラを守るように身を屈めた。
出来る限りの保護魔法を掛けて。そのおかげが衝撃は免れたと思った瞬間頭上から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「サン!大丈夫か?フローラ様は?」
「サディル様ここは私たちが食い止めます!フローラ様を安全な場所へ!!」
私とフローラを守るように立つ見覚えのある二つの後ろ姿は、幼い頃から私を守る背中だった。
「ウィル、ザーラ!」
二人は目の前にいる女から目を離さず身構えていて、女から出る魔力に二人の背中が強張っているのが私でもわかる。
それ程に女の魔力は高い。
ウィルとザーラ、一対一だったら恐らく負けるだろう。が、二人ならば・・
「サン早く!旦那様の言葉を思い出せ!」
「そうですよ!私たちが闘える間にフローラ様を助けてください!!」
ザーラが話している途中で女は攻撃を仕掛けてきた。それを受け止めるだけでもザーラの身体は後ろへと押されてしまう。
「話してる余裕など無いよ!ほら!ほら!こっちこっちだ!」
女はまるで子供を相手にするように二人へ攻撃を仕掛けている。
女の攻撃を交わしながら距離を詰めるが別の角度からも攻撃が来る。だがまだ大丈夫!今この場は二人に任せよう!
私はこの場を二人に任せるとフローラを抱き上げ崩れかけた女神像の後ろへと隠れた。
フローラを下に下ろすと微かだが温もりを感じた。
目線を下げると彼女の目は閉じたままだが少し顔色が戻っていた。
「私の血か・・」
今までも私の血を混ぜた薬を身体に取り入れていたからか、少量の血でも回復したのだろう。
少しだけ顔色が戻った彼女の頬に手を充てるとピクッと瞼が動いた。
「フローラ?聞こえるかい?」
奥ではウィルとザーラが闘っている。
直ぐにでもフローラと夫婦の契りを交わし、二人の元へ行かなければ・・そう思うけれど彼女の同意無くして交わすことなど出来ない。
「フローラ、私と夫婦の契りを交わしくれるかい?」
フローラは動かない。
そんな彼女へと話しかける
「私と夫婦の契りを交わせば、君も私同様に長い人生を送る事になる・・」
「・・・」
「私たち一族とは共に生きていけるが、お義父上や友人とは早く別れが来てしまう・・」
「・・・」
声が震える。
彼女からの返事が怖い・・
でも言わなければ・・
「フローラ、私と生きてくれないか?この先の長い時間を私と共に歩んでくれないか?・・私と血の契りを・・!」
最後まで言葉にしようと思った時、私の頬に冷たい感触が・・
「フローラ・・?」
薄っすらと開いた目は私の姿を捉えていた。
「フローラ私の言葉を」
「やっと会えた・・サン?私の気持ちは、決まって・・いるわ。もうずっと・・子供のころから」
「だが良いのか?私と夫婦の契りを交わしたら・・」
フローラは私の血で少しだけ生気を取り戻したが完全では無い。
それでも彼女は私に微笑みながらこう言った。
「子供の頃の約束を・・サンが迎えに来てくれるのをずっと待っていたの・・」
「フローラ・・」
「貴方となら何処へでも一緒に行くわ。貴方と共に・・だからお願い・・」
「・・・」
フローラは涙を流しながら気持ちを伝えてくる。
そんな彼女の言葉に私も目頭が熱くなる。
「私を一人にしないで・・」
その瞬間私は彼女を抱きしめた。
強く、強く抱きしめながら彼女の唇を奪う。何度も何度も・・そしてそのまま首筋へと唇を下げる。
「フローラ・・私の愛しい人。もう離さない・・君が私から離れたくなっても、私は君を手放さない。それでも良いのかい?」
最後にもう一度だけフローラへ聞く。
夫婦の契りを交わしたら二度とフローラを手放せなくなる。
番だから?
いいや、この気持ちは番だからとかでは無い。ただ私が、私の心がフローラを求めている。
子供の頃に出会ったあの時から・・
私の言葉に彼女の笑う声が聞こえてきた。
「貴方の一番にして?貴方はもう私の一番なのだから・・」
フローラからの香りが、甘い甘い香りへと変化してくる。先程までは全く感じなかった彼女の香りが、今は私の頭を全て支配してくる。
「フローラ・・愛してる。子供の頃からずっと、君だけを愛すると誓うよ」
「ええ、私もよ・・貴方とこの女神像に誓って、二人のどちらかの命消える瞬間まで貴方の事だけを愛します」
「!!・・フローラ、今その言葉はズルい・・」
ふふっと笑う彼女が愛おしい。
「ここが片付いてから、二人の寝室でもう一度聞かせて欲しい」
「はい」
私は意を決して彼女の首筋へと牙を立てると深く深く皮膚へ押し入れると、フローラは身を硬くしながらも私に全てを預けてくれる。
彼女の皮膚はとても柔らかくそして流れるの血の香りに思わず酔いしれてしまう。
一口、二口と彼女の血が口の中へと広がると頭の中の私が もっともっと と騒ぎ出した。
それほどに彼女の血は甘くとても危険な媚薬のようだった・・
「これで本当に夫婦になれたのね・・」
フローラの意識が途絶えた瞬間に私の身体から今まで以上の力が、魔力が湧き上がってくるのがわかった。
「これが番の力?」
私はフローラを確かめると彼女の顔色も呼吸も落ち着いているが、おそらく彼女の中で私の血が混ざり変化を起こしているのだろう・・
「ありがとう、愛しい人。もう少しだけここで待ってで欲しい。直ぐに戻るから」
彼女の唇にもう一度自身の唇を重ねるとウィルとザーラの方へ身体を向けた。
今月中には終わる予定です!




