最終話
たくさんの誤字報告ありがとうございます!
「リーナとクルトは領地に馴染んだようだよ」
「そうですか・・良かった」
二人がレビィ領へと向かってから半年が過ぎた。今は領主代理補佐として領民からも少しづつだが認められてきていると、領を任せている者から報告があった。
正直二人は補佐では納得しないと思っていた。不満ばかりを言って代理を任せている者を困らせるだろうと・・
もしそうなった時のためにブラッド公爵家からも数人を領民に紛らせていたが、その様子も無くクルト様は今では領民に対して身分関係なく手を取り合って新種の野菜を作っているらしい。
リーナも屋敷の者たちと一緒になって働いていると、代理夫人も報告してきている。
「もともとお母様の実家でも似たような事をしていたの。だから何でも言ってちょうだい!」
そう言ってメイド長に頭を下げたと聞いた時、その姿こそが本当のリーナなのだと知った。
実はあの後、一度だけリーナから手紙が届いた。その内容はお義母さまの期待に応えたかったと。
リーナも幼少の頃からお義母さまの実家から辛い目に遭わされており、自分だけを見てくれる人に依存してしまったと書いてあった。
手紙の最後に ごめんなさい。二度とお義姉様の前には顔を出しません。と・・
「お義母さまは・・」
お義母さまは結局実家からも見放されてしまい、平民となった。
レビィ家で働きたいと言ったが今まで子爵夫人として過ごしていた場所で、それは無理であろうとお父様の判断により領内にある孤児院のマザーとして送られた。
「彼女も今では子供たちに信頼されているよ。子供は人を見る力があるからね、子供たちの母として毎日忙しく動き回っていると報告があったから心配はしていないよ。二度と会う事は無いけれどね」
私に子供が二人産まれたら、一人をレビィの名を継がせるとサンが言った時、お父様は目に涙を浮かべながら
「孫に仕事を教えるまでは元気でいないといけないな」
と嬉しそうに言った。
「そう言えば婚約式の準備は進んでいるのかい?全てブラッド公爵家が仕切ると言われたけれど」
「今日もこの後公爵家へ行って来るわ。何でもドレスも形があるらしくて・・」
「そうか、気を付けて行っておいで」
私はお父様に頭を下げると自室へと戻る。
今までの部屋は日が当たりにくい場所だったけれど、今は女主人の部屋へと移った。
元はお母様の部屋で、この部屋だけはお義母さまも使わせてもらえなかった。
「フローラは次期公爵夫人になる。この部屋の主人に値する身分だよ」
そう言ってお義母さまが出て行った次の日から入る事になった。
「お嬢様、そろそろ準備いたしませんとサディル様が直接お迎えに来てしまいますよ」
「レナ、ありがとう」
レナはサンが私のためにレビィ家に送り込んだサン専属侍女だった。
今回の事が片付いたある日、私はレナに公爵家へ戻るよう提案したが
「私はお嬢様の侍女ですから、公爵家へ戻る時はお嬢様がサディル様へ嫁がれる時です」
と言って私とレビィ家へと戻って来たのだ。
レナが選んだドレスへと着替え終わり下の階へ移動していると
「フローラ様、お迎えに上がりました」
「ザーラ!お迎えありがとう」
サンの専属侍女であるザーラがお迎えに来てくれていた。
私が正式にサンの番だと認められたあとから呼び方が変わった。
「もともとサディル様の番様と認識しておりましたが、これからはハッキリさせたいと思います。どうか私たち使用人に対し敬称は付けないでくださいませ」
と言われてしまった。
「レナ様フローラ様をお連れしても宜しいでしょうか?」
「ザーラもご苦労さま。お嬢様をよろしくお願いします」
「お父様!レナ!行って参ります」
私は二人に挨拶をすると迎えに来た公爵家の馬車へと乗り込んだ。
この馬車は公爵家の第四馬車だが乗り心地は他の馬車と同じだ。
ちなみに第一馬車は当主夫妻が王宮へ行く際に乗る馬車で、第二は当主専用。第三は夫人専用。そしてこの第四は次期当主であるサン専用だ。
「サンもわざわざ迎えを寄越さなくても・・」
「ふふ、本当はご自身が来ると言って聞かなかったのですよ?ウィルが足止めしていますから会ったら労ってくださいませ」
「ええ、そうするわ!」
想像しただけで笑い声が出てしまう。
「あ!レイモンドさんからこちらを預かって参りました」
そう言って渡してきた巾着の中にはあの真っ赤なキャンディーだった。
今でも定期的に舐めているこの薬。
先生は企業秘密ですよ。と言っていたけれど私はもうわかっている。
けれどあえて知らないふりをする。
「フローラ様?」
私は一つ取り出すと目の前に差し出す。
「前から思っていたけれどこのキャンディー、サンの瞳と同じ色ね」
そう言って口の中へ放り投げた。
私のためにだけに作られたキャンディーは甘い中にも少し鉄臭い。でも、それは私にしかわからないほんの少しの香り。
「フローラ様、到着です」
馭者の声が扉の外から聞こえる。
「開けてちょうだい」
扉が開いたらきっと目の前にサンが待っているのだろう。
私の一番好きな人で、私を一番好きな人。
もしサンの番が別の人だったら・・どうなっていたのかしら?
それでもきっと私の一番はサンだっただろう。
「いらっしゃいフローラ。待ちかねたよ」
「サン!私もよ!」
扉が開くと同時に聞こえて来た愛する人の声に、私は待ちきれず馬車の上から飛びついた。
私の愛する番に・・
これにて一章完です。
少しお休みをしてから第二章を投稿する予定でいます。
良かったら引き続きよろしくお願いします!




