24 婚約式 十一
「彼女を本当の妻にするんだ。それはサディル、君にしか出来ない事だ
それしか無い、彼女を助けるには・・」
父はそう言ったが彼女を、フローラを本当の妻にしてしまえば彼女は今後お義父上とも、友人とも違う時間で生きていく事になる。
「そんな大切な事をフローラの意見も聞かずに判断できない・・」
だがこのまではフローラの命の火は間違いなく消えてしまう。
「どうしたら良いんだ・・」
私は冷たいままの彼女を抱き締めながら悩んでいると、人の気配に気付き後ろを振り向いた。
気のせいか?いや、違う!
俺はフローラを抱き上げようとした瞬間
「ごきげんよう公子様。彼女、生きてますか?」
そう言いながらフローラに触れようとした女。私は無意識にフローラを触れさせないよう強く抱きしめる。
突然目の前に現れた女。
気配を感じてから目の前に移動するまでの動きは一切感じなかった。
「・・・お前は確か」
女は私の言葉が耳に入っていないのか、フローラの顔をジッと見ている。
そして口角を上げながら「時間の問題ね」と、嬉しそうに言った。
私は魔力で女を弾き飛ばそうとしたが、簡単に避けられてしまう。
そしてその時に女の魔力に気付いた。
教会全体に結界を張ったのはこの女だと・・
女は今も笑っている。
「何が可笑しい」
女は私の問いに考えるフリをしながら静かに近づいて来ると、またフローラの側でしゃがみ込んだ。
「公子様は番だからこの女が良いんですよね?」
何を言っている?
それだけが理由では無い!そう思って口に出そうとするが、それより先に女がまた口を開く。
「だって特別可愛い訳でもなく、綺麗でもない。番でなかったらここまで執着する事はないのでは?」
「そんな事はない!お前にフローラの何がわかる」
隙あらばフローラに触れようとしてくる女に防御の結界を張る。が、何故か簡単に弾かれてしまった。
「ムダですよ。こんな子供騙しが通よすると?」
私一人ならこの女と対峙できるが、今は意識のないフローラがいる。
出来ることなら安全な場所へと連れて行きたい。
それよりも早く屋敷へと連れて帰りたいと思っているのに、そんな私を楽しそうに攻撃をしてくるこの女は私たちで遊んでいるように思えた。
「正直期待していたんですよ?この私を蹴ってまで選んだ女がどれ程の力を持っているのか。どれ程美しいのか・・」
笑いながら簡単に攻撃をして来る女は、間違いなくフローラを狙っていた。
「だってそうでしょ?力のある男(者)は魔力が高く、美しい人が好きじゃないですか。だから例に漏れず公子も同じだと思ってたのに・・」
「くっ・・」
「こんな平凡な女を選ぶなんて」
教会の屋根が吹き飛ぶほどの力をぶつけてきた女に対し、私はフローラを守る事が精一杯だった。
本来の私ならこの女の力程度であれば簡単に捩じ伏せることが出来るのに。
今はフローラを守るので精一杯だ。
「どうして私ではダメなのですか?私なら魔力の強い子を産むことができますわ。この女は所詮、子をたくさん産むことしか出来ないのでは?」
「・・ちがう・・」
「他に利用価値など見出せないのに?」
この女が我が一族では無い事は直ぐにわかった。
一族の者であれば番がどれ程のものか、番が現れる事でどれ程の影響を及ぼすか・・幼い頃から教育される。
だからあの日、一族の者たちはフローラに会えるのをとても心待ちにしていたが、この女だけは違った。
だから違いがわかったのだ。
「お前は・・我が一族の者では無いな」
「!」
私の言葉で一瞬攻撃の力が弱まった。
フローラを護るので精一杯の私は、自らが傷だらけになっている事にも気付かなかった。
私は女の力が弱まった一瞬の隙を狙いフローラへ護りの結界を張ろうとした時、フローラの手が私の顔に触れた・・
「フローラ!?」
何かを話しているのか口元が少し動いている。よく見ると私の血が彼女の口元に付いている・・
どれ程の血が彼女の口元へ流れたのか分からないが、間違いなく私の血が彼女を目覚めさせたのだろう。
力の出ない彼女は、それでも私を安心させるかのように笑顔を見せる。
「私の血を・・私を・・サンの、およめさんに・・して・・?」
そう言い終わると同時にまた目を閉じてしまった。
「フローラ!!」
「まぁ、そうまでして公子の、公爵夫人になりたいなんて!まぁ身の程知らずな事ですわね」
女はフローラの言葉に呆れながらも魔力を高めていく。
今度こそ間違いなくフローラを攻撃して来るのだと直感でわかった
私は急いで防御の結界をフローラへかけるが、女の攻撃の方が一瞬早かった・・
私はフローラを守ることが精一杯で、まともに女の攻撃を受けてしまった・・
目の前がとても眩しくて・・フローラを守る事も出来なかった私は、ただひたすらに彼女を抱きしめた。




