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祝福を受けた番は愛する人に呪われる  作者: おつかれナス


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3/16

三 呪いという名の祝福

 彼女が自分の番だと認識したのはまだ子供の頃だった。本来なら大人になってから嗅ぎ分ける事が出来る番の香りを、なぜか俺は子供の頃に嗅ぎ分けてしまった。


「お父様、お母様。僕の番を見つけました」


 突然の僕の報告に両親以外の者たちは喜んだ。

 次期当主の番

 それは一族にとって繁栄をもたらす存在。

 親族は直ぐにでも番を引き取るべきだ!と、当主の父に詰め寄った。が、両親はそれに反対した。

 理由はまだ僕たちが幼いことが原因だと・・


「サディルに番が見つかった事は喜ばしい事だが、まだ君には次期当主としての役割も継承すべき事も伝えていない。今はまだその子を迎える事は出来ない」

「でも、そんなの待っていたら!」

「サン、彼女が本当に貴方の番なら心配する事は無いわ。我が一族の、次期当主の番に手を出す者などこの国にはいないわ」


 お母様の言う事もわかる。

 でも中にはバカな一族もいるんだ、現に


「彼女の父親は彼女に婚約者を宛てがおうとしています・・僕はどうしたら・・」


 彼女は子爵家の一人娘だ。

 家の存続を考えるなら婿を入れなければならない。僕だって彼女と一緒になれるなら婿入りする。でも・・


「君は我が家の、我が一族の次期当主なんだよ?バカな事を考えてはいけないよ?」

「・・ではどうすれば・・」


 まだ十二歳の自分と十歳の彼女では幼過ぎる。まして公爵家と子爵家では家格も違い過ぎる。

 


「せめて後五年は我慢しなさい。王には説明しておくから、その娘が我が公爵家の次期当主の番だと言う事を」

「そうよサン、フローラはしっかりした()だから、大丈夫よ」

「!!なぜフローラだと分かったのですか!?」


 両親は笑い出す。

 一族の者たちも同じように


「坊ちゃんは分かりやすいですからね?フローラ嬢にだけは特別に優しい態度を示していますから」

「レイモンド!」


 僕は僕付きの従者を軽く睨んだ。


「とにかくフローラとの事は心配しないで、私たちも手をまわすから。間違っても祝福を贈ってはダメよ」

「祝福ですか?」


 皆が笑っている。

 祝福

 初めて聞く言葉に疑問を持った僕は、部屋に戻るなりレイモンドへと聞いた。

 レイモンドは知らないの一点張りだったけど、最後には折れて教えてくれた。


「良いですか坊ちゃん!祝福は相手の同意が無ければ絶対に贈ってはいけない物です!何故なら祝福とは、我が一族ならその言葉の通り最高の贈り物。ですがフローラ嬢の様な一般の女性にとっては呪いになるのですから!」






「彼女は・・綺麗になった」

「・・そうですね。坊ちゃんが祝福を贈った日から彼女の幸せは無くなりましたが・・」


 この男レイモンドは私がフローラに贈ってしまった祝福のせいで、俺の従者から外されてしまった。

 その代わりフローラの監視役としてこの国に残り、医師として見守る事となった。


「レイモンドには悪い事をしたと思っている。本来なら俺の従者として・・」

「それは言わない約束です。正直、嬉しかったですよ。自分が残れて・・貴方が苦しむ姿をあれ以上見ているのも辛かったですしね」

「ありがとう・・」


 我が一族にとって番を見つける事は奇跡に近い。

 番と出会えた者は多くの子宝に恵まれるが、そうで無い場合産まれても一人。一人も産まれないこともある為、次期当主に番が見つかれば一族としては祝事となる。

 私の両親は番同士では無く、一族が決めた者同士だった。

 いわゆる政略結婚

 だが幸いな事に相性が合ったようで仲睦まじく直ぐに私が授かった。だが兄弟はいない・・

 番が見つからなかった時のため私もまた二人と同じよう一族で決められた婚約者がいた。

 力を持つその娘が十二歳になったら顔合わせする予定だったと、フローラと出会った後に聞かされた。

 その娘、レイチェル・オードレはレイモンドの姪で、オードレ侯爵家の令嬢だ。

 オードレ家は四代前の当主の妹が嫁いだ家系で、ブラッド家とは遠い縁戚となる。

 (ちなみに四代前の当主には番が見つかったため三人の子供に恵まれた)

 その為似た力を持ったレイチェルが選ばれた。


「レイチェルは今どうしている?」

「レイチェルですか?そうそう、あの娘も今年十六歳になりまして婚約者も出来たとか・・。近いうちに婚約披露をすると兄が言ってたような・・」


 そんな相手がいるのかと安心した。まぁ当の本人が知らないうちに私との婚約も解消されていたのだから、今回が初めてと同じ気持ちだろう。


「私からも祝いの品を贈ろう」

「ありがとうございます。兄たちも喜びます」

「それよりもこのお茶は美味いな」


 フローラが淹れてくれたお茶を飲み干すとなぜか心の中まで温まるような、そんな気持ちになった。

 それよりも・・


「サディル様、フローラ嬢は限界に近付いています。祝福を贈った以上早めに対処しないと」

「わかっている、だがまだダメだ。だからレイモンド、コレを彼女に薬と言って渡して欲しい」


 そう言って懐から取り出した飴玉のような物をテーブルの上に置く。


「これは?」

「・・私の血を混ぜた物だ。一時的だが効くはずだから・・頼む」


 レイモンドは私が渡した飴のような薬を受け手に取ると香りを嗅ぐ。


「これは・・また想いがこもった品物で」

「うるさい!とにかく少しは症状が軽くなると思う。頼んだぞ」


 そう言い残すとソファーから腰を上げた。

 もちろんその手にはフローラが作ったお菓子を持って。


 まだ彼女の側には立てない。

 本当の祝福をまだ彼女に贈ることは出来ない。

 だけど・・


「フローラの香りを嗅いでしまうと我を失いそうだな」

「それは・・番の匂いだからでしょう。我慢してくださいね」


 レイモンドのフローラも限界が近いと言ったが、私も同じなんだと思うと自然と笑いが出てしまった。


「フローラの体調が良ければ七日後の夜会に、レイモンドのパートナーとして彼女を誘って欲しい」

「サンの帰国祝いのパーティーですね」


 俺は頷く。

 八年間の留学を終え帰国した俺への祝いのパーティー。


「その時にフローラと接触しようと思っている。頼んだよレイモンド」

「承知致しました」


 まずは彼女との距離を縮めなければ・・そう思うと七日後の夜会が楽しみになった。

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