18 婚約式 五サン目線
「何か聞き出せたか?」
「いや、今はフィンが説得している。が、口を割るかは何とも」
見れば拷問椅子に縛られた男にフィンが話しかけていた。が、男は目を合わせようともせず黙ったまま下を向いていた。
「ウィルから見て?」
「グレーだ。フローラ様を攫ったのも何か理由があったんだろう。が、本人の口から聞かなければ助けることも出来ないな」
私はウィルの言葉を聞くと部屋の中へと入った。私の気配に気付いたフィンは急いでその場から一歩後ろに下がり、私にその場を譲った。
男は私の気に怯えはじめている。が、そんな事はどうでも良い。
「お前は我が家門の者か?」
「この者は・・」
フィンが横から口を挟もうとした為睨むと、フィンはおとなしくウィルの側へ移動した。
「もう一度聞く。お前は我が家門の者か?」
男は震えながら頭を横に振った。
「では何処の家門の者か?」
「そ、それだけは・・お許しください・・」
「なぜ?」
「わ・・私が口を割れば・・家族が・・」
その一言でわかった。
どうやらこの男は家族を人質に取られているのだろう。私はフィンへ
「この者の後見は?ドトーレ家に入るくらいだ、それなりの家門であろう」
「その者は父が王都へ行った際、知り合いの人から紹介されたと・・息子の筆頭執事にしたいから修行させて欲しいと」
「その家門は?」
「申し訳ありません。私はそれ以上の事は・・」
「では後でボルドを私の執務室に来るように伝えてくれ」
フィンはウィルの顔を一瞬見たが、すぐに頭を下げるとその場から去って行った。
男は去って行くフィンの後ろ姿を縋るように見ていたが、フィンが振り向きもせずに去って行ったため絶望的な顔色をしながら震えていた。
「今話せばお前の命だけで許してやろう」
私の言葉に男は顔を上げる。
「ほ、本当に・・家族には・・」
私は頷くとウィルが用意した椅子に腰を下ろした。
男は私とウィルの顔を交互に見ると、もう一度 家族には手を出さないでください。と言った。
「ああ、何やら事情があるようだ。だが嘘はつくな。ついたらこの男が見破る」
「!」
男がウィルを見る。と、諦めたようにポツリポツリと話し始めた。
「サン、あの男をどうする気だ?」
話を聞き終わるとウィルが声を掛けてきた。私は少し考えると
「素直に白状したからな、牢は貴族用の一番奥の牢へ。奴には同情はするが一番手を出してはいけない人に手を出したんだ。しばらくは反省させろ」
「何だかんだ言ってサンは優しいな。では奴を貴族専用の一番奥の牢へ」
ウィルが部下へ声を掛けたのを聞くとその場から急いで離れた。
「父上、母上話があります」
屋敷に戻るとすぐに両親の元へと足を運んだ。おそらくこの事は耳に入っているだろうし、もしかしたら既に手を出しているかも知れないと思い走るように急ぐと扉を開けた。
「やはり・・」
目の前には両親の足元で跪くレナの姿があった。
そしてレナの横には母の筆頭侍女でレナの妹であるミィナが同じように跪いていた。
「母上、レナに非はありません。レナはフローラの命令に従っただけ。ワザとその場を離れた訳では無いのですから」
そう言いながらレナの腕を取り引っ張る。が、レナは立とうとしなかった。
「いいえ、たとえお嬢様の命令でもその場を離れたのは私の失態です。どのような処罰も受ける覚悟は出来ております。が、それはお嬢様が無事にお戻りになられてから受けます」
そう言って頭を床に擦り付けた。
「奥様、旦那様!私にもフローラ様の救出に向かわせてくださいませ!姉は歳です!私の方がまだ」
「いいえ!これは私が責任を取る事です!貴女は奥様の側を離れてはいけません!」
私は両親の顔を見ると(特に母上が)呆れたような顔をしていた。
「言っておきますが私は何も言っていませんよ。レナが私に許しを求めて来たのです、貴方がいないからと」
父上も頷いているから本当の事なのだろう。
私はウィルに指示しレナを立ち上がらせると、レナは今まで見たこともない顔色をしながら汗をかいていた。
それもそうだ、フローラが私の番いとなってから今まで彼女の侍女としてずっと守って来たのだから。
本当なら自分の足で彼女を助けに行きたいだろう。
だが・・
「レナにはフローラが戻って来た時に手厚い出迎えを頼みたい。おそらくお風呂も食事もまともに摂ってはいないだろうからな」
「ですが!」
「これはレナにしか頼めない事だ。フローラもレナになら安心して身を任せるだろうからな」
そう優しく伝えればレナは大粒の涙を流しながら「承知致しました」と言い残し、ミィナに支えられながら部屋から下がって行った。
「で?お前が私たちの部屋に来たという事は、おおよそ相手が分かったのだろう?」
レナが完全に部屋から出て行った事を確認すると父上が話しかけてきた。私は空いている椅子に腰を下ろすとウィル以外の者たちを下がらせ、先ほど得た情報を両親に話した。
父は
「では急いで奴らを誘い出す準備に取り掛かろう」
「そうですわね。わたくしの可愛い娘を攫うなど死を持って償わせるわ!!」
「だが・・」
父が途中で私の顔を見てくる。
何を言いたいかを私は察すると黙って頷いた。
フローラ様が攫われてこの屋敷の中はバタバタしている。本来ならレナ様とともに私も旦那様と奥様の元へ行かなければならないのに、レナ様は 「自分の責任だから 」と「フローラ様の婚約式のドレスを頼みましたよ。」と一人で行ってしまった。
ザーラ様も窓から飛び出したまま戻らない。
(てか窓から飛び降りるって大丈夫なの?)
私は一人ドレスが保管されている部屋へ入った。
そこは誰もいないはずの部屋なのに、ドレスの前に人影が見えた。
「!!誰?!それはフローラ様のドレスよ!その場から離れなさい!!」
大声で注意をする。
「そこから離れなさい!はやく!!」
女は静かに振り返った。目元口元を気持ち悪いほど弧を描いた顔を見せたのは
「セリル・・」
以前私とドレス勝負をしたあの侍女だった。




