六 パーティー 1
「フローラ様、お疲れ様でございました」
ザーラの言葉と共に目を開けると鏡に映る自分の姿に驚いた。
前に王宮侍女の方たちにメイクをしてもらった時も驚いたけれど、今回もそれに匹敵するくらいに
「これは本当に私?」
と思えるほどに化けた。
「フローラ様は普段からあまりご自身を見られませんからね。祝福が外れて本来のお姿に戻られたのに・・」
「私からすればあまり変わらないように見えるけど?」
私の言葉に控えていた侍女候補は一斉に頭を横に振る。後ろに控えているのは私の専属侍女候補で、今回のドレスはこの中の一人セリルが選んだものだ。
赤メインのドレスにピンクのレースがいっぱい使われた可愛らしいドレス。
普段赤のドレスを着る事はなく私からしたら大冒険の色合いだ。
ドレスが赤の為髪飾りはゴールド、首には色とりどりの宝石が散りばめられたチョーカーが着けられる。
「それではフローラ様、本日の予定をお伝えさせていただきます」
「ええ、お願い」
レナから本日の予定を聞く。
顔合わせは昼前から始まりそのまま昼食会となる。
今回はブラッド公爵家の筆頭分家の中でも伯爵位以上への顔合わせで、それ以下との顔合わせは婚約式の日になるらしい。
筆頭だけでも五つの家門がありその中でも特に高位なのがレイモンド先生のオードレ家とウィルとザーラのローウッド辺境伯家なのだそうだ。
「本日ザーラも辺境伯令嬢として出席を致します。公爵家で開かれる会ですので出席者全員が護衛ですので安心してください」
そう言って微笑んだ。
私は内心それどころでは無いほど緊張していて、レナの言葉も最後まで聞き取れなかった。
時間になるとサンが部屋まで迎えに来てくれたが
「####」
「「・・・・・」」
私の姿を見て言葉にならない声で何やらブツブツと泣きながら言っていて、私とレナはどうして良いのか困ってしまった。
出席者は全員会場へと入られた様で出席者でありながら護衛のウィルが扉の前で私たちを待っていた。
「フローラ様大丈夫ですよ。全員サディル様の番様に害を為すような事は致しません。逆に歓迎で揉みくちゃに」
「ウィル!フローラ様に変な事を言わなくてよろしい」
私の専属として後ろに控えていたレナが口止めをする。
ちなみにレナの後ろにはドレスを選んだ二人、セリルとキーナも控えていた。
「それではサディル様、フローラ様入場です」
そう声を掛けられると一気に緊張が増してしまう。王宮での夜会も緊張したが今回はそれ以上に緊張している。
サンからも大丈夫だ!と何度も声を掛けてもらったが、今回はブラッド家門の人たちだ。
私の失態がサンの失態になってしまう。
そんな私の手の震えがサンに伝わったのだろう。
「私のために緊張しているフローラも可愛らしいな。このまま皆には会わせず出掛けたいくらいだ」
「!!サン!」
もちろん私の緊張をほぐす為の言葉だと分かっているが、そう言われて嫌な女はいない。
少しだけ緊張が解けた私はドアボーイの掛け声と共に開かれた扉の前にサンと共に進む。
頭を下げる事はしない。
出席者よりも立場が上なのだから!と何度も何度もレナに叩き込まれた。
会場の視線が一斉にこちらへと向くと呼吸をする事も忘れてしまうくらいに突き刺さる。
「行くよ」
「ええ」
サンの合図と共に一歩を踏み出した。
会場内は私が心配をよそに和やかに過ぎていた。
一族皆が私をサンの番と認めてくれているからだろう、笑顔で挨拶を交わしてくれている。
それよりも皆が驚いているのが
「常に感情を顔に出さないサディル様も、番様に対しては表情も柔らかい」
とか
「笑う事を忘れてしまったかと心配していたが、特別な方には表情も緩むんですな」
とか
「あんな笑顔を見せられてしまうと、自分にも向けて欲しいと思ってしまいますわ」
色々な(良い意味での)言葉が飛び交う。
そう言えば私に対しては表情は柔らかかったな・・と思えばそれはきっと、私が番だからだったんだなと思う。
では番いじゃ無かったら?
そう考えると何故か不安が押し寄せて来る。
「フローラ?」
「サディル様〜」
私に話し掛ける言葉を遮るように女性の声が被る。サディル様と声の方を向くと一人の若い女性が静かに近づいて来た。
見れば隣に父親とおぼしき男性も一緒だ。
「サディル様、番様ご機嫌よう」
「ああフォンド伯爵とキャロル嬢」
キャロル嬢と呼ばれる令嬢はサンに笑顔を振りまいているが見れば見に纏うドレスが私と被っている様に見える。
それにキャロル嬢と言えば昨夜シンシア様が忠告していた令嬢ではなかったか?
「初めまして番様。私はカーレル・フォンドと申しまして伯爵の位を頂いております。こちらは娘のキャロル」
「キャロル・フォンドと申します。番様とも仲良くしていただきたく存じます」
「初めましてフローラ・レビィと申します。私こそ仲良くしていただけたら嬉しいです」
キャロル様も二人の令嬢に負けず可愛らし容姿に思わず目を奪われてしまったが、そんな私を舐め回すように見てくるキャロル様に思わず一歩後ろに下がってしまう。
「それよりもサディル様、わたくしのドレス素敵でしょう?今日の日の為に特別に作らせましたの。サディル様の色とわたくしの・・」
「!」
見れば確かに二人の色だ。
サンの瞳の色である赤とキャロル様の瞳の色であるピンク。
形こそ私と違うけれど色は私のドレスと丸かぶりだ・・
サンはきっと気にしないだろうが周りが見たら・・
私は急に恥ずかしくなりその場から下がろうと一歩後ろに下がる。
すると
「キャロル嬢、いや・・フォント伯の元にこちらからのドレスコードは伝わらなかったようだな」
サンがそう言葉を出すとレナが私の側に控えた。
「皆は会場を移動するように。私とフローラは後で向かいますので」
そう言い終わると同時にボルドさんとフィンさんが率先して誘導するとサンは私に左腕を差し出すと
「少し気になる事がある」
そう言って私を部屋へとエスコートした。




