23 婚約式 十 ウィル目線
サンとフローラ様を教会に残すと旦那様はレイを呼ふどザーラに処置を促した。
ザーラも俺たちと共に行くと叫んでいたが、全身火傷した身体を見て頭を横に振る。
「君も結婚を控えた大切な身体だ。何かあったら後悔するだろう?ここは私とウィルを信じて治療に専念しなさい」
「ですが!」
一歩も引かないザーラにレイはもちろん私も驚いた。
絶対に口答えなどしないザーラが旦那様に掴み掛かる勢いで詰め寄っているから・・
そんなザーラに対し嫌な顔するどころか、とても嬉しそうに肩へと手を置いた旦那様は
「彼女が目覚めた時、傷だらけの君を見たらどう思うだろうな」
「それは!」
「ここは私とウィルに任せなさい。何、これでもまだ当主だから安心してレイモンドに治療をしてもらいなさい」
さすがのザーラも旦那様にここまで言われたら受け入れるしかない。
ザーラが頷くのを確かめると旦那様の号令が掛かる。
「奴らが逃げる前に捕える!私に続きなさい!!」
と。私はレイとザーラに目で合図を送ると旦那様と共にその場を離れた。
フローラ様を傷付けた者たちを捕えるため、またサディル様を亡きものにしようとした奴らを捕えるため。
私は旦那様の後に付いて思い切り馬を走らせた。
旦那様はどこへ向かっているのかわからず、ひたすら旦那様の後に付いて走ると見覚えのある屋敷へと辿り着いた。
「旦那様ここは・・」
旦那様は馬から降りると周りを見渡しキーっと音波を飛ばす。
すると上空から一匹のコウモリが飛んできて旦那様の肩へ止まった。旦那様の使役コウモリだ。
「ウィル、ここは元フォンド邸だ。今は無人の筈なんだが数日前から夜になると灯りが付いていると報告があったんだよ」
「数日前・・」
「ちょうど二人の顔見せの後だ」
「まさかブラッド家門の誰かが・・?」
サンの相手がフローラ様だと知られた後からすでに計画が練られていたって事か?
だがキャロル嬢の手の者がその時はすでにフローラ様に付いていたよな?
「ウィル、君がキャロルだと思っていた娘は本当のフォンド家の令嬢では無かった。としたら?」
「え?」
「あの娘の魔力は高い。それこそ高位貴族に匹敵するほどだ。だから爵位を上げて国へ、ブラッド家へ貢献するようにと考えたのだが・・」
旦那様は俺へ話しながら騎士たちへ指示を出す。
「妻の話では本来の令嬢は魔力が低く、おとなしい子だったらしい。それこそ侍女に相応しい物腰の低さだったと記憶していると」
「まさか・・」
旦那様は黙って頷く。
まさか本当に・・?
「キーナが・・?」
「違う!!」
えっ・・キーナじゃない?
おれは本当に分からず目を丸くすると旦那様は少し呆れたように「屋敷へ戻ればわかる」とだけ言い残し、元フォンド邸を睨みつけた。
「さぁ先ずはここに集まっている奴らを捕える事にしよう」
旦那様の号令に見ながら姿勢を正す。
すでに旦那様の指示で入り口全てに騎士がスタンバッテおり、あとは命令がおりるだけ。
「突撃!!」
旦那様の号令と共に騎士たちが一斉に屋敷へと突入する。もちろん俺は正面玄関から一番で突撃した・・
「やあ、君たちは確か元フォンド伯の弟。だったかな?まさか我が家門の者が嫡男サディルの番を誘拐するとはね、恐れ入ったよ」
旦那様の座るソファーの前に捕らえた男たち数人とその家来たち。
その他にもそれぞれの雇われ傭兵たちも一網打尽にし縄で縛られている。
何故こんなにも簡単に捕えることが出来たかというと・・突入する前、旦那様は屋敷の中にだけある音波を流した。
その音波は[拘束]と言われるもので、前にサンもあの夜のパーティーで使った本家にだけ使える音波だ。
そのおかげで我が騎士たちは無傷で奴等を捕えることが出来た。
そして今もなお旦那様はその音波を出し続けていて・・
「ああすまない、この状態では何も話せなかったね」
そう言うと同時に音波を止めた旦那様の顔が恐ろしいほどの笑顔の圧で、後ろで控えている俺と部下でさえも背中から冷や汗が流れるのがわかった。
「さあ命が欲しければ君たちの知っている事を話してくれないか。これはお願いじゃない、事はわかるね?」
元フォンド伯の弟たちと呼ばれた男たちはその後直ぐ、洗いざらい話したあと王都へと運ばれて行った。
その際家来たちを馬車へ乗せていた部下からおかしな報告をされた。
「ローウッド卿少しよろしいですか」
「なんだ?」
「今奴等を馬車へ乗せたのですが、全員がブツブツとおかしな事を言っていて・・」
おかしな事?
「何を言っていたんだ?」
「それが皆がある女性の名前を言っている者が多かったです。確かキャロル様と・・」
「キャロル嬢!?」
俺は急いで屋敷へ戻ると、今部下から聞いた事を旦那様へ報告しようと応接室へと入った。
瞬間、全身がその場に縫い止められた様に一歩も動くことが出来なかった。
目の前には旦那様と一人の男が、まるで床に埋め込まれているかの様にめり込んでいた。
そんな男に前に腰を下ろしている旦那様の顔は恐ろしい形相で、相手の男を睨んでいる。
そして、俺の存在に気付いた途端
「ウィル!直ぐにサディルの元へ飛べ!サディルが危ない!!」
「え?!!!!!」
その瞬間俺は意識がぶっ飛ぶ程の勢いで空へ飛ばされた。




