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祝福を受けた番は愛する人に呪われる  作者: おつかれナス


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12 レイモンド目線

「サン倒れたって?」

「レイモンドか・・悪いが静かに入ってくれないか」


 サンとフローラに薬を渡すためブラッド公爵家に来てみれば、サンが倒れたと聞き慌ててサンの私室へと走った。

 ザーラには少し怒られたが寝室で横たわるサンを見て息が止まりそうになった。

 顔色が悪い。悪いなんてものでは無い。血の気が全く見られない・・


「大丈夫・・なのかい?」


 俺はベッドの横まで行くと静かに声をかける。サンはそんな俺に


「フローラの側に居たいのに胸が苦しくて仕方がない」

「どういう事だい?」


 始めて聞く症状に驚く。これでも医者の端くれだ!サンの薬も使っている者としては別の薬も急いで用意しなくては。

 そう思って症状を聞けば


「フローラの香りが強すぎて苦しい・・」

「?香水がか?だったらレナに言って」

「その香りでは無いんだ」

「だったら何の香りなんだ?」


 初めて聞く事に心配と言うよりも興味を持ってしまった。

 前に番が現れたのはかなり昔の事で、あまり詳しくは残されていない。

 いや、本家には残されているのかも知れないがまさか自分の代で当主家に番が現れるとは思いもせず、また番が現れるとどんな症状が出るのかも興味深かった。


 まぁサンの場合は子供の頃に祝福を送ってしまったのだけど・・


 祝福は我が一族にとっては他の者から婚約者を守る意味が込められているが、贈られた方からしたら呪いだ。

 実際にその祝福によってフローラは長年苦しめられた。

 貴族女性にとって本来の美しさを消され、決して醜女では無いがバランスの悪い容姿では社交会では居心地が悪かっただろう。

 現に当時の婚約者にも邪険にされ、義妹に取られるなんて辛い目に遭わされた。

 それでもフローラは全く気にする様子もなく、どちらかと言えば有り難がっていた。


「こんな事を言っては子爵家の次期当主としては失格だけど、私にはプロポーズしてくれた男の子(ひと)がいて迎えに来てくれるのを待っているの。だから義妹には感謝しているんですよ」


 眠る時間が長くなり起きている時間のが短くなっていたある日、おそらく本人は覚えていないと思うがサンの事を初めて口にした。


 俺は苦肉の策でサンの血を少し混ぜた薬をフローラに渡した。そうする事で症状が軽くなる事に気がついたからだ。

 そのおかげでフローラの症状は少しずつ良くなってはいったが・・


「こちらに来てからのフローラの香りが強くなって、苦しいんだ。ここが・・」


 そう言って自分の胸元の服を握りしめる。


「ただの恋煩いか?」


 冗談めかして言ったがサンの表情は固いままだ。


「サン?」

「・・おそらくだが、フローラが私の事を一人の男として見始めている。気がするんだ・・すごく甘く自身の理性を保つのが大変なんだ・・」

「惚気か」


 思わず口から出てしまい、慌てて口を手で押さえた。

 そんな俺の様子に笑っていたサンだったが


「本来なら祝福を贈ってからは二人の仲を確かめる時期なんだ。まあスキンシップを取って相手の信頼と愛情を・・」

「そう・・なんだ」

「だが俺が考えなしでフローラに贈ってしまい結婚までの時間が長くなった。これがその代償だ」


 意味がわからない。そんな顔をしていたのだろう


「フローラの血が欲しくてたまらないんだ」

「・・・」


 胸が締め付けられるような言葉に、俺は言葉が出なかった。

 我が一族の婚約式と結婚式には独自の作法がある。それが


 血の交換


 一般の誓いのキスに似ているが、男性が女性の首筋に牙を当て女性の血を体内に入れる。

 女性側には牙から男性の情報が体内へと送られ、徐々に血が作り替えられる。


 その期間が大体一年から五年。


 二人の間の時間は空き過ぎていると言っても良いくらいで・・


「早い話が禁断症状が出て来ているって事か・・」


 だったら手っ取り早くフローラの血を舐めて仕舞えばよい話だ。

 フローラに渡している薬同様、フローラの血を混ぜた薬をサンも舐めたら良い。

 そう思って提案したが返ってきた言葉はノーだった。


「フローラの血の味を知ってしまえば抑えが効かないだろう。それ程に彼女を欲している。つくづく嫌になるよ」

「だがやっと婚約式だろ?そうか、婚約式で血の交換をすれば・・」


 サンは更に大笑いし俺の顔を覗き込んだ


「血の交換はしない。すでに済ましているからね、結婚式まではお預けだ」


 サンはそう言い終わると静かに眠った。

 俺はその場から立ち上がると人の気配に気付き振り返ると


「君は・・キャロル嬢だったね。フォンド家の」

「本日よりサディル様付きの侍女となりました」


 主人の寝室に入れる者は主人の信頼を得た者に限る。はずなのに、何故彼女が?


「お水をお待ちするようにとザーラさんより」


 手元を見れば確かに水差しとコップを乗せたお盆を待っていた。

 俺は彼女から受け取ると部屋から下がるように言うと、頭を下げて出て行った。


 あの女・・気配を消していたな・・


 念のため水差しの中の水とコップを確かめると、微量だが何かが混入されていた。


 調べる必要があるな


 俺は眠るサンの顔を覗き込むとその場から立ち去る。手にはお盆を持ったままで・・

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