四 ドレス選び
約束の日になり私は準備が整ったと言われレナと共に部屋へと向かった。
部屋には四つのトルソーに掛けられたドレスと、その前に置かれたテーブルには装飾品と靴などが置かれているが侍女たちは少し離れた位置に頭を下げながら立っていた。
「フローラ様にはこの中から選んでいただきます。選ばれた後にその子から説明をさせて頂きます。ちなみに、私も誰がどのドレスを選んだのかは知りません」
そう説明を受けた私はトルソーの前まで進み、まずは四着を全体的に見る。
さすが公爵家!と言わんばかりのドレスと装飾品に、本当に私が着るのか?似合うのだろうか?と不安になる。それ程に素晴らしい品々が並べられていた。
「赤色が多い気がするのはなぜかしら?」
全体的に赤いドレスが一着あるが、他の二着も赤色が入っている。
「ブラッド家のカラーが赤なのです。まぁ公爵本家の方々の瞳の色が赤なので」
レナに説明を受けると確かにサンの瞳も赤だな!と納得した。
私は丁寧に一着づつドレスを見て回ると二着のドレスを選んだ。
一着目はベースが赤でピンクのレースがふんだんに使われた可愛らしい雰囲気のドレス。
二着目はベースがベージュで全体的に赤い糸で刺繍が施されているドレス。
他の二着も黒やゴールドといった華やかさのある色合いではあったが・・
「私がもう少し大人っぽい雰囲気であれば・・」
露出も高い大人の女性が着るドレスだった。
「どちらになさいますか?」
レナが聞いてくる。
「どちらも素敵なのよね。レナはどちらが顔合わせに相応しいと思う?」
私の問いかけにレナも どちらも良いですね と答えた。
「でしたら両方着てみますか?実際に着てみると雰囲気もハッキリしますし」
ザーラに言われた私はさっそく試着をする事になり、場所を自室へと移動した。
ザーラが言った通り見た時と着た時では雰囲気が違った。
ベージュベースのドレスが思ったよりも大人っぽく見えた。
「どちらも素敵なんだけど・・」
結局選んだのは赤ベースにピンクのレースが使われているドレスだ。
装飾品もピンクのチョーカーに赤い宝石が付いている。
「それでは、こちらのドレスをコーディネートした者を呼びますね」
そう言った後に現れたのは一人の侍女に対し先頭きって詰め寄っていた女性だった。
「セリルと申します。明日はめいいっぱいフローラ様のお支度を手伝わせていただきます」
「よろしくお願いしますセリル」
セリルと名乗った侍女は嬉しそうに後ろで控えていた三人に笑いかけた。
「では明日はセリルをメインにこちらの四人で対応させていただきます」
ザーラがそう言うと残り三着のドレスを片付けるため動き出した。
私はその動きを一瞬だけ止めさせると
「ベージュのドレスも残して。もしかしたら次に着る機会があるかも知れないから」
「・・畏まりました」
そうして私の部屋には二着のドレスが残された。
私は二着のドレスを眺めながら明日の事を考えた。
夕方に顔合わせがあり、そのまま晩餐会になると聞いている。
サンの衣装はどんな感じなのかしら?
その時今まで考えもしていない事に気がついてしまう。
「レナ!サンの衣装は?今回選んだドレスと合うかしら!?」
「その辺りはザーラが上手く合わせるから大丈夫でございますよ」
メイド達に指示を出していたレナが答えると私は安心した。ザーラなら間違いないだろうと・・
「それよりもフローラ様。明日は一族との顔合わせとなります。午後からはその準備に取り掛からせていただきます」
「え?このドレスを着るだけで良いのでは?」
私は呑気に答えるとレナの表情が険しいものへと変化した。
「フローラ様?明日は一族との顔合わせです。フローラ様はサディル様の番様だけでは無く、このブラッド公爵家の次期夫人です。今までのように子爵令嬢と一緒に考えてはいけません!!」
「・・はい」
レナの勢いに負け私は頷く事しか出来なかった。
昼食を食べ終わり一息ついていると、レナがお風呂番を連れてやって来た。
何があったのか?と首を傾げていると
「フローラ様、入浴前に軽くマッサージを受けていただきます」
そう言い終わる前に私はお風呂番たちに連れて行かれた。
「フローラ様痛むところはございますか?」
「いいえ、大丈夫よ」
浴場へ連れて来られた私は着ていた服を脱がされると簡易的なベッドへと寝かされた。
何が起きるのかとビクビクしていたが実際にはマッサージが待っていた。
私は眠くなるのを必死に堪えていると
「ではお風呂に浸かりましょう」
と湯船へと移動した。
そこでまた身体を擦られたがこれもまた気持ち良く、私はついウトウトと眠ってしまった。
「痛い!痛いわ!もうやめて!!」
「フローラ様はマッサージを受けた事が無いとお聞きしました。ほらリンパが固く凝りまくってて不純物が・・ほらこれ」
「いたぁーい!!!」
先ほどまでの気持ち良さは無くなり、今は拷問の時間かと思えるほどに辛い。
高位貴族のご令嬢はこんなに痛い事を常にされているの?かと思うと一瞬だけサンとの結婚を考えてしまった。
それくらい辛い時間だった・・けれどレナは満面の笑顔でこう言い放った。
「まあ今回は時間が無いのでこんなものですね。ですが婚約式までにはもう少し絞らないといけませんね。これからは毎日、お風呂の時間はマッサージを行いましょう!!」
と・・




