13 久しぶりの再会
「先生!!」
食堂へ行くとすでに先生が席についていた。
この間の顔合わせの時依頼で、しかも騒ぎがあった為ゆっくり話すことも出来なかった。
「フローラ元気そうだね。この間はゆっくり話せかったからね、用事のついでに顔を出したんだ」
そう言いながら私の椅子を引いてくれた。エスコートがさり気なく、さすがブラッド公爵家の筆頭家門だけある!と思わされる。
先生は次男とはいえ今は子爵様だ。
ブラッド公爵家の筆頭であるオードレ侯爵家で子爵様。何なら次期公爵であるサンの片腕で医師の免許も持つ。
容姿も整っていて優しい。
「何だい?さっきから人の顔を見て。他の男性だったら勘違いしてしまうよ」
「え!先生でもそんな冗談を仰るんですね!」
思ってもいない言葉にドキッとしてしまった私は誤魔化すように目の前に置かれたスープを口に含んだ。
「僕じゃなかったらって話だよ。僕もサンに殺されたくは無いからね」
「・・サンはそんな心の狭い人ではありませんよ」
「「「・・・・」」」
私の言葉に先生だけでなくレナやキーナまでもが無言になる。
私何か変な事でも言ったかしら?
「いえ少し疑問に思うことがあって・・」
先生は何だい?と言ってきたが聞いても良いのか少し考えたあと、今なら逆に聞けるかな?と聞くことにした。
「先生はご結婚されないのですか?サンよりも少し上・・ですよね?」
私の質問が自分の思っていた事と違っていたのか、口に含んだワインを吹き出しそうになった。
「急に何だい?今までそんな事を口に出した事なかったよね!?」
レナに手渡されたナフキンで口を拭くと慌てたように言ってくる。
確かに今まではそんな事口に出した事は無かった。それよりも自身の身体の事が大変だったから。でも今は違う。
サンと私は婚約する。そうなれば側近である先生にも幸せになって欲しいと思うのは普通なのでは?
(もちろんウィルさんとザーラも同じだけど、年齢からしたら先生のが先だろう)
「先生は私の病気を治すのに一生懸命でしたよね?私のせいで婚期を逃したとなれば私は自分が許せないのです!」
「いや、別にフローラのせいでは・・」
「いいえ!もし私が原因だとしたら、自分だけが幸せになるなんて出来ません!!」
食事にも目もくれず先生に詰め寄ると、困惑しながらもナイフとフォークをテーブルの上に置いた。
そして私に椅子に腰掛けるように手で指示を出すと、ゆっくりと話始めた。
「フローラには言っていなかったけど私にも婚約予定の人はいるんだ。ただ、お互いの仕事の事もあって公には発表していないけれど、ここでは知らない者はいないよ」
「でも・・この間の顔見せの時にはいらっしゃらなかったですよね?」
本来であれば次期当主の番との顔合わせに婚約者と一緒に出席しない事は無いはずだ。
「何か訳があるのですか?」
もしかしたら病弱で今も伏せっているとか・・だったら余計な事を聞いては失礼だ。
「いや、彼女の仕事の関係で出席出来なかっただけだよ。彼女は今王都にいるからね」
「そう、なのですね・・」
先生は曖昧な笑顔を私に向けてきた。
先生の婚約者ならば悪い人では無いだろうし、きっと大事な仕事を任されているのだろう。
でも・・先生と釣り合う家柄の令嬢が仕事?
「実はフローラとも会っているんだよ」
「えっ?いつですか?どこでお会いしたのでしょうか・・私、失礼な態度とって無いですよね?」
いつどこで先生の婚約者さまと会っていたのか?失礼な態度を取っていなかったか不安になった。
そんな私の態度に先生も思わず笑っている。
「僕の婚約予定の人は今王宮で働いていてね、その部署があまりに忙しすぎて中々辞められないんだ。仕事を辞めるメドが立たないと婚約式も出来ないから・・」
そう言って両手を上げる。
先生は相手が誰なのかは直ぐに分かるよ、それまでのお楽しみに!と言っていたが私は誰なのかが気になって仕方がなかった。
「それはそうとフローラ、体調はどうだい?見たところ良さそうだけれど」
「そう言われてみれば・・良い気がします」
食事が終わり場所をサロンへと移動した私と先生は、レナが淹れてくれたお茶を飲みながら最近の話しをしていた。
私は先生に聞かれるまで自分の体調が良い事に気付いていなかった。それ程に体調が良かったという事なのか?
「ここへ来てから先生のお薬を飲んでい無い事に今気付きました!」
「ここの空気がフローラに合っているんだね。サンが聞いたら喜ぶだろう」
先生はそう言いながらテーブルに薬が入った袋を置いた。
「念の為に渡しておくよ。飲まなくて良いのなら無理に飲まなくて良いし、余れば持って帰れば良い」
「はい、そうしますね」
私は薬を受け取るとレナヘと渡した。
先生は帰る前にもう一度サンに会って行くと言って腰を上げた。
私も一緒に行こうとしたが
「まだ婚約していない男性の寝室に入るのは、淑女のする事では無いよ」
そう言われてしまうとそれ以上何も言えなくなる。
先生は私を部屋まで送ると「おやすみ」と言って帰って行った。
私はレナに促され部屋へと一歩入った時ある事に気が付いた。
「あっ!先生の婚約者がどなたかを聞くのを忘れてしまったわ!!レナは知っている?」
レナは黙って頭を横に振ると
「申し訳ございませんが、もし知っていたとしてもお教え出来ません」
申し訳なさそうに、でもハッキリと答えた。




